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ハンドルネームは『Rain』

 ショウ達と出会ったゲームセンターから県警本部までそう距離はない。

 和泉と友永は徒歩で自分のデスクのある場所に戻った。

 他の刑事達も揃っている。

 

 皆一様に疲れた顔をしていた。ただ一人、三枝だけがいつものテンションで聡介に報告した。

「ねぇ班長、探してるのって西崎さんだったよね? 確か」

 今さら何を言っているのか。全員の視線などまったくおかまいなしに三枝は続ける。

「知り合いのホストとキャバ嬢に聞きまくってみたら、参考になるかな、っていう情報があったよ。よく流川の恵美須屋っていう店に飲みに来てたらしいね。時々男性と一緒だったんだって」

 誰だろう? 佐伯南署の仲間だろうか。

 ちらりと駿河を見るが、違うと首を横に振る。

「仕事のこととか、家庭の愚痴とか、その男性に話してたらしいよ」

「……西崎がその男をなんて呼んでいたかわかるか?」

 すると三枝は肩を竦めてみせた。

「聞いたけど、たぶん本名じゃないよ。『レイさん』とか呼んでたらしいもん」

「……レイさん?」

「ハンドルネームか何かじゃない? もっともレイさんていう名前なのか」

「その男の特徴は?」

「背が高いって、それだけ。いつもサングラスしてたらしいし、なるべく顔を見られないように気を遣ってたみたい」

「胡散臭いな」和泉が呟くと、なぜか全員の視線を集めた。


 班長、と駿河が聡介に発言の許可を求める。許可が降りると、

「自分は、西崎さんのデスクにあったあの百人一首が気になります」

「百人一首って、かるたでしょ? あの、まったく意味がわからない」と、三枝。

 駿河は軽く頷いて、

「自分は西崎さんのことを、班長ほどではないですが、よく知っているつもりです。およそそういった雅なこととは縁の薄い方だったと思います」

 確かにな、と聡介も苦笑する。

「奥さんの方がやってたんじゃないのか?」日下部が言った。

「そうかもしれないな、いずれにしろ奥さんに話を聞く必要がある」

「まだ奥さんには誰も会いに行っていないんですか?」和泉が訊くと、

「……息子と夫のことを聞いて倒れたらしい。今は入院中で面会謝絶だそうだ。しかし明日あたり一度は話を聞いてみないとな……」


「自分が行きます。何度かお会いしたことがありますから」駿河が言った。

「それがいいな、それと……」聡介は全員を見回して「俺が一緒に行こう」

 こんなデリケートな仕事は他の奴らには絶対任せられない、と言外に匂わせていた。


 今年春の人事異動で集まった一癖も二癖もある面々は、今ではすっかり高岡警部を班長としてわりと真面目に仕事をしている。これも聡介の人柄が成せる業だろう。

 やっぱり僕のお父さんはすごい人だ。

 和泉は胸の内で呟いた。


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