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僕の嫌いな故郷

僕は故郷を飛び出した。



 僕の故郷は辺境の県の片田舎で、山と田んぼで風景が終わってしまうような場所だった。



 春は雪解け水による泥の匂いが充満して、夏は蝉が大合唱、秋は収穫の手伝いをしているうちに一日が終わり、冬は雪で閉ざされる。



 そんな何もない田舎が大嫌いで、僕は長男として家を継ぐことを厳命されながら18歳で家を飛び出した。



 向かったのは東京。日本の中心にして、世界でも有数の発展を遂げた都市。



 人口は1千万を超え、大地を埋め尽くすばかりの建物が広がる、僕の理想の町だ。



 実際、僕が辿り着いて最初の感じたのはうれしさだった。



 目の前にコンビニがあり、24時間いつでも明かりがついている。その素晴らしさを知りたくて、深夜二時にわざわざ起きて、確かめに行ったこともある。



 一人の寂しさが訪れたら、繁華街に出たらそれで十分だ。ライトは消えることなく点滅し、人通りは絶えることがない。



 しかし、僕は一ヶ月が過ぎたあたりから急に都会が嫌になった。



 まず、空気が不味い。今は排気ガスも多くないから綺麗などという人もいるが、それは昔に比べて相対的に、であり山の空気には絶対に勝てない。



 さらに街の人間はとても無機質だった。初めて会う人同士が会話することは滅多にない。とても空虚なな関係だ。


そして何より、都会は命が少なかった。もちろん人の数では、圧倒的に都会の方が多い。しかし、昆虫や魚、鳥など全てを含めた命という物では圧倒的に田舎が多いだろう。



 私は今、バスに乗っている。田舎に帰るためのバスだ。両親はおそらく罵倒するだろう、二度と逃げられないように換金するかもしれない。


 けれど、あそこ意外に僕の帰る場所はない。僕はあの無数の命に抱かれたいのだ。

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