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精霊斧士 ~流浪の冒険者~  作者: シャイニング武田
八章 都市探偵 ――奇怪事件と異様な骨董品――
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二百八話 食い違い

 イアンは、イオを右腕を見つめたまま、動かない。

彼が、不意に山彦の鈴に鳴れと念じた時、鈴の音が聞こえたのだ。

山彦の鈴は距離が近いほど、音が大きくなるようにしてある。

イアンの耳に入った鈴の音は、大きい音であった。

それは、山彦の鈴を付けた仮面の者と肉薄した時に、鳴った鈴の音に近い大きさであった。

つまり、隣にいるイオが、仮面の者ではないかという疑念をイアンは抱いている最中なのだ。


「……イオ……少し、右手を見せてくれないか? 」


「え? ああっ!? イアンさん!? 」


イアンは、イオが了承する前に、彼女の右手首を掴見上げる。

右腕が上に向いたことで、袖が下がり、イオの右手首が顕になった。


「……!? 」


イアンは、出しそうになった声を寸でのところで堪える。

彼女の右手首には、緑色の鈴が紐で括り付けられていたのだ。


「あ……イアンさん、よく気づいたね」


「なっ……!? 」


イオの言葉に驚き、イアンは後ろに下がり、彼女との距離を開ける。

そして、イアンは緊張した面持ちで、イオの顔を見つめた。

ようやく見えた彼女の顔は、きょとんとした表情であった。


「イアンさん、どうしたの? そんなに驚いて……私が鈴を付けていたことを知ってたんじゃないの? 」


「……いや……おまえだとは思わなかったのだ。イオ……あの時、オレに襲いかかったのは――」


「いいでしょ? これ。鈴なんて子供っぽいと思ったけど、なかなか決まってるよね! 」


「……は? 」


イアンは、思わず間の抜けた声を出した。

イオが右手首の鈴を強調させるかのように、右手を掲げているのだ。

まるで、新しく買った小物を見せびらかすようで――


「イオ……その鈴はいつ? 」


「ん? 前……一昨日、ケージンギアで会ったよね? イアンさんと別れた後に買ったんだ。素朴だけど、シンプルで可愛いよね! 」


まさしく、それであった。


「……そ、そうか。似合ってる……と思うぞ…」


困惑するイアンは、搾り出すように、そう言った。


「ふふっ、ありがとう! 買って正解だね! 」


イオは上機嫌な様子で、イアンに満面の笑みを向けた。

その後、荷車の花は無くなり、今日の花売りの仕事が終わる。

イオを見送った後、イアンは探偵事務所に向かっていた。


「……」


街路を歩くイアンの雰囲気は暗い。

彼は、イオに言いたいことがあったのだが、とうとう言う機会を逃したのだ。


「……鈴が揺れても、音が鳴っていないぞ…イオ……」







 ――昼。


太陽がちょうど真ん中に通る頃、イアンは探偵事務所に辿り付いた。


「ん? リトワ……今日は、やけに早いな」


部屋の中に入ると、リトワがソファーに座っていた。


「やぁ、イアンさん。今日は学校が休みなんだよ」


「そういうことか」


この日、ブラッドウッド学院は休校日であった。


「む、ヴィクターとケイルエラはどこに? 」


「二人は一緒に出かけたよ。ここ最近、女性が首を切られて殺害されている事件が多いらしいね。その事件が起きた場所を回ると言っていたよ」


「そうか……ヴィクターから、聞いているのか…」


「うん。けっこう危険な目に合ったそうじゃないか。これを作って正解だったよ」


リトワはそう言うと、ソファーの横に置かれたリュックサックの中に、手を入れた。


「はい。イアンさん、これを着るといいよ」


リトワは立ち上がると、リュクサックから取り出した物をイアンに差し出す。

リュックサックから、取り出されたのは、紺色の衣類と白い衣類だった。


「……嫌な予感がするな…」


イアンは、眉をひそめながら、リトワから衣類を受け取り――


「……はぁ…やはりか…」


それらを広げてみると、紺色の衣類は長袖のワンピース、白い衣類はエプロンであった。

言うまでもなく、ナース服である。


「何故、この服なんだ……ナース服である必要ないだろ」


「いや、ナース服でないとダメだよ。君に言われた通り、斧を作ったんだけど……それを装備するには、ナース服でないと違和感が出るんだ」


「……なら、仕方ないな」


斧のためなら簡単に折れるイアンであった。


「今、着替えるから出て行ってくれないか? 」


「え? 何故だい? 」


イアンの発言に、リトワは首を傾げた。

何故なら――


「……オレは男だ…」


「…………はぁ…それは知らなかった。着替えたら合図をしてくれ」


リトワはイアンが女であると思っていたからだ。


――数分後。


「終わったぞ」


イアンの合図を受け、リトワが部屋に戻ってくる。


「ふむ……採寸してなかったから、適当に作ったけど、いい感じだね」


「……まぁな……ピッタリだな。それで、オレが着ていたナース服と違う部分があるのだが……」


イアンが自分の着るナース服を見回しながら、そう呟いた。

彼の着る紺色のワーピースには、所々に白いラインがあり、硬いところから、ただの模様でないことが分ける。

そして、白いエプロンは、柔軟な動きはしない。

中に硬いものが入っているのだ。


「ふふふ……それは、ナースアーマーだよ」


「ナース…アーマー? 」


思わず、イアンは首を傾げた。


「その服には、ボクの知恵を振り絞って作られた戦闘服でね……」


リトワが、ナースアーマーについて説明を始めた。

ナースアーマーとは、天才発明家であるリトワが、戦闘用に作り出したナース服である。

紺色のワンピースは、刃物から体を守るため、特殊な繊維を使用しており、その防刃性能は並みの刃物は通さない。

白いラインの部分には、細かい金属片が仕込まれており、特に防御力が高い部分である。

そして、エプロンにはというと、中に金属板が仕込まれていた。

ただの鉄の板を仕込んでいるのではなく、機動力を損なわせないため、鉄と別の物質を混ぜて出来た合成金属を使用している。

その合成金属の板は、鉄よりも硬く、紙のような軽さで、エプロンの胸当ての部分とそこから下の部分に分けて、計二枚の合成金属板がエプロンの中に入っている。

他、あらゆる部分に、リトワが考え出した技術が使用され、このナース服は最先端の戦闘服であると言える。


「このナースアーマーをイアンさんが着ることで、戦うナース……ソルジャーナースになるんだ! 」


リトワは、高らかに声を上げながら、イアンに指を差した。


「……う、うむ…」


普段より高揚しているリトワに、イアンは気の利いた返事が出来なかった。

彼女の説明で、イアンはこのナース服が良いものでるのは分かったが――


(すごい勿体無いと思うのは、気のせいだろうか…)


イアンは、心なしかそう思っていた。


「それで、服は分かったが、斧は? 」


「斧? ちょっと待っててね」


リトワは再び、リュックサックの中に手を入れる。


「はいこれ」


すると、彼女はそこから取り出した物をイアンに渡した。

それは、取っ手の付いた四角い箱で――


「救急箱? 斧ではないのか? 」


イアンは、そう呟きながら、四角い箱を受け取った。

四角い箱は、救急箱と呼ばれる物で、応急手当ができる程度の医療用品を入れる箱である。


「斧だよ。救急箱に見えるのは、武器に見えないようにするためさ」


「……? どこから、どう見ても斧には見えないが……あと、普通の救急箱より、細いな…」


イアンが救急箱を見回すが、多少変わっているところがあるだけで、斧には見えなかった。


「その取っ手にボタンがあるだろう? なんか出っ張っている部分…」


「ボタン? 出っ張り……? ここか? 」


イアンは、ボタンらしき突起物を押してみた。


カシャ! カシャ! シャキン!


すると、救急箱は音を立てながら変形し、斧の形になった。

イアンの腕と同じくらいの長さの斧で、取っ手がそのまま、持つために手をかける部分になっていた。


「おおっ! 斧だ。斧になった」


「まだ、終わらないよ。その取っ手を前に押してみてよ」


「こうか? 」


イアンは言われた通りに、取っ手を動かした。


シュコン!


すると、斧の刃が付いた部分が伸び、柄の長い斧に変貌した。


「そうすることで、中に格納してあった柄が外に出て、見ての通り斧が長くなる。あと、斧の後ろ……お尻の部分にレバーが折りたたまれてて、それを上げることで、両手で持ちやすくなるよ」


イアンは、レバーを上げて、斧を両手で持ってみた。


「……おお! 確かに。これはすごいぞ」


感嘆の声を上げるイアン。

リトワの作った斧は、イアンを満足させるものであった。


「しまう時は、またボタンを押せばいい。普段は救急箱の形態で持ち歩いて、戦う時に斧にすれば良いよ。警士隊にバレないようにね」


「ああ、分かった」


イアンは取っ手のボタンを押し、斧を救急箱の形に戻す。


「この……救急箱から斧になる……これには、名前があるのか? 」


「うーん……そうだねぇ……救急箱はファーストエイドボックスとも言うから……ファーストエイドアックス…かな? 」


「ファーストエイドアックスか……」


イアンは、リトワの言った言葉を反芻するかのうに、そう呟いた。

この国に来て、イアンはようやく武器を手に入れた。

ちなみに、ファーストエイドアックスは長いので、以後はFAAファーストエイドアックスと略す。


「気に入ったようで何よりだ。このベルトを腰に付けるといい。FAAファーストエイドアックスを取り付けれる引っ掛けが付いているんだ」


「分かった」


イアンはリトワからベルトを受け取ると、腰に付けて、後ろ腰にある引掛けにFAAファーストエイドアックスを取り付けた。


「あ、そうだ。もう一つ装備があるのを忘れていたよ」


リトワはそう言うと、リュックサックの中から黒い衣類のようなものを取り出す。


「なんだ? ズボンみたいな形をしているが……」


その衣類はペラペラとして薄いがズボンのような形状をしていた。


「うーん……似たようなものかな。これはタイツと言うものだよ。とりあえず履いてみて」


「分かった」


イアンはタイツを受け取ると、それを履くために靴を脱ぐ。


「あ……一つどころじゃなかった。靴もあるよ」


「ほう……お? このタイツというものは暖かいな。いいな、これ」


タイツを履き終わったイアンは、足が暖かく感じた。

スカートの中にあたとは言え、今までは素足であったのである。

暖かいと感じるのは当然のことと言えよう。


「うん、だろうね。足を暖かくするためのものだからね」


「他に機能はあるのか? オレが感じるのは暖かさ、動きやすさくらいだが」


「無いよ。それはボクが開発したやつじゃなくて、普通に売ってるやつだから。寒いかなって思って買ってきたんだ」


「そうなのか、まあいい。新しい靴とやらを貸してくれ」


イアンはリトワから一足の靴を受け取る。


「長いな。あと紐の編み込みも多い。これはブーツだな。いいぞ、なかなか頑丈そうだ」


ブーツは硬い革で作られており、ひざ下までの長さがある。

防御力が高く戦闘で壊れることはそうないだろう。

そう考えるイアンは、喜々としてブーツを履き始めた。


「ブーツは流石に外にもあるか。それは編み上げブーツと言ってね。最近流行っているらしいよ」


リトワが話している間に、イアンは編み上げブーツを履き終える。


「うむ、流行るのも頷ける……ということは、これも買ってきたやつか? 」


「うん。似合うかなって思って買ってきたんだ。思ったとおりだったね」


リトワはイアンの足元を眺めつつ、うんうんと頷いた。

改めて、イアンの服装を確認すると、彼はワンピースとエプロンのナース服、その下にタイツ、靴は編み上げブーツを履いている。

今更だが、今のイアンを見て男と思う人物は、彼を知る者以外は存在しないだろう。


「やはりか……しかし、悪いな。タイツとブーツの代金はオレに払わせてくれ」


「別にいいよ。大した金額じゃなかったし」


「そんなことは……あるか」


リトワがお金持ち出会ったことを思い出したイアン。


「いや、払わせてくれ。いくら金を持っていようが関係ないことだ」


それでも、自分の気持ちは変わらなかった。


「……分かったよ。二つ合わせて1000ディルだよ」


頑なにタイツとブーツの代金を払おうとするイアンに根負けしたのか、リトワが金額を口にする。


「分かった」


イアンは、財布から1000ディルを取り出すとリトワに渡す。


(本当はもっとしたけど、イアンさんはお金貯めてるっていうしね)


実際よりも安い値段を要求したリトワであった。


「うーす…帰ったぜーリトワ」


その時、部屋のドアが開かれ、ヴィクターとケイルエラが入ってきた。


「あ、イアンさん、来ていたのね」


ケイルエラがイアンに声を掛ける。


「ああ、さっき来たところだ」


「お! 新装備か……またナース服なのな…」


ヴィクターは、イアンを気の毒そうに見つめた。


「……仕方がない。この服は戦いに向いているのだ」


「そうかい」


「それで、ヴィクター達は何か分かったのか? 」


「ああ、分かったぜ。ここ最近の首切り殺人の犯行現場……どこの場所にもあったぜ。あいつの足跡がな」


イアンの問いかけに、ヴィクターはそう答えた。


「犯行現場……全部回ったのか? 場所はどうやって調べた? 」


「ああ、そのためのケイだぜ。こいつに警士隊の記録を持ち出させて、犯行現場の場所を洗い出したんだ」


「ふぅ……借りるために、けっこう苦労したわ…」


ケイルエラは、軽く息をついてそう言った。


「ほう……それで、あいつ…とは? 」


イアンが、ヴィクターに問いかける。


「あの狼野郎……ライカンスロープだぜ」


「……そうか」


ヴィクターの答えを聞き、イアンはホッと息をついた。

その様子に、ヴィクターは口を開く。


「あん? イアンよぅ、ホッとすんのはまだ早いぜ? 何かあったのか? 」


「……実は…」


イアンは、仮面の者の正体が、イオであることをヴィクターに伝えた。


「なに!? イオちゃんだと!? 」


すると、ヴィクターは驚愕の声を上げた。

自分より、年下の少女があの仮面の者であると聞けば、驚くのも無理はないだろう。


「イオちゃんは、違うだろ」


しかし、彼が驚いたのは、そういうことではなかった。

自分が思う、仮面の者の正体ではない人物の名前をイアンが言ったので、彼は驚いたのだ。


「なに!? どういうことだ? 鈴の音は、確かにイオから聞こえてきたのだぞ? 右手首にも山彦の鈴はあった」


「うっ……!? そこ…気持ち悪ぃな……イオちゃんじゃないのに、イオちゃんに鈴がある……なんだこれ、どうなってんだ? 」


ヴィクターは頭を抱えて、唸りだした。


「……初めて見るわ。ヴィクターの言うことと、事実がこんなに食い違うなんて……」


ケイルエラは額に汗を浮かび上がっていた。

彼女の言う通り、この状況は初めての出来事で、どうすればいいのか分からないのだ。


「……おかしなことが起こっているのかな? とりあえず、ヴィクター先輩は、誰が……その仮面の人だと思うんだい? 」


誰も口を開かなった時、リトワがヴィクターにそう訊ねた。


「あ? そうだな……俺は、イオちゃんのそっくりさん……イオちゃんに似てる奴が仮面のあいつの正体だと思う……」


「似ている……何を言っているのだ? 」


イアンは、ヴィクターの言うことに理解できなかった。

彼の発言は、イアンをますます混乱させたのだ。


「ああああ! クソッ! 俺もよく分かんねぇけど、これだけは言える。イオちゃんじゃなくて、別の奴だ。これは間違いないと思うぜ」


ヴィクターは、イアンの顔を見つめながら、そう言った。


「……正直、ヴィクターを信じたい…な。しかし、真相を突き止めるには、イオを調べなければならないだろう……」


イアンは、ヴィクターにそう答えた。

取り付けられた山彦の鈴という事実と、ヴィクターの言う直感。

イアンは、そのどちらかが正しいのかを決めることはせず、真実を確かめることにしたのだ。


「ああ、ほっとけねぇもんな。けど、ライカンスロープの件も忘れちゃ困るぜ」


「もちろん、忘れてなどいない。それで、これからどうする? 」


イアンが、ヴィクターにそう訊ねると――


「おう。実は、ライカンスロープの犯行現場を回っている時に、よく見かけた足跡があったんだよ」


ヴィクターはそう答えた。


「フリッツ・エグバード……こいつが怪しい。今から、この男を調べに行こうぜ! 」


これからイアン達は、フリッツ・エグバードという男について調べることになった。

彼が首切り殺人事件もとい、ライカンスロープとどのような関係があるのか、まだ誰も知る由もない。








2016年8月21日 誤字修正

これからイアン達がは、フリッツ・エグバードという男について調べることになった。

                ↓

これからイアン達は、フリッツ・エグバードという男について調べることになった。


2017年9月30日 文章追加


イアンはリトワからベルトを受け取ると、腰に付けて、後ろ腰にある引掛けにFAAファーストエイドアックスを取り付けた。


↓ここから下が追加した文章↓


「あ、そうだ。もう一つ装備があるのを忘れていたよ」


リトワはそう言うと、リュックサックの中から黒い衣類のようなものを取り出す。


「なんだ? ズボンみたいな形をしているが……」


その衣類はペラペラとして薄いがズボンのような形状をしていた。


「うーん……似たようなものかな。これはタイツと言うものだよ。とりあえず履いてみて」


「分かった」


イアンはタイツを受け取ると、それを履くために靴を脱ぐ。


「あ……一つどころじゃなかった。靴もあるよ」


「ほう……お? このタイツというものは暖かいな。いいな、これ」


タイツを履き終わったイアンは、足が暖かく感じた。

スカートの中にあたとは言え、今までは素足であったのである。

暖かいと感じるのは当然のことと言えよう。


「うん、だろうね。足を暖かくするためのものだからね」


「他に機能はあるのか? オレが感じるのは暖かさ、動きやすさくらいだが」


「無いよ。それはボクが開発したやつじゃなくて、普通に売ってるやつだから。寒いかなって思って買ってきたんだ」


「そうなのか、まあいい。新しい靴とやらを貸してくれ」


イアンはリトワから一足の靴を受け取る。


「長いな。あと紐の編み込みも多い。これはブーツだな。いいぞ、なかなか頑丈そうだ」


ブーツは硬い革で作られており、ひざ下までの長さがある。

防御力が高く戦闘で壊れることはそうないだろう。

そう考えるイアンは、喜々としてブーツを履き始めた。


「ブーツは流石に外にもあるか。それは編み上げブーツと言ってね。最近流行っているらしいよ」


リトワが話している間に、イアンは編み上げブーツを履き終える。


「うむ、流行るのも頷ける……ということは、これも買ってきたやつか? 」


「うん。似合うかなって思って買ってきたんだ。思ったとおりだったね」


リトワはイアンの足元を眺めつつ、うんうんと頷いた。

改めて、イアンの服装を確認すると、彼はワンピースとエプロンのナース服、その下にタイツ、靴は編み上げブーツを履いている。

今更だが、今のイアンを見て男と思う人物は、彼を知る者以外は存在しないだろう。


「やはりか……しかし、悪いな。タイツとブーツの代金はオレに払わせてくれ」


「別にいいよ。大した金額じゃなかったし」


「そんなことは……あるか」


リトワがお金持ち出会ったことを思い出したイアン。


「いや、払わせてくれ。いくら金を持っていようが関係ないことだ」


それでも、自分の気持ちは変わらなかった。


「……分かったよ。二つ合わせて1000ディルだよ」


頑なにタイツとブーツの代金を払おうとするイアンに根負けしたのか、リトワが金額を口にする。


「分かった」


イアンは、財布から1000ディルを取り出すとリトワに渡す。


(本当はもっとしたけど、イアンさんはお金貯めてるっていうしね)


実際よりも安い値段を要求したリトワであった。


↑ここまでが追加した文章↑


「うーす…帰ったぜーリトワ」


文章を追加した理由

ずっとイアンがタイツとブーツを履いているとイメージしていたのですが、読み返してみるとその描写が無かったので追加しました。



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