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精霊斧士 ~流浪の冒険者~  作者: シャイニング武田
九章 彷徨うアックスバトラー
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二百四十三話 魔族の侵攻

 クッコナより西、歩いて約一日かかる距離に砦が建っている。

砦と言っても高い塔ではなく、四角い形をした建物だ。

そのすぐ西隣には長い壁がある。

ここは、ラツクナの戦士団が駐屯する防衛拠点だ。

荒野の北側の村や町を守る最前線であり、最終防衛拠点である。

故に突破されれば、たちまち荒野の北側の一帯も魔族領になってしまうだろう。

クッコナを出たイアン達は、一日かけてこの防衛拠点にやってきた。


「止まれ」


砦に向かおうとしたイアン達の前に、一人の男が立ちはだかる。

その男は、背中に背負った剣の柄を掴んだ状態で、イアン達を睨みつけている。

一目見て、戦士団の者であると分かった。


「お嬢さん方は旅人のようだが、ここは――」


「この近隣の村や町の防衛拠点だろ? それを知っててオレ達はここへ来た」


戦士の男の言葉の途中で、イアンがそう口にした。

目的があって来たということを示したのだ。


「ほう……なら、ここへは何をしに来た? 観光で来たのなら、お引き取り願いたいもんだ 」


戦士の男は、剣の柄から手を離して腕を組む。

イアンは彼の言葉を聞くと、方形状になった包みを取り出した。


「クッコナから大工が来ているはずだ。そいつが使う道具を届けに来た」


「なに!? その包みを見せてくれ」


戦士の男は、イアンから包みを受け取ると、包んでいた布を解き、中にあった箱を開ける。


「……確かに、大工が使う道具だ。ちょうど、今から取りに行く手はずだったんだ。これで手間が省けた」


箱の中を覗くと、戦士の男は嬉しそうな顔をする。


「ありがとう、すぐ届けに行こう! 」


戦士の男は、道具の入った箱を抱えるとイアン達に背中を向ける。


「……おっと。良かったら、君達も一緒に来るといい」


そのまま砦の方へ歩いていくと思いきや、戦士の男は顔を振り向かせて、そう言った。


「もうオレ達にやることは無い。早々にここから――」


「いやいや。ここからクッコナが近いとはいえ、歩いて一日かかるはずだ。この砦で休んでいったほうがいいぞ」


遠慮するイアンだが、戦士の男は引かなかった。


「むぅ……ロシよ、どうする? 」


イアンは、隣のロシに意見を求めた。


「……ここは、彼の言葉に甘えましょう。体調を万全しないと、途中でバテてしまうかもしれませんからね」


「……なんっスか? ロシさん、今こっち見たっスか? 」


マコリアは、ロシの視線を感じ、首を傾げた。


「ん? ロシ? もしかして、ロシ・タキュウトか? 」


その時、戦士の男が体をロシに向ける。

ロシのことを知っている様子であった。


「ええ。私の名は、ロシ・タキュウトですが…」


「おおっ! あの双頭大剣(そうとうだいけん)に会えるとは、光栄だ! 」


戦士の男は、ロシの元へ行くと彼の手を取り、無理やり握手を交わす。


「握手を求められるほどの者では、ないのですが…」


戦士の男に手を握られるロシは、困ったような表情を浮かべる。


「いやいや! あんたはオレ達戦士の中じゃあ、有名人だぜ? そうだ! 色々と話を聞かせてくれよ! 」


「おっとっと…弱ったな。まさか、ここまで自分の名が広まっているとは…」


戦士の男は、ロシの手を握ったまま、砦の方へ歩いて行った。


「……これは、行かざるを得なくなったな」


「そうっスね。まさか、ロシさんが有名人だったんて…」


イアンとマコリアも、砦に向かった。







 ――その日の夕方。


イアンとマコリアは、砦の中の一室にいた。

砦で休むことになったイアン達に部屋が貸し与えられたのである。


「ロシさん、大丈夫っスかねぇ? 」


部屋の中にあるベッドに座るマコリアが、そう呟いた。

イアンとマコリアは部屋に案内されたのだが、ロシは戦士の男に連れて行かれていた。


「一応、病人であることは、本人も自覚している。無茶はしないはずだ」


椅子に座るイアンが言った。


「無茶? あ、そうっスね。マコっち達もご飯を食べたし、ロシさん達もご飯を食べているかも」


「うむ。オレ達に出された料理に、毒性のあるやつなかった。大丈夫だろう」


イアンが言っていることは、ロシが取る食事のことであった。

トリックマッシュルームの毒を受けてから、だいぶ時間が経つが、まだその毒は消えきっていない可能性がある。

ロシにはまだ、口にするものに制限があるのだ。


「とはいえ、やはり放っておくわけにはいかないか。ちょっと様子を見てくる」


イアンは椅子から立ち上がると、ドアに手をかけるが――


「……」


彼はそのまま動かなくなった。


「……? どうしたっスか? 」


イアンが動きを止めたことを不思議に思ったマコリアが彼に訊ねる。


「……外が騒がしい。何事かあったようだ」


イアンはそう答えると、ドアに耳を当てた。


「騒がしい? ロシさんの話で盛り上がっているとかじゃないっスか? 」


「……そういう風では、無いようだ。外に出て確かめてみる必要があるな」


イアンはドアから耳を離した。


「じゃあ、マコっちもついていくっス」


「うむ。では、行こう」


ドアを開くと、イアンとマコリアは部屋の外へ出た。

この砦は三階建ての構造である。

イアン達に貸し与えれた部屋は二階にあり、彼等は階段を下り、一階へ向かう。

一階には部屋は少ない。

その代わりに、食堂として使われる大広間があるのだが――


「……誰もいない…」


そこに、誰の姿も見ることは出来なかった。


「来たときは、ここに沢山の戦士の人がいたっスよね? 」


「ああ。砦の外で何かがあったようだな。行こう」


「はいっス! 」


イアンとマコリアは大広間を通り、砦の外へ出た。

すると――


「でりゃあああ!! 」


「グギャア! 」


イアンとマコリアの目に、多くの魔物と戦う戦士達の姿が目に入った。


「あれは、ガーゴイル!? 」


魔物の姿を見たイアンが驚愕の声を上げる。

戦士達と戦う魔物は、人型で背中に翼を持っている。

鋭い爪を生やした両腕を振り回して、戦士達に攻撃を行っている。

魔物は、ガーゴイルと似た外見をしているのだ。

しかし――


「ふぅあっ!! 」


「グギアッ――!? 」


魔物は戦士の剣に切り裂かれ、絶命する。


「なに……ガーゴイルでは無いのか…」


「ガーゴイルって、何っスか? 」


マコリアがイアンに訊ねる。


「ガーゴイルとは、岩の体を持つ飛翔性魔物だ。硬い体を持つ上に空を飛ぶ手強い魔物のことだ」


「へぇ、でもこの魔物達は、岩の体じゃないみたいっスね」


「ああ。どうやら、別の魔物のようだ」


「イアンさん、マコさん! 」


戦士達の戦いを見ている二人の元へ、ロシが向かってくる。


「グギャアア!! 」


「グギィ!! 」


途中、何体かのガーゴイルに似た魔物に襲われるロシだが――


「はあっ!! 」


「グッ――!? 」


「ギッ――!? 」


彼は、両手で持った一本のメルガフロラクタでなぎ払いながら、イアンとマコリアの元へ辿り着いた。


「ロシ、今はどういう状況だ? 」


「大勢の魔物がこの砦に押し寄せて来ているのです。恐らく……いや、魔族がこの砦を落としにきたのでしょう」


イアンの問いかけに、ロシはそう答えた。

こうしている間にも、魔物は戦士達に倒されていくのだが、一向に数が減る気配はなかった。


「むぅ……ならば、オレ達も加勢する。どこへ行けばいいか? 」


「手伝ってくれるか! 旅人よ」


三人の元に一人の戦士がやって来る。

身長の高い大男で、彼の持っている大剣は、その身の丈以上はあろうものである。


「私は、この戦士団の団長を勤めているゲーザムという。この魔物の大群だ。一人でも多く、仲間が欲しい」


「この状況だ。手伝わないわけにはいかない。それで何をすればいい? 」


「苦戦している者の援護を頼みたい。あと、どこかにクッコナから来ている大工の者がいるはずだ。その者の救出もできれば……」


ゲーザムがそう言った時――


「グギャア! 」


一体のガーゴイルに似た魔物が、ゲーザムに向かって来る。

その勢いから、突進を行おうとしていた。


「むんっ! 」


「――!? 」


しかし、その魔物がゲーザムに突進することはない。

振り向きざまに振るわれた彼の大剣により、真っ二つに切り裂かれたのだ。

魔物は悲鳴を上げる間もなく絶命し、地面に落ちた。


「この通り、我々は手が空かない。頼めるか? 」


ゲーザムは顔を振り向かせて、肩ごしにイアンを見つめる。


「分かった。ならば、マコリアは戦士の援護。ロシは今まで通り動いてくれ」


「分かりました」


「了解っス! 」


イアンの指示に従い、ロシとマコリアはそれぞれの目的を達成するために動く。


「ということは、君が? 」


「ああ。オレは、大工の救出に向かう。任せておけ」


イアンはゲーザムにそう言うと、魔物と戦士で入り乱れる戦場を駆け始めた。




 「いた……」


戦場を駆けるイアンの目に、大工らしき人物が目に入る。

彼がいる場所は、砦の西にある外壁の傍であった。

大工の者は手で頭を抱えて地面に蹲っている。

その傍に、二人の戦士がいるが――


「く、くそっ! 」


「攻撃が当たらねぇっ! 」


空を飛ぶ魔物に苦戦を強いられている様子である。

彼等に襲いかかる魔物は四体。

数の上でも不利な状況であった。


「よし、待ってろ。今助けてやる」


イアンは足を止めると、左目を閉じて、右目で魔物を見据え――


「照準! ランガ・ストーンショット! 」


と口にした。


ババババッ!!


すると、イアンの左目の前に魔法陣が浮かび上がりそこから、連続して石弾が放たれる。

石弾を放ちながら首を回すことで、石弾はばらまかれ――


「ガッ――!? 」


「グッ――!? 」


「ギャア――!? 」


「――!? 」


四体の魔物に命中し、皆地面に落下して絶命する。

四体のうち一体の魔物には頭に命中しおり、その魔物は悲鳴を上げることも出来なかった。


「大丈夫か? 」


他の魔物が襲ってこないことを確認すると、イアンは二人の戦士の元へ向かう。


「お、おう…」


「今のは、お嬢ちゃんの魔法か……助かったぜ」


二人の戦士は返事をする。

彼等と大工の者に目立った怪我は見られなかった。


「無事のようだな。オレが魔物を迎撃する。二人は大工を砦の中へ連れて行ってくれ」


「おう! 嬢ちゃんがついていれば、安心だぜ。おら、立てるか? 」


「うぅ…は、はい。なんとか…」


大工の者はよろよろと不器用に立ち上がった。


「よし! このまま突っ切るぞ! 」


「おう! 」


「ひ、ひぃー」


二人の戦士と大工の者は砦に向かって走り出した。

走る彼等に目掛けて、魔物達が突進を仕掛けようとするが――


「ストーンショット! 」


彼等の後ろを走るイアンの石弾により、体を撃ち抜かれ、地面に落下していく。


「……残り五発…もう充分だろう…」


三人が砦の中に入っていくのを見届けると、イアンは足を止めた。


「大工の救出は終わった。あとは――」


イアンがホルダーから戦斧を取り出した時――


「ぐわああああ!! 」


自分の後方から、戦士の叫び声が聞こえた。

そちらの方に体を向けると――


「人間の戦士もなかなかやる。まさか、二百体のフライゴールを投入しても、まだ砦を落とせないとは…」


うつ伏せに倒れ伏す戦士を踏みつける魔族の男の姿があった。

他の魔族と同様に燕尾服のような衣類を身に付け、背中にはコウモリのような翼を生やしている。

頭には二本の角があり、灰色に近い緑色の長い髪を持っていた。


「これで、砦は落とせませんでしたなどと、報告できるわけがない。絶対に攻め落とさせてもらうぞ」


魔族の男はそう言うと、空へ舞い上がった。


「……ん? 一人だけ毛色の違う奴がいるな……」


地面を見下ろす魔族の男の目に、イアンの姿が入った。

イアンも彼に目を向けており、互いに目が合った状態である。


「ほう、女か。人間にしては、魅力的な容姿をしているな。どれ、綺麗に殺して剥製にでもするか」


魔族はイアンを見つめながら、怪しく微笑んだ。

対して、イアンは魔族の男を見つめたまま、手にした戦斧の柄を強く握り締めていた。




 魔族の男は、宙を踊るように舞いながら、空を飛ぶ。

その動きは変則的なもので、目で追うだけでやっとである。

一見どこに向かおうとしているか分からないが、確実にイアンの元へ近づいていた。


「ふふっ、そらっ! 」


そして、魔族の男はイアンの前方から長い足を伸ばした蹴りを放つ。


ガッ!


イアンは避けることができず、戦斧を盾にして、魔族の蹴りを防御した。


「ぐっ…ううっ…」


蹴りの威力は高く、イアンの体はよろめいてしまう。


「ふっ…」


そんなイアンの姿を見て、魔族の男は笑を浮かべると、素早くイアンの後ろへ回り――


「そんなんじゃあ、まともにダンスは踊れないなぁ! 」


彼の背中に目掛けて蹴りを放った。


「ぐあっ!! 」


背中に蹴りを受け、イアンは前方に突き飛ばされる。


「げっ!? 嬢ちゃんがピンチだ! 」


「今、助けるぞ! 」


蹴られたイアンを見て、手の空いた戦士が魔族に向かって走り出す。


「ちっ、雑魚共め。おまえ達は引っ込んでろ! 」


「ぐえっ!? 」


「ぐっ!? 」


複数の戦士達に囲まれた魔族の男だが、体を回転しながら蹴りを放つことで、その全員を弾き飛ばした。


「ぐっ…この! 」


突き飛ばされたイアンは、前のめりに倒れそうであったが、強く片足を地面に下ろして踏ん張る。

その直後、後方の魔族の男へ攻撃するため、振り向きざまに戦斧を横に振り回した。


「おっと、当たらないなぁ! 」


しかし、魔族の男は舞い上がり、寸前のところで戦斧を躱した。


「ちょっと、顔が歪むかも…なっ! 」


魔族の男は、片足を振り上げた後、イアンの頭に目掛けてその足を振り下ろした。

イアンは咄嗟に、戦斧を振り切った方向へ飛び、魔族の足を躱す。


ドオン!!


振り下ろされた魔族の足が、地面を粉砕する。


「危うい…ちょっとどころでは、済まなかったぞ」


イアンは走り、彼から離れていく。

その目は魔族の男の足に向けられており、彼の脚力の凄まじさを目にして、イアンの全身は凍りついたように冷えていた。


「なかなか動く……だが、ダメージを負った今、まともに動けまい。次で終わりだ! 」


魔族の男は再び、舞い踊りながら飛行する。

その変則的な動きは、予測不能であり、このままでは不意をつかれてしまうだろう。

そう考えたイアンは――


「ならば、サラファイア! 」


自分から魔族の男に接近することにした。

イアンは、両の足下から炎を噴射させて、勢いよく前進する。


「なに!? 飛び上がっただと」


予測していなかった行動を取られ、魔族の男は動揺し、その動きを止めてしまう。


「もらった 」


その隙を逃さんとばかりに、イアンは戦斧を振りかぶった後――


「ふっ! 」


魔族の男の腹に目掛けて、戦斧を横振りに振り回した。


「くっ! 当たるものか! 」


しかし、魔族が上へ舞い上がったことで、戦斧は躱され、イアンは魔族の下を通り抜けていく。

攻撃を躱されてしまったイアンは、振るった戦斧に引っ張られ、くるくると空中で回転する。

そして、彼が地面に着地した時、体の向きは、魔族の男の方へ向けられていた。

その直後――


「サラファイア! 」


再び、イアンは両の足下から炎を噴射させた。

今度は、上へと飛び上がっていくイアン。

彼の目的は――


「ふんっ! 」


「ぐああっ!? なにいい!? 」


魔族の男への追撃であった。

そのことまで予測していなかった魔族の男は、振り下ろしたイアンの戦斧に背中を切りつけられる。

二人は、そのまま落下し、イアンはサラファイアの残り火を使って地面に着地したが――


「ぐっ…うっ…」


魔族の男は、地面に激突した。

落ちた高度は、約二メートル。

死にはしないものの、骨を折るほどの怪我はする高さであった。


「く…くそっ! 何もかも想定外だ! 」


地面に落下したにも関わらず、魔族の男は空へ舞い上がる。


「やむを得ない。応援を呼びに行こう」


そして、彼は西を目指して飛んでいった。

しかし、怪我を負っているためか、その速度は遅い。


「増援を呼びに行くか。逃がさん……ロックピアス装填…サラファイア! 」


イアンはサラファイアを使って外壁を飛び越え、魔族の男を追っていった。







 よろよろと魔族の男は空を飛ぶ。

イアンは、彼の背中を追い続けて荒野を走っていた。


ガコン!


ロックピアスの装填が完了した男が、イアンの頭の中に響く。

それにより、追跡の終わりが見えてきた。


「照準」


イアンは、左目を閉じ、右目で魔族を見据える。

魔族の体のうち見ている場所は、彼の右肩。

イアンはそこに目掛けて――


「ロックピアス! 」


ズドン!


ロックピアスを撃ちだした。

尖った石弾は、凄まじい速度で飛んでいき――


「ああっ!? 」


狙い通りに、魔族の男の右肩を撃ち抜いた。

魔族の男は、地面に向かって落下していく。


「痛てて…よし、これで敵の増援は防げるな」


イアンは手で首を押さえながら、魔族の男が落ちた場所へ向かった。


「う…ううっ…」


すると、そこにはうつ伏せに倒れる魔族の男の姿があった。


「……もうおまえに逃げ場はない」


「くっ…まだ…だ…」


魔族の男は地面を這いながらも西へ進み続ける。

しかし、力尽きたのか十歩の距離のところで、彼は仰向けになった。

イアンは歩き、魔族の男の前に立つ。

見下ろした魔族の男の顔は苦しげで、彼の命が尽きるも時間の問題であった。


「じきに、おまえは死ぬ。何か言っておくことはあるか? 」


「ふふっ…はっはははは…」


イアンの問いかけに、魔族の男は大声で笑った。

その後――


「ここは魔族領だ! 」


魔族の男は、イアンに向けて紫色に輝く光を放った。


「くっ、まだ力を…!? 」


イアンは、その光を左で防御する。


「くくくっ……これで、おまえはもう……」


動いていた魔族の男の口が止まる。

彼は、笑みを浮かべたまま事切れた。

光を受けたイアンには、なんの影響もなかった。

それは今のイアンにとって、とても不気味なことであった。





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