2章 『漆黒の大地』
2章
・・・
・・・僕は今どこにいるんだ
・・・僕はさっき、動けなくなって?・・・
ゴキキンは意識が戻った時、漆黒のブラックホールとでもいうべき色がない世界を見た。
・・・ここはどこだ?
覚醒したゴキキンは体を動かそうとしたが四方八方に壁を感じていた。さきほどはうつぶせで身動きが取れなくなったはずだったが、今はあおむけになっている。トンネルの中ではないのか、彼は思った。
どれくらいの時間がたったのか、ゴキキンは考えたがわからなかった。なにせ黒い。色がないのだ。
だが、彼はこんな狭いところではあって、密封された空間でも呼吸は正常だった。どこかしらから、酸素が入ってくることが察せられる。
「僕が何をしたっていうんだ」
ゴキキンは自分に問いかけた。
この数年間、僕は配信者としてゲーム実況をして、商品紹介をして、あらゆる場所を撮りまくった。自慢のダンスや歌唱力でTVなどにも出て、CDも出した。それは順風満帆だった。配信者としてトップの地位をつかんだといっても過言ではない。なのになんでこんなことになっているんだ。夢ではないのか?僕はこれからもっともっと、有名にならなきゃいけないんだ。今日も明日も動画を上げ続けなきゃならないんだ。それが僕の仕事なのだから。ゴキキンは今までのことを邂逅したが、何も間違っていないと思った。
それから、何時間たっただろう。それは唐突に起きたのであった。
『おい、ゴキキン。いやゴキブリ。起きてるか?いや起きろ。ははは。私は今愉快でたまらないぞい!。日本一の配信者を捉えられた優越感でな!』
多少エコーがかかった音声が彼の耳元に入ってきた。
「だれだ?僕をここから出してくれ!」
『もちろん。出してあげるさ。心配には及ばんぞい!その箱から出してあげるよ。まあ落ち着きたまえよ。ゴキブリ君(笑)』
「そもそも誰だ、お前は!これは犯罪だぞ!監禁という名のな!」
『犯罪なんて、そんな乱暴な。ちょっと小屋に入ってもらってるだけではないか』
「何が小屋だ!とにかくここから僕を出してくれ!」
そうゴキキンが言うと、(ガシャッグオオオオオオン)という音とともに上部が解放された。
ゴキキンは即座に立ち上がろうとしたが、丸一日くらい(実感として)同じ姿勢でいたせいか、すぐには立ち上げれなかった。関節を曲げたり、伸ばしたりして、数分後、徐に立ち上がると、恐る恐る、小屋(変なエコーの男が言った)から出た。
先ほどよりは、光度が見違えるほど上がった感じがしている。しかし、自意識がはっきりしないでぼんやりとする。
「おーい、ここから、おい、どうすればいいんだ」
そこは5m先が見えない空間だった。
とりあえず、ゴキキンは方向感覚が失われた、薄暗い大地を恐る恐る、踏みしめていった。靴はなぜかなくなっていることに気付いたが、前にただ進んだ。
しかし、前に進んでも進んでも、壁1つ当らない。
「どうなってんだ。おーい。さっきのエコー男。返事してくれ。」
無情にも、またしても返事はなかった。
それ以降もゴキキンは一方向に向かって歩き進めたが、ただ大地があるだけだった。
踏みしめても、踏みしめても。なにもなかった。”色のない”地だけがある、世界だった。
へとへとになったゴキキンは足を止めた。何時間歩いたかわからなかったが、もう足が限界のようだった。空腹と喉の渇きも限界に来ていた。正気を失ったゴキキンは横になると。諦めたように意識が朦朧としてきた。音はなく、世界が死んだようだ。ゴキキンは思った。。