1章4話〜懸賞金を求めて〜
怒涛の入学初日から1ヶ月...
王都の生活にも慣れたものである。
剣技の座学授業。剣術コースでもないので基本しか教えられない。
剣技については父からこれでもかと叩き込まれたので気分はというと、かけ算までできる幼稚園児が小学1年生の授業の算数を受けているといった感じだ。
生活はというと、フリースさんとも良好な関係を築けてると思うし、ゲームのシナリオ的にも特に変わった点はない。
穏やかで順風満帆な生活を送っている。
まぁ、ゲームのシナリオ的に穏やかじゃなくなっていくんだけどね。
ま、そんな先のことを考えても仕方ない。
とりあえず死なないように出来る限り力をつけておくだけなのだ・・・
「えぇ〜それで。基本の剣技から派生した応用の剣技こそが至高であり・・・基本の剣を早く習得し、応用に・・・」
応用こそ至高か・・・
応用というものは、基本の積み重ねであり基本を疎かにしてはいけないというのが僕が今の所大事にしているもっとうの一つである。
しかし、この世界にはそのような考え方はあまりしないらしい。魔術にいたっても、魔法を専攻しすぎて、魔力の研究をしている人なんて、ほんの一握りしかいないと聞く・・・
その分まだ未知の領域。僕が介入する余地が十分にあるということ。なんて都合がいいんだろうか!
そんなことを考えていると授業終わりの鐘が鳴る。
「ん?あぁ、もう終わりか。 それじゃあ、今日はここまで。しっかり復習しておくように」
剣術座学の爺さんが教室から出ていく。
「っ〜と終わった〜!!なぁリン!そういやさ、知ってるか?学生が上級魔術師の犯罪者を捕まえたんだってよ!」
ケイが嬉々として語ってくる。
「へ〜そりゃあすごい。」
僕はその話に淡白に返した。
「1ヶ月前らしいんだけどな?なんとそいつ、王都じゃ名の知れた犯罪者だったらしくてな?なんと懸賞金が2000金貨!!」
「2000!?」
僕は思わず声を上げてしまった。
2000金貨。つまり2000万円。
欲しい!喉から手が出るほど欲しい!!!
魔道具コレクターの僕からしたらお金は死活問題!
とりあえず今、僕はバイト戦士としてバイトを掛け持ちしまくっている。
異世界でだ!!!
異世界でバイトをしている!
異世界といえば冒険!魔物を倒して金稼ぎ!!
ダンジョンで宝箱!!!!
どうして、なんで僕はバイトなんてしてるんだ・・・
理由は簡単だ。ダンジョン探索は校則で禁止されているのだ。
元の世界の校則なら隠れて無視して色々してたが、この学園ではそうはいかない。
名門高校すぎて、校則違反=退学が常なのである・・・
厳しすぎでは?
ともかく、そんなリスクを冒してまでダンジョン探索はできない。森に行って魔物討伐も考えたが王都というだけあって魔物が狩り尽くされている。
そもそも討伐した魔物のドロップ品を売るには冒険者登録なるものが必要らしい...もちろん校則違反である。
子供の頃はそんなこと気にしていなかったため、闇市っぽい場で取引していたが。
闇市の店主が続々と逮捕され
「あ、これあかんやつや」
と思い断念。金稼ぎが難色を示した。
そんな僕にとって2000万は喉から両手が出るほど欲しい!!!
「そんでよ、そいつ、名前も言わず2000金貨も貰わず去っちゃったんだってよ!」
「何それ勿体無い!!!!!!」
僕は興奮のあまり、机を叩き立ち上がってしまう。
「うお!ビックリした!?」
「許せない、許さない、寄越せ、そのお金僕に寄越せ、どこの馬鹿だそんなヒーロー気取りの野郎は!」
「お、おう、生活、苦しいんだな、そういやリン放課後いっつもバイト三昧だもんな〜」
欲しい!なんとかその金を手に入れる方法は・・・偽るか?いや、現実的じゃない 魔法で顔を変える?いや、対象の顔を知らないし・・・
「ぶつぶつぶつぶつ」
「俺の話、聞いてねぇし・・・」
そうか!それしかない!流石僕。
「ぐへ、ぐへへへへ」
「お、おーいリン、どうした?帰ってこーい?」
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(夜)
「え、えぇっと、リンさん。な、なんですかその格好は・・・」
黒い紳士服に仮面。
僕、いや我は今、懸賞金対象を狩る懸賞金ハンターとなった!!
「カッコいいでしょ〜」
「え、えぇ・・・なんと言いますか・・・か、感性は人それぞれだと思います・・・」
おやぁ?反応が悪い。まぁそんなことはどうでもいいんだ!!我はただ、悪人を狩る。世界の平和とお金のために!!!!!
「り、リンさん、もう22時ですよ!こんな時間にどこへ行くのですか!?」
「お金かs....ゲフンゲフン世直しに行ってくる。」
(王都住宅街)
陰と同化し、屋根の上を颯爽と飛び回る謎の男・・・。すごく・・・良い!!!!
厨二心をくすぐってくれる!!
「さてと、懸賞金対象の顔はチラシで分かったけど・・・何処にいるのかな・・・」
テレポートも相手の魔力の感覚を分かってないと使えないし・・・
ま、路地裏とか探せばそのうち見つかるでしょ。
(23時)
見つからん!!!
というか、相手も馬鹿じゃ無いし、そもそも指名手配されてれば王都からなんて出て行っちゃうしな・・・困った、非常に困った。
「しかし、ここで止まるわけには行かない!!!
僕には大金が待っている!!!」
と、天才僕はここで思いついた。
『魔法を使おう』
ここで凡人ならこう思うだろう。
「懸賞金対象を探せる魔法なんてあるのか?」
もちろんそんなものは無い。
あるはずがない。
しかし!魔法のエキスパートを目指す僕だかこそ思いついた革命的アイディア!!
ずばり・・・無いなら創ればいいのだ!!
まぁ待て、言いたいことは分かる。
誰でも思いつくよな、調子乗りました。
さて、魔法とは構築式である。ファイヤーもアイスボールも元々は魔力。魔力を属性をつけて構築したものにすぎない。つまり、構築式を創ってしまえばいいのだ。
しかし、1から即興でこの限定的な魔法を創れる術は僕には無い。詰みか?否!ならば元から存在している近しい魔法をアレンジすれば良いのだ。
まぁ始めよう。リンちゃん3分クッキングである。
さてさて、ここにございますのは戦闘中に相手の詠唱を正確に聞き分けるために独自に開発しました無属性魔法。『詠唱チェッキング』
効果は選んだ対象から出た音のみを拾うことが可能。今の所詠唱をしないのは僕と古代さんくらいしか確認していないのでなかなかに使い勝手が良い魔法である。
さて、この構築式を少し変更する。
構築式とは文章だと思っている。
小説を書くように矛盾なく、それでいて分かりやすい文章、物語のようなもの。
僕が今しているのは完成した物語にちょっとした短編を加えてあげていること・・・
なので僕も文章を書き留めるイメージで構築式を作っている・・・
話が逸れたが
今回の変更点は大きく分けて
1.選択した相手では無く、選択した単語を聞き分ける。
2.精密度を下げる代わりに要求魔力量を減らす。
3.単語を感知した場合対象の魔力を少し奪う。
この3つだ。
もちろん細々とした設定もしているが割愛。
理由としては。2番を入れたのは当然魔法なので魔力が減り続ける。
別にこの程度消費したところで差し支えなどないが、僕の勿体無い症が出てしまったため2をつけた。
おまけ程度だと思ってくれてもいい。
3番は僕がテレポートを使うため。
僕のテレポートは対象の魔力の質を知らないと使えないのだ。魔力の質に関しては後々。
つまり、テレポート先を設定するための旗みたいなものである。
重要なのは1番。
僕はこの作戦において、逃げに徹してる奴を捕まえるのを諦めた。逆に今、誰かを襲ってるやつを狙い撃ちすることにしたのだ。
設定する単語は
「助けて」 「help」 「殺される!」 (悲鳴) 「最後に一つだけ〜」 「許して」 「くっ、殺せ」 「貴様!私が〜家と知ってのことか!」
などバラエティ豊富なものにした。
さて、セッティングはここまで。
あとは実践のみ!!ちなみに魔法名は、「listen to help signs」とした。
「我を求める声よ。応えよ!」
効果範囲はヘンゼル王国とその隣国4つ。
早速聞こえてきた・・・
「きゃー!たすけてぇ〜!」
僕の耳にそんな声が届く。女の子。幼い。
行くしかない!!!
絶対!助けて賞金をゲットしてやる!!
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(ヘンゼル王国王都下町住宅街)
「この家か!まさかこんな住宅街で・・・拉致か?監禁?強盗の可能性が高いか。とにかく窓から様子を・・・おや?」
「きゃー!助けて〜」
「ほらほら〜もう寝る時間だぞ〜!大人しく捕まれ〜」
「あらあら」
女の子とお父さんが戯れてそれをお母さんがニコニコ見守っているだけ・・・
何で平和なんだ。犯罪とは無縁じゃないか・・・
まぁ何と無くわかってたさ・・・声色が全然助け求めてなかったし。
気を取り直して、次!!!!
(23時5分)
ダメだ!次!!
(23時7分)
カップルだった、次!!!!
(23時9分)
宿題中の学生だった!頑張れ!次!!!
(23時11分)
くっ殺を練習してる女騎士だった!次!!!!
(23時12分)
恋で胸がいっぱいの男の子だった!次!!
次!! 次!! 次!! 次!!! 次ぃ!!!!
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(誰かの家の屋根の上)
(23時30分)
さてと、どうしたものか・・・あの後も何回か試したが、そう簡単に当たるはずもなく・・・大体イチャイチャしてる男女のとこしか当たらなかった・・・
というか、意外と助けを呼ぶ単語を言い放つ人が多い・・・使っててドンと疲れる・・・
僕は右手を顎につけて考える。
「改良の余地がありそうだ。」
ということでやって参りました3分クッキング!
まぁ項目を一つ追加するだけだから1分クッキングだけどね。
追加するのは相手の声色で対象を絞り込むもの。
今回は、受け取りたくない声色を選んでそれを除外する方向にした。
除外する声色はまとめると「喜び」を感じ取れる声色。
これで再トライをする!
名前は・・・「リスヘル改」とした
そして僕はまた、耳を澄ませる・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
どれだけ時間が経っただろうか・・・多分5分くらいだろう・・・声は聞こえない。
そりゃそうだ、そんな今nowで襲われている人なんてそうそういないだろう・・・
僕のこの懸賞金荒稼ぎ作戦も失敗に終わる運命だったのかもしれない・・・
もう夜も遅い、後仮面の下が痒い・・・
諦めよう。やはり正当な方法で稼ぐのが一番・・・
「タス・・・ケテ・・・」
僕は耳を疑った。
しかし、確かに、か細く、今にも消えてしまいそうで、叶わぬ希望を言葉として吐き出したような、そんな、嬉々とした感情など一切ない声が。
僕の耳に確かに届いた。
逃す手はない!!
ぶっちゃけ、誰かを救うなんて、そんなヒーローみたいな目的ではない!
僕のお金のために!
ついでに目覚めのいい朝にするために!!
僕は声の元に向かう。




