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1章 『土管トンネル』

1章


季節は皐月となり、暖かさを感じるようになってきた感じでる矢先、ゴキキンは動画撮影をするべく、大型アミューズメントパークにいた。

日本で最も怖い“おばけ屋敷”ができたとのことで、事前にアポをとった。

今日はそのアミューズメントパークは休園日とのことだった。平日を使っての大型の改装工事をしているとのことで、施設内は建築関係の人が結構いた。 


「本日はわが○○パークの“恐怖の館”の事前。プレゼーションという形でお越しいただいて、ありがとうございます。早速ですが、“恐怖の館”にご案内させていただきますね」


 先ほどから、案内してもらっている、○○パークの田中さんは30代の女性でこのパークのマスコミ向けの案内役などをしているかたらしい。


「いえいえ、こちらこそ無理を言って、お願いした立場なのに、こんなご案内なんて、恐縮ですよ」

 ゴキキンは適当に社交辞令的な発言をすると、無言で“恐怖の館”に向かった。


「横山さん、このカメラで僕の前から表情を撮ってください。低いアングルからお願いします」


先ほどから、ゴキキンの後ろを存在感なく、歩いてきていたのが、ゴキキンの世話役兼カメラマン。いわゆるマネージャーの横山だ。

横山は高身長ながら、根暗な感じで。いかにも暗いって感じの男だ。

ゴキキンとは、高校時代からの友人でゴキキンが配信者として売れた後、ゴキキンが横山が無職だということを気にかけて、「僕と働かないか」といったのがきっかけで、今現在の関係にある。

「了解しました」


 横山は低いトーンでうなずきながら、話した。

この二人仕事上では、敬語を貫いているし、横山はゴキキンに対して、本名ではなく、配信ネームで呼ぶ。ゴキキンは今のところネット上では本名は漏れていないし、漏らしたくない、配慮からだという。


「では、ここが入口です。中は暗くなっておりますので、お足もとにはごちゅういください」


田中さんが注意を促すと、横山はうなずき、中に入った。続いて、ゴキキンも中に入った。


「じゃあ、まわしてください、五秒でよろしく」


いつものようにあいずをだすと横山がRECした


「やっほーイエス!ゴキキキーン♪

僕がいまどこにいるのかと申しますとですね、うわぁ怖い、怖い、○○パークに来週オープンする“恐怖の館の入り口付近のいます!

もうね!僕の顔見たら、わかると思うんですが、もう真っ青です。やばい、やばい。

ほらね。僕がやばいっていうことはやばいんですよ!

でも、もう後戻りはできません!ではでは、未踏の境地に足を踏み入れていきましょう!」


「よし、いいだろう」


ゴキキンは一度止めると、

外に出で、田中さんに


「ここからは驚いてるシーンを特に集中してとっていきたいんで、どのあたりで、どんな、ハプニング的なことがあるのか、教えていただきたいのですが」と尋ねた。


「すいません。一度。中を回ってもらってから、もう一度回ってみていただけませんでしょうか。なにせ私は一度も“恐怖の館”に入ったことがないんですよ。ですから、どんなことがどこで起きるのかは想像だにできないんです。」


 ゴキキンは社員なら中のことくらい、把握しておけよと思ったが、田中さんにわかりましたと伝えると、会釈し、再び、“恐怖の館”へと足を向けた。


「じゃあ、横山、カメラはいいから、一緒にとりあえず、まわろうか」


小さい声でゴキキンはいうと。横山はうなずいた。


二人は中に一歩、一歩、足を踏み入れた。

ヒグラシの鳴き声が耳に響き始めた。

すると、突然、頭部の切断された、屍が突如として、閃光とともに姿を現した。


「うわあ」


ゴキキンは驚いて、よろつくと横山はくすっっと笑った。


「笑うなよ、まじビビったわ」


ゴキキンはおばけ屋敷だと思って撮影に訪れたが、これはグロハウスじゃないかと思った。

そもそも、人間の頭部のないリアルな屍なんて、ホラーゲームで出てくるもんだろ。なんでこんな、○○パークのアトラクションがこんなにグロイんだ!

 ゴキキンは恐怖のあまり、数秒間停止、していた。さきほどの屍はその場から消えていた。

あれって本物じゃないよなとゴキキンは疑った。

入り口に引き返そうとも思ったが、田中さんに笑われるのも恥ずかしいから、頑張ってゴキキンは中に赴くことにした。

 「よし、いくか」

横山はクスッと微笑むと。一行は歩き始めた。

 

一歩一歩ゴキキンはよろつきつつも、前に進む、その傍らに横山が自嘲気味な面をしながら歩く。

道は人が3人並べるくらいの大きさで、やや圧迫感を感じる。

 すると、ゴキキンたちは、すこし膨らんだ、スペースに出た、薄明りな感じで気味が悪い。


「なんだここは、行き止まりじゃないか?」


ゴキキンは疑問を素直に口にした。


「あそこに何か書いてあるよ」


横山が前方の壁に近づく。ゴキキンも近づくと、そこには明朝体で。


『もう、後戻りはできないますよ。フフフ。君たちには、横にある土管の通路に入っていただきます。フフフ。出口はあるかって?どうなんざましょうね。フフフ』


「なんだ、この仕掛けは」


ゴキキンは口にすると。


「土管ってこれのことか、めっさ暗いし、ちっさいんやけど、これに入れってことか」


横山が口にした。

ゴキキンはその、土管とやらを目にした。


「なんだこのアトラクション。てかこんな小さい土管の中をどうやって進めってんだ。中は真っ暗だし。狭すぎる。閉所はあんまり得意じゃないんだよ僕は」


ゴキキンはうなだれ、拒否感を示した。


「じゃあ戻る?」


横山は苦笑いしつつも、リターンを促した。

 ゴキキンは内心、戻ることを希望していたが、あの田中さんに笑われることもいやだが、第一、わざわざ自ら、取材を申し出た手前、「やっぱり、怖いのでやめます」なんて、いえないというのが本音だった。


「僕も土管に入って、出口を目指すのが、一番だとは思うけど。やっぱり・・・。うん!ちょっと、トイレに行きたいと思ってたんだ」


 明らかに、いま思いついたと思われる、言い訳を口にすると、横山に何も聞かず、来た道を戻り始めた。横山も無言でいざなった。

 戻り始めて数歩。ゴキキンは背筋を凍らせることになる。


「おい、なんで、道がないんだ!どうして壁になってるんだ!」


 ゴキキンは確かに、この一本道を歩いてきた、なのに、道がない。ということは。


「俺たち、あの土管に入るほかないようだな」


横山があきらめかけるように言った。

 どうやら、ゴキキンたちは、あの土管に入るほかないようだ。


「あのおお、スタッフの誰かさん、ちょっと、あの、用事ができたんで、一回ここを、開けてもらえませんか?」

ゴキキンが大声で、掛けた言葉は一瞬にして、消え去った。


目の前には、○が一つ、この中に入るのか。とゴキキンは恐怖心を感じていた。なんといってもしつこいようだが、真っ暗で狭いのだ。この中を進むってなると、勇気がいるものだ。


「どっちが先に行く?」


横山がゴキキンにたずねる。


「横山が先に行ってくれないか?」


 ゴキキンは仮に自分が先に土管に入ったとして、後から横山がついてくることになるんだが、そこで横山がつまってしまって、仮に土管の奥が行き止まりだったら、完全に閉じ込められてしまうことを想像していた。もちろん、これはアトラクションだとゴキキンは思ったが、何となく怖かったのだ。実際横山の図体がゴキキンの1・5倍あることがそのことをより強く感じさせた。


「俺が先?わかった」


横山は躊躇なく、土管上半身を入れると、跳躍して、中に入った。


「お前も来いよお。」


横山がゴキキンに入ることを促すと、ゴキキンは恐る恐る、土管に手を置いた。

地上から土管までは、50センチほどある。

横山と同じように、「よいしょっ」という掛け声で、中に入った。

 

 ゴキキンは戦場の戦士のように、腕を前へ、太ももを前へとゆっくりと前進させていた。時折、数メートル先にいる、横山と言葉を交わしつつ進んだ。

 ゴキキンは閉所特有の息苦しさを感じた。こんな格好で進んでいるってのもあるかもしてないが、閉所だ。人間の本能で恐怖から派生する、気分障害があるのだろう。


「横山、何か見えないか?」


「真っ暗だよ。」


 なにせ、数十分は進んでいる。この時点で何かおかしいとだれもが、感じるだろう。大型アミューズメントパークのアトラクションがこんなに苦悩を強いてもいいのか、家に帰ったら、ネット掲示板にここの情報をもらしてやる。ゴキキンは疲れからの怒りからそんなことを思った。



それは突如として起きた。まるで一瞬の出来事だった。

ゴキキンは目の前で起きた一瞬の爆音にただ呆然とした。


「ん?横山。おい。」


 ゴキキンは状況が整理できなかった。なにせ、突然爆音が鳴り響いたと思ったら、横山が呼びかけに応じなくなった。どうなってんだ。ゴキキンは思った。

爆音で体が固まってしまった、ゴキキンであったが、ようやく、今の状況がものすごいまずい状況であることに気付く。


「おい、前がふさがってる?」


 ゴキキンが言う通り、長い土管、もうこの際トンネルといってもいいものだったが、前方がふさがっていた。

 ゴキキンは混乱した。なんで突然横山がいなくなるんだ。そして、なんで前方がふさがっているんだ。

 ゴキキンはパニックを起こしかけていた、人間だれしも、こんな空間でいわば閉じ込められるものなら、誰だって混乱するだろう。

「これから戻るにしたって、こんな姿勢じゃ無理だ。どういうことだ。おーい。誰か出してくれ!」

 ゴキキンは一人ぼっち、閉じ込められたトンネルのなかで、大声で叫んだが、その声はトンネルの中で散っていく。次第に息苦しくなった。そして眠気が湧いてきた。

「もうだめだ」

何かを悟ったかのように、目を閉じた。


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