十二話 依頼
「とりゃあああ! 」
ロロットが、魔物に向かって棒を振り下ろす。
「フギィ!」
頭にロロットの一撃を貰った魔物は、仰向けに倒れて力尽きた。
魔物の姿は、緑色の肌、人間の子供大の背格好をしたゴブリンと呼ばれる魔物であった。
「次ぃ!」
ロロットは、次の目標を別のゴブリンに定め、駆け出した。
「……」
ロロットが戦っている間、イアンは黙々と草を毟っていた。
イアン達は今、受けた依頼をこなすため、シロッツから北にあるルガ大森林に来ていた。
受けた依頼は、定量の薬草を用意するもので、指定された薬草がある場所は、新米冒険者でも倒せる魔物しかいない。
ルガ大森林の浅い領域に生息するので、初めてこなす依頼としては最適だった。
イアンは、薬草が群生している場所を発見したのだが、近くにゴブリンの集団がいた。
ロロットが自分に任せろと張り切り、ゴブリンの集団に飛び込んだ。
最初こそ、心配していたイアンだが、多勢を相手に無双するロロットを見て、ゴブリンの相手を任せ、自分は薬草の採取に勤しんだのである。
「ふぅ…」
目に入る薬草を全て採取したイアンは一息ついた。
採取した薬草の量が、定量に達したことを確認したイアンは、ゴブリンと戦っていたロロットの方を見る。
ゴブリンの山ができていた。
「薬草は集まった? アニキ」
「ああ、これだけあればいいだろう」
「じゃあ、帰ろっか」
イアン達は大森林を後にした。
――夕方。
「こちらが報酬となります」
シロッツに戻ったイアンは、ギルドで達成した依頼の報酬を受け取る。
報酬は2000Q。Qとは、通貨単位のことで、世界共通である。
ちなみに今回、達成した依頼が、イアン達が受けれる依頼の中で、最も報酬の高い依頼だった。
受付を離れ、明日行う依頼を探そうと掲示板の前に行く。
掲示板を見ると、中央に貼り付けられた、大きな依頼書が目に入る。
そこには、大商人の護衛と書かれていた。
内容は、ある商人を、北方にある都市カジアルまで護衛すること、報酬は一人あたり8000Q支払うこと、冒険者のランクは不問とすることが書かれていた。
「アニキ、これやるの? 」
「わからない。とりあえず、話だけでも聞きに行くか」
イアンとロロットは、依頼所に書かれてある、説明会場の商人の店に向かった。
商人の店は、アクセサリー屋だった。
店に入ったイアンとロロットは、依頼で来たことを店員に伝えると、上の階に行くよう促された。
二階に上がるとそこには広い部屋があり、たくさんの冒険者が集まっていた。
中年の男性、太った獣人、鎧を身につけた巨漢とその他、そこにいる者たちは皆、屈強であった。
しばらくすると、先ほど下の階にいた店員がやって来た。
どうやら、彼が商人――つまり、依頼人らしい。
商人は、その肥えた腹を揺らしながら、冒険者達の前に立つ。
「えー…皆さん、私が商人こと依頼者であるタトウと申す者でございます。早速ですが依頼について説明させてもらいます」
タトウは続ける。
「依頼書に書かれた通り、私を都市カジアルまで護衛をしてもらいます。私がカジアルに行くのも、この町で私は…」
タトウは、カジアルに行く理由を語るがどうでもいいとイアンは思った。
ロロットもあくびをしている。
「…といった次第でございます。何か質問はありますか? 」
ほとんど自慢話であった。
「人数は、何人まで絞るんだ? 」
中年の男性が質問した。
「制限はありません。参加した冒険者様の全員には、8000Qの報酬を差し上げると約束しましょう」
「うおおおおおおおお!! 」
冒険者たちから歓声があがる。
すると、タトウは手をポンと叩くと――
「ああ、言い忘れてました。旅の経路ですが、北門から出発し、ルガ大森林を抜けてファトム山をとおる経路で行きたいと思います」
「んん…?」
イアンは、今の状況に困惑する。
タトウが旅の経路を説明した後、たくさんいた冒険者は数名にまで、減っていた。
「ひー、ふー、みー……五人ですか。思ったより少ないですねぇ」
タトウが、残った冒険者を数えるとそう呟いた。
2016年11月13日――脱字習性
受けた依頼は、定量の薬草を用意するもので、指定された薬草が場所は、新米冒険者でも倒せる魔物しかいない。
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受けた依頼は、定量の薬草を用意するもので、指定された薬草がある場所は、新米冒険者でも倒せる魔物しかいない。