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もと女神は冒険者はじめます!  作者: さわやかシムラ
◇◇ 第二章 ◇◇
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第35話 岩蛇を断ち切る剣

 山岳地帯で三体の岩蛇に相対したわたしたちは、アクセルたちで一体、わたしとオーキィで一体、そしてフィンが囮となって一体を引き付ける。という形で対応していた。



「よし、グロウ、ウィンディ。行くぞ!」


 先陣を駆けるアクセル。グロウが剣を抜きつつその後ろに続く。ウィンディは短杖(ロッド)を握りしめ、いつでも魔法の詠唱に入れるように神経を研ぎ澄ます。


 ガンガンと金属鎧が擦れる激しい音をたてながら、長剣を手にアクセルが岩蛇に迫り寄る。その金属音に反応し、岩蛇は頭をもたげてアクセルを見下ろした。


「見知らぬ魔物よ! 俺はアクセル! その身にこの名を刻むがいいさ!」


 切っ先を岩蛇の顔に向ける。そこへアクセルは短い詠唱で魔法を成立させる。


閃光(シャイニング)!!」


 剣の切っ先から弾ける白い閃光が岩蛇の視界を奪い取った。

 岩蛇は雷の轟きのような低い音で苦悶の声をあげ、頭を大きく仰け反らせた。


「よっしゃ! 今だな!」


 グロウは岩蛇の身体に馬乗りになるように飛び乗ると岩のような鱗の継ぎ目へ、体重を乗せて深く剣を刺す。

 ギィヤァァ!!!と轟音を発しながら岩蛇は身体を大きくしならせて暴れる。グロウは身体から放り出されたが、軽業師のように身体をくるりと回転させ、足先から地面に着地した。


「あぶねぇあぶねぇ」


 言葉とは裏腹に、グロウは笑みを浮かべたまま軽く額を拭った。

 そして岩蛇の側面からアクセルが両手で握った長剣を力任せに叩きつける。

 ゴリゴリゴリ! っと岩のような外皮を削るも、本体にダメージは与えてなさそうだ。


「くっ、やはり固いな!」


 そうして一歩後ろへ跳躍する。岩蛇の視界がアクセルをとらえ、大きく口を開けて躍りかかろうとしたそのき——「地槍召喚(ストーンランス)!」

 岩蛇の頭がアクセルに迫る直前で、地面の下から一瞬で生えた鋭利な岩の槍が、岩蛇の顎を強烈に叩き、岩蛇の頭は大きく後ろに仰け反る。


「ナイスだ、ウィンディ!」


 態勢を立て直したアクセルは、長剣を身体の前に突き出し突進をする。その勢いをもって岩蛇の外皮へ真横から剣を叩き込んだ。金属音が大地に反響し、岩蛇の甲殻が裂け飛ぶと柔らかそうな体表を露出させた。

 さらに追撃を入れようと剣を振りかぶるアクセルだが、岩蛇はずるりと後方に下がって距離をとった。

 そして地面を這う尻尾を高速で動かすと、転がっている石を礫としてアクセルたちに向けて大量に射出する。礫が雨のように降り注ぎ、岩場に衝撃音が響く。


 アクセルは金属の小手で頭を守りながら攻撃をしのぐが、グロウは革鎧の為小さな動きで極力避けることに専念。だが全てを避けきることは難しく、頬や腕に裂傷を負った。皮膚が裂け、赤い体液が滲み出す。


「ちっ!」


 舌打ちと共に親指で鼻を弾くと、前方に駆けだそうとするが、その前にウィンディがグロウに近寄り傷口に手を掲げる。


「浅い傷、すぐ済むから! 命育む大地の加護よ、彼の者を癒せ! 治癒(ヒーリング)!」


 たちどころに裂傷がふさがっていく。グロウは傷が無くなった腕を確認すると、肩を回して腕を大きく振る。


「サンキュー!」


 そして再び岩蛇へと駆け出していく。ウィンディはその背中を見送りながら、後頭部に束ねた栗色の髪に一度だけ手櫛を入れると「私の出来ること、やらないとね」と呟き、短杖(ロッド)をしっかり握り直した。


「うおおおおおおお!」


 長剣を掲げたアクセルが雄たけびをあげながら再び岩蛇に突進し、少し遅れてその後をグロウが追走する。


「その甲殻、砕ききってやる!」


 岩蛇は突進を避けようと、アクセルから離れるようにずるりと身体を動かす――が、


「裂けよ大地! 彼の敵を呑み込め! 大地呑喰(ガルプダウン)!」


 ウィンディの詠唱が周囲に響く。

 岩蛇の足元に突如亀裂が走り、その身体の半分を大地に沈めた。そして裂け目は顎のように岩蛇の身体にがっちりと食らいつく。その締め付けに岩蛇は頭をのけぞらせ苦悶の叫び声をあげる。


「よくやったウィンディ! あとは任せろ! 輝く刀身(サンライトブレード)!!」


 アクセルの魔法に応え、刀身全てが白色に輝く。切れ味や耐久力を増す単純強化魔法だが、岩の甲殻を砕くにはもってこいだった。

 突進の勢いと体重を乗せたその重い一撃を喉元の岩甲殻に叩きつける。衝撃で飛び散る破片が頬を切り裂いても気にせずそのまま振り下ろした。


「グロウ!」


「あいよ! わかってるぜ!」


 アクセルの陰から跳躍して軽やかに踊り出たグロウが、ぐるりと身体をスピンさせて横に一閃——岩蛇に背を向ける形で着地する。弧を描いた長剣の軌跡は、体表がむき出しになった喉元を鋭く深く切り裂いて、岩蛇は断末魔をあげることなく光の粒子となり消え去った。

 ゴトリと音を立てて足元に転がった銀色の魔核を、グロウはそっと拾い上げる。

 ぐるりと周囲を確認してみれば、ティエナとオーキィが一体を仕留めてフィンの元へ駆けていくところだった。


「二人とも、次へ行くぞ!」


 そう言いながら既に駆け出しているアクセル。

 グロウはちらりと後ろを振り返り、追いついてきたウィンディに顎でアクセルを示すと、肩をすくめてみせた。


「元気だねぇ、うちのリーダーは」


 皮肉げに片眉を上げて笑うが、その表情はじつに楽しそうだった。ウィンディも微笑みを浮かべて頷く。

 残されたあと一体を目指して、二人も駆け出していく。

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