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23/71

もやもやポイント

「西崎さん」聞き覚えのある声が彼を呼んだ。

 倉橋とその部下だ。

 ファストフード店を出た時から、なんとなく尾行されているような気がしていた。

「倉橋……! どうしてここに?」

 倉橋は溜め息交じりに言った。

「初めはただの冷やかしかと思ったんですけどね。強行犯係の班長が暇だっていうことはそれだけ世の中が平和だと喜びもしました。が、誰かが言ったんですよ。あの似顔絵の1人が、西崎さんの息子によく似ていると。そこで気付いたんです、高岡さんがわざわざよそのヤマに首を突っ込む理由は何か……確か高岡さんは西崎さんと同期ですよね?」

「それがどうしたって言うんだ」

「……察してください」

 同期のよしみで、親しい間柄だから、出頭させるフリをして逃がすのではないか。

 

 家族の不祥事で降格になったり、仕事そのものを辞めざるを得ない場合もある。

 聡介もかつて妻の起こした事件で刑事課から山奥の駐在勤務へ左遷された。

 

 今の立場があるのは、昔彼の刑事としての才能を見抜き、各方面に必死で頭を下げてくれた、古巣である尾道東署の刑事課長のおかげだ。倉橋もそのことを知っている。

 西崎は深く項垂れて息子の肩に回していた手を下ろす。

「待ってくれ。今、自分から出頭しようとしていたんだ……」

 しかし西崎隆弘は刑事達に車に乗せられ、両親は取り残される形となった。

「西崎、すまない……」

 同期の刑事は走り去る警察車両を目だけで追いながら黙っていた。

 

 その心中はいかばかりだろうか。

 聡介は彼と目を合わせることができなかった。

 うぅっと嗚咽を漏らしてうずくまったのは、西崎の妻で隆弘の母親である。

 

 しかし夫である西崎は彼女を支えることもせず、ぼんやりとあらぬ方向を見つめている。

「なんだか……」

 隣に立っていた和泉が呟く。「妙な感じですね」

 確かに妙な感じだ。言葉では説明できない類の。


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