一話 木こりのイアン
初投稿です。至らぬ点が、多々ございますがよろしくお願いします。
数百年前――世界は魔王により、蹂躙されていた。
屈強な魔王の軍団に人々は次第に抵抗を止め、魔王の為すが侭の世界に成りつつあった。
そこに一人の戦士が現れる。
戦士は、巧みな剣術と強力な魔法、そして型破りな戦術を駆使し、魔王軍を圧倒する。
やがて、戦士は魔王を打倒し、世界に平和が訪れた。
戦いが終わった後、戦士の消息は途絶える。
人々は、その戦士を勇者と呼び、この伝説を後世に語り継いでいった。
――バイリア大陸――
世界で4番目の面積を誇る大陸で、勇者が最初に救った大陸だと言われている。
この大陸の西方に位置するグリン森林近辺。
この場所から彼の長い冒険が始まる――
カツーン――カツーン――
グリン森林に薪を割る音が響き渡る。
その音は、森林の手前にある小屋の方から聞こえてくる。
小屋の近くで一人の少年が黙々と薪を割っていた。
少年の髪は、人間では珍しい水色の短髪、顔は女性と見紛うばかりに女顔である。
その中肉中背の体に一般の服より頑丈な木こりの服を見に着けていた。
少年の名はイアン・ソマフ。
この小屋で暮らし、近くの村に薪を売ることで生計を立てる若者である。
「こんなところか」
割った薪をきれいにまとめ、イアンは呟く。
薪割り作業を早めに切り上げる。なぜなら、今日は村に、薪を売りに行くからだ。
村へ行く準備をするため、小屋に入った。
ふと部屋の奥に掲げてある一丁の戦斧が目に入る。
その戦斧は、イアンの父であるアデル・ソマフのものだ。
かつて、アデルが傭兵であった頃、この戦斧を片手に戦っていたと父から聞かされている。
アデルは、数々の強敵を相手に獅子奮迅の戦いをしていたことから、戦鬼又は斧士と呼ばれていたらしい。
若くして隠居、木こりとして数年働いた後、どこかへ行ってしまった。
一人息子のイアンを置いて――
父がいなくなって八年。イアンは十四歳になった。
戦斧を見つめ、八年間の出来事を思い返していると、父の去り際に辿り着く。
記憶の中の父は言った――
『泉に斧を落とすなよ』
9月20日―ルビの表示修正――「黙々」