1章5話〜乙女ゲームでも厨二病〜
助けを呼ぶ声が聞こえた。
それだけで向かう理由には充分だった。
声の向こうに懸賞金があると信じて。
その先に金があると信じて。
光よりも早く僕は、テレポートをした。
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(着1分前)
(どこぞの地下室)
「へへへっ!テメェを殺すのは禁止されてるが・・・痛めつけるくれぇなら上も許してくれるよなぁ!!」
いかにも賊のようなガタイの良い男が1人。
圧倒的な悪人顔・・・
しかし顔にも露出した肌にも傷一つ見受けられない。
「ッ・・・!!体さへ、体さへ動けば!!あなたなんて!!!」
貴族の娘!!!って感じの子が1人。
紅く染まった瞳でどこか泣き出しそうな瞳で賊を睨みつける。赤い髪は埃を被り、衣服もどことなく汚れているように見受けられる
「へっ、痺れ薬も作戦のうちってなぁ!!
今度からは警戒しとくんだな、お嬢さん。」
「次なんて・・・ない癖に・・・」
消えそうな声でそう呟く。彼女には、今絶望しかない。
「護衛の方々は・・・無事なのですか」
賊がニヤリと笑い答える
「いい声で鳴いて逝っちまったよぉ」
「そう・・・」
予想していたことだ。そんな反応の裏で、彼女は拳を握りしめる。それが悔しさからの行動なのか、泣き出しそうだったからした行動なのか彼女自身にも分からない。
「おいおい、面白くねぇなぁ・・・ま、いいかぁ、無口お嬢様を鳴かせられるなんて・・・かー!!!興奮してきちまったなぁ!!」
「外道め・・・」
悔しそうに彼女は呟く
「ほら、どこからがいい、腕か、足か、腹か、胸か、」
賊は徐々に彼女に近づいていく。
そんな賊に対して彼女は完全に諦めていた。
これから起こる未来に絶望し、抗うことすらできず。
ただひたすら、運命を呪った。
「たす・・・けて・・・」
無意識だった自分では誰に対して言ったのかすら分からない。しかし、無意識に出ていた言葉だった。
彼女の頬を大粒の涙が撫でる。
その一雫が落ちたと共に・・・
「その言葉、確かに届いたぞ」
紫色の炎と共に、仮面の紳士が現れた。
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「な、なんだテメェ!!!」
(賊の仲間じゃ・・・ない?)
「私は、懸賞金ハンt・・・」
とりあえず懸賞金のひとだ!!2000万の!!ラッキー!!日頃の行いがいいからだね!うん!
しかし、ダサいな、懸賞金ハンターはダサい。
というか名前を決めてなかったじゃないか・・・
盲点だった。とりあえず名前を決めよう!
「あぁ?聞こえねぇよ!」
「まぁ落ち着きたまえ、懸賞金君。そうだな・・・ アルセーヌ、ジョーカー・・・スペード・・・ジャック・・・」
「な、なんだ、なんかの詠唱か!?」
私を攫った人が戸惑っている。
仮面の彼、不思議な人というのが第一印象だった・・・
まるで考えが分からない・・・
けれど、私にとってはそれが一筋の光。
すがるほか無かった。
「そうだな・・・帽子屋とでも名乗っておこうか」
「帽子屋だぁ?まぁいい、ピンチにいきなり現れて、まるでヒーローみたいだなぁ!!しかしだ・・・ちと調子に乗りすぎたようだな。」
彼の手口・・・まずい!!
私は帽子屋と名乗った紳士様に急いで伝える。
「紳士様!!痺れ薬です!!彼は、痺れ薬を撒いてます!!」
そんな私の言葉に彼は
「安心しろ」と言わんばかりに微笑みかけてくれた。
「痺れ薬。こんな密室で撒けば自分も効果を受けるであろう?・・・魔道具だな」
自信に満ちた表情で帽子屋さんは問いかける。
「へっ正解だ。だがよぉ!テメェ、随分吸い込んじまったみてぇだなぁ!」
「なに、警戒くらいしていたさ。しかし、俺に状態異常は効かん。」
「あぁ?んなわけねぇだろ」
特異体質というものであろうか?
しかしそんな話聞いたことがない。
状態異常が効かない人間。
私も彼も完全に信じていなかった。
強がりくらいにしかとらえていなかった、彼の自信溢れる態度になんの根拠もないがそれが「事実」であると無理矢理納得させられるような気がした。
「なんなら試してみるといい、毒でもウィルスでも撒いてみろ」
私が死ぬからやめてほしいと思った。
(なんらかのトリックか?まぁいい、玄人なら状態異常対策くらいしてるか・・・種がどうあれ、想定内のこと・・・)
「ならよぉ・・・こんなのはどうだ!」
「魔法か・・・常々思うのだが、なぜ溜めの長い詠唱をしてまで使うのか疑問だな。」
「赤く燃え上がる炎は存在をそこに示す。力を借りること、我と共に歩むこと」
これは、中級魔法の詠唱!?
相殺か、逃亡か、帽子屋さん・・・
「・・・」
微動だにしていない!?
「お逃げください仮面の紳士様!!」
私はどうなってもいい。けれど、まだ動ける帽子屋さんは逃げるべきだ!
(もう遅いなぁ!仮面もろとも灰になっちえ!おっと、女は殺さないようにしねぇとな。)
「焦らないことだお嬢さん。こうすれば解決だ」
帽子屋さんは優雅に歩いて賊に近づき、思いっきり股間を蹴り上げた!?
「ぎょえぇっ!?」
声にならない声で男が悶え苦しむ。
それよりもだ、なぜ。なぜ彼は魔法の詠唱中に近づけるのだろうか!?
魔法の詠唱中は原理は解明されてないが、魔法の障壁が術者を守る。故に近づかないはずなのだ。
「しょ、障壁を破ったのですか!?」
私は咄嗟に聞いてしまう。
「ん?なんだそれは」
「え、えぇっと魔法の詠唱中に術者を守るたまに発生する障壁なんですけれど・・・」
「え?」
「え?」
「ちっく、しょぉ・・・障壁封じの魔道具でも持ってやがったのか・・・」
「僕の知らない情報、古代さんに確認してみるか。」
「何を・・・わけの・・・わからん・・・ことをぉ!」
「あぁすまん、独り言だ。続けて」
「チッ、舐めやがって!!だがなぁ!大口を叩けんのもそれが最後だ!」
「叩いてない。」
「どうでもいいぜそんなことぉ!!へっ」
そう笑うと、賊は液体の入った瓶を取り出し高々と掲げて見せる。
「これな〜んだ」
あれは、素早さが上がるポーション・・・
「ほう、ゲーム内のアイテムまであるのか。」
「何言ってんだ、テメェ」
「しかし上昇幅は、たかが知れている。他にも何か隠してるだろ?」
「随分余裕そうだなぁ?だが、大体当たりだ。
この状態異常無効の魔道具。実はメインの効果はそれじゃあねぇ。本当の効果は・・・ポーションやらの効果を何十倍にもするって代物だぁ!」
耳を疑った。魔道具の域を大幅に超えている。
ポーションを飲むと一般人なら2倍近くそれに応じた技能が上がる。それが何十倍!?
これじゃあ、帽子屋さんでも・・・
次に私は目を疑った。帽子屋さんが・・・ニヤニヤとしている。まるで宝物を見つけたように。
(欲しい!欲しい!欲しい!あの魔道具!欲しい!!)
「力のポーション!素早さのポーション!そして、防御のポーション!! それだけじゃねぇ!力の札!素早さの札!その他もろもろ!! これでテメェはぁ!! 終わりだァぁ!」
賊はそう言うとポーションを一気に飲み干してお札をかざした。札は黄金の光となり賊に降りかかり。それと同時に賊の雰囲気が変わる。
それは賊の全機能が上がったことに他ならない。
帽子屋さんら相変わらずニヤニヤしている。
私はただ、この戦いの行く末を見届けるしか無かった。
「一撃で終わらせてやるよ!!」
賊は帽子屋さんの方に向いたかと思えば。目にも止まらぬ速さで襲いかかった。
あまりの衝撃に目をつむってしまった・・・
そして徐々に目を開く。私はてっきりそこに仮面の男がみるも無惨に負けてる姿があるものかと思った。
しかし・・・
「は、反応しやがった!?」
帽子屋さんはどこから取り出したのかもわからない剣で攻撃を止めていた。
「そのスピードに適応できているのを見ると、中々に修行を積んだと見える。それだけに残念だ。悪の道に堕ちなければ、それなりの騎士になれたかもな。」
「ほざけぇええ!!!」
砂埃やなんやらで私からは良く見えないが、帽子屋さんはあの攻撃に対応しているように見える。
化け物だ・・・
「がむしゃらに見えるが確実に急所を狙ってきている。やはりプロか。」
(しかし、この動きはまるで、動くことのない的を壊すような・・・ ここまでのスピード、渡り合えるやつは人間には少ないだろう・・・つまり、対人は素人・・・
このようなタイプの敵には、極限の状態で隙を作ってやれば・・・)
(隙!!)
「取ったぁぁぁぁぁぁあ」
「簡単に誘い込める。」
戦闘音が止まった何が起こったのだろう煙でよく見えない・・・徐々に煙が晴れていく。一方がうずくまってもう一方がそれを見下ろしている。
「足癖が悪くてすまないな。」
「ッチ・・・くしょ・・・ぶっ殺して・・・」
どうやら帽子屋さんが勝ったようだ。
信じられない。開いた口が塞がらない。埃やら何やらが口の中に入ってくるがそれでも口は塞がらない。
「生かして持ってった方が賞金が高いらしいからな。」
帽子屋さんは紫色の光で覆われた、鎌のような物を作り出した。
どこから取り出したのか、疑問が頭の中に浮かぶが、それ以前に疑問が多すぎて私の頭はすでに考えるのをやめていた・・・
「ど、どうする気だぁ」
「なに、命までは取らん。しかし罪は償ってもらうぞ!・・・せいっ!!!」
「ま、待て!話しを!!ぐわぁぁぁぁあ!」
帽子屋さんは無慈悲に賊を切り裂く
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(???)
「い、痛くねぇ、俺は切り裂かれたはずじゃあ・・・」
俺は帽子屋とかいう仮面野郎とやり合ってたはずだが・・・なんだぁ、こりゃ。辺り一面金色の水で埋め尽くされてる・・・そして俺はその湖だかの真ん中にボロい木製の船一つの上に座ってる・・・
そして目の前には、みたこともねぇような高そうな服を着た女が1人船を漕いでやがる・・・
「おいテメェ!ここはどこだ?」
女は不思議そうに振り向いた。
「どこって、三途の川ですよ?」
「あぁ?んだそりゃ、とにかく俺を元の場所に帰しやがれ!!」
「も、元の場所と言われましても・・・私あなたがどこから来たのかなんて分からなくて・・・」
「んなわけねぇだろ!!とにかく俺を下ろし・・・」
「おひさ〜三途ちゃん」
聞き慣れた声。俺の魂にまでも刻み込まれたその声・・・聞きただけで苛立ちが収まんねぇ声・・・テメェか・・・
「帽子屋ぁぁぁあ!」
俺は帽子屋に向かって拳を振るう。
しかしその拳は・・・帽子屋の体を通り抜けた。
「はっ?」
「帽子屋さん!私の名前は三途じゃないです!!」
「じゃあ、あだ名にしよう!」
何・・・普通に話してんだ・・・通り抜けたんだぞ、お前の体を・・・
「不思議そうだな」
「て、テメェ!俺に何をしやがった!!」
「君が知る必要もない。」
「クソが!!!」
俺は帽子屋を殴る。しかし、その拳はことごとくすり抜けていく。
「クソガ!クソガ!クソガ!クソガ!」
「それじゃあ三途ちゃん、また来るよ〜」
「あ〜!また三途って呼んだ!!!私の本当の名前は!!」
「分かってるよ〜じゃあまたね」
帽子屋、帰り道もねぇのにど、どうやって。
だが、本当に行ってしまうような気がした。
そして俺は咄嗟に問う
「おい、俺は!これからどうなるんだ!!」
帽子屋は突き刺すような冷たい視線でこちらを見る。
「いずれ分かるだろうさ。」
「こ、答えになってねぇぞ!帽子屋ぁぁぁあ!」
帽子屋は紫色の炎に包まれて俺の前から姿を消した。考えたくはないが、あれが一筋の希望だったのかもしれない・・・
そんなことを考え、俺がふと、目を瞑り、開く。
「汝の罪は、ここで裁く。」
混乱した、先まで湖のような場所にいたのに。なんだここは!!三途とかいう女もいねぇ!!
目の前には障子のようなものの影に映るデカい巨体のみ。なんだ、いったい何が始まるのか。
今あるのは恐怖のみ。
「決まりだな・・・」
何が決まったのだろうか、俺は固唾を飲んで行く末を見守るしかない。
「汝、1万2000年罪を償ってくるがよい」
「は?な、何を言って」
「これにて、閉廷」
「おい!まだ話は!!!」
ザシュッと、何かを切り裂く音が聞こえる。
何が切り裂かれたのか、理解するまでに3秒。
「腕!腕がぁぁぁぁぁぁ!!!」
あるはずのものがそこに無かった。
とんでもない痛み。うずくまり、傷口を抑える。
「がぁぁあ、あぁぁあ、」
よだれと鼻水で顔がぐしゃぐしゃになる。
嫌だ、こんなの嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!
「嫌だァァァァぁぁぁぁぁぁあ!!!」
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(地下室)
成功だ!!睡眠状態にした上に僕の思い描いた夢を見せる!名付けて「ドリーム Scythe」!!起きるタイミングの設定も出来たし、これは使えるぞ〜
「あ、あの、あなたは、いったい・・・」
帽子屋なんか名乗っちゃったけどどうしよ。もう少し設定練ってくればよかった〜
帽子屋と言えば、アリス?だよな〜
「そ、その、本当にありがとうございます!!あなたは命の恩人です!!。お、お怪我はありませんか。」
「え、あ、あぁ、案ずるな」
「よ、よかったです。そ、それであなたは何者なんでしょうか」
う、う〜ん・・・そうだな〜即興で誤魔化そう。
「アリス教団幹部第二席。帽子屋、またの名をマッドハッター。」
「アリス・・・教団・・・」
「夜が明けたらここを出て家に戻ってください。幸い、この辺りはモンスターも出ません。帰り道にはお気をつけて、お嬢さん」
ふぅ、決まった〜今後この設定を使って賞金稼ぎしよ~っと。
「それでは・・・また会いましょう。お嬢さん。」
僕は賞金(男)とくすねた魔道具を持って帰ろうとする。
「ま、待って!!あなたの本当の名前を!!!」
「職業柄、そう簡単には明かせません。しかし、またお会い出来たら、その時にでも・・・なんてね」
ま、もし同じ学校に知り合いとかいたらめんどくさいしね〜
「で、でしたら!私の名前だけでも!私は!!サンドリア•ミクルディと申しま・・・」
「はっ!?」
僕は仮面越しに目をかっぴらいて逃げるようにテレポートをした。
「す・・・ 行って、しまわれました」
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「はぁ・・・はぁ・・・」
「リンさん!遅いですって・・・えぇ!?だ、誰ですかそのお方!?」
「と、とも・・・だち・・・」
「な、なん、というか、いきなり現れて!!」
「ゆ・・・ゆめだ・・・もう寝ろ」
「こ、これは夢・・・」
フリースさんは、自分のほっぺをつねってみる。
「いたっ!!やっぱり夢じゃな・・・」
「ドリーム Scythe!!!!」
「むにゃむにゃ・・・いちごパフェぇ〜」
よし、落ち着け、状況を整理しよう。
あのお嬢さん。確かに、「サンドリア•ミクルディ」と名乗った・・・
り、リンちゃん秘蔵ノートストーリー編19ページによれば・・・
サブキャラクター。サンドリア•ミクルディ
セリウス•ハートの元婚約者。
賊に無惨に殺された彼女。
彼女を深く愛していたセリウスは深く落ちこみ絶望のどん底に堕ちるが、
アイリスさんと交流を深め、彼女の死と決別し、アイリスと共に歩むことを決める。
で、それを?僕は助けてしまったと・・・
やっちまったよな〜これ、ヤバいかな?ヤバいよな〜。・・・まぁ、リンちゃん知〜らない
お金も手に入ってラッキーってことでいいよね〜
彼のこの判断は、吉と出るか凶と出るか。
しかし彼は今後も我が道を行くだけなのであった。




