四話 猿人ロロット
獣族――
獣の力を有した種族のことであり、見た目は人間に獣の耳や尻尾をつけたような姿をしている。
猫獣人、犬獣人、兎獣人など種類は様々である。
イアンの目の前にいる少女―ロロットは、猿の獣人である猿人らしい。
「そのロロットが何故、オレの家にいるのか、教えてくれないか」
イアンに自分の名前を呼ばれたことに、ロロットは眉をひそめたが、こちらを見据えてくるイアンの目を見て、観念したかのように、ここに来るまでの経緯を教えてくれた。
ロロットは、母の古い友人に会うため旅をしていた。
夜になり、野営の準備をしていたところに、ローブを羽織った男が現れ、魔物を召喚し、襲ってきた。
母が、魔物を食い止めてくれたおかげで、なんとか逃げ延びたロロットは、母を探すため走り回った。
謎の男による襲撃を受けた場所へ戻ると、母の亡骸がそこにあった。
途方に暮れ、歩き続けているとこの小屋に辿り着き、疲れ果てたロロットはその小屋で眠りについた。
イアンの気配に気づいて、目を覚ましたロロットは、咄嗟に作業机の下に隠れた。
近づいてきたイアンが、自分を殺そうとする人間だと思い、先にやっつけてしまおうと、襲いかかった。
一通り話したロロットは黙り込む。
イアンもなんと声を掛けていいか分からず沈黙する。
しかし、沈黙は破られることになる。
グギュルゥゥゥ…
腹の鳴る音がしたからだ。
ロロットからその音は聞こえた。
「棚の横にある麻袋にパンが入っている」
イアンの言葉に、ロロットは眉を吊り上げ、口を空ける。
表情を戻した彼女は、麻袋の元まで行くと振り返ってイアンを見る。
「腹が減ってるのだろう。食えよ」
そう言ったイアンは、彼女に背を向ける。
ロロットは、麻袋の中のパンとイアンをしばらく交互に見た後、パンにかぶりつく。
パンを口に入れるたびに、食べるペースが早くなる。
「うっ…ひぐっ…」
食べてるうちに、目から涙が零れ落ちる。
ロロットは目から溢れる涙に構わずパンを食べ続けた。
その間イアンは窓の外で沈む夕日を、ただじっと眺めていた。
麻袋のパンを食べ尽くしたロロットは、机に突っ伏して眠りについた。
イアンは、自分を縛っていた縄を解く。
ロロットの縛り方が甘かったため、簡単に縄は解くことができた。
拘束を解き、自由になったイアンは、ロロットに毛布を掛けてやり、家の外に出た。
外に出ると、辺りは暗闇と静寂に包まれていた。
イアンは、切り株に腰を掛けると、空を見上げる。
無数の光の粒が夜空に輝いていた。
夜空を眺めながら、イアンはこれからのことについて考えるが、何も思いつかなかった。
「…村の皆に相談しよう」
自分だけでは、ロロットをどうすることもできない、そう考えたイアンは村人の手を借りることにした。
村の方角に目を向けると、村は真っ暗であった。
「明日にするか…」
イアンが呟いた直後―
ドンッ―
村の一角が爆発した。