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もと女神は冒険者はじめます!  作者: さわやかシムラ
◇◇ 第二章 ◇◇
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第33話 竜討伐への決意

 ルーミナの冒険者ギルド内の客室に場所を変えて、話を続けることになった。

 ここにいるのは、わたしとフィン、オーキィ、アクセル。

 グロウとウィンディは「何か決まってから共有してくれたらいい」と言い残し、それぞれ宿屋に戻っていった。

 そして、ギルド職員のドミニクさんに加え、細身でメガネをかけた男性が現れる。背筋を伸ばし、書類を脇に抱えた姿は、いかにも実務に精通した参謀といった雰囲気だった。


「ルーミナのギルドマスター、マルチェロ・フィオレンティです。よろしくお願いします」


 声は落ち着いており、無駄がない。威圧感はなくとも、一言で場を引き締める力があった。

 わたしはアクセルと共に、帝国の依頼を受けて討伐に出ていた経緯をかいつまんで説明する。


 マルチェロさんが机に置いた書類の束に手を置き、軽く二度叩いた。


「ええ、依頼を受けていた各冒険者たちからの報告も確認しております。『竜のような魔物が現れたかと思えば意識を失い、次に目を開けたときにはすべてが終わっていた』とね」


 ドミニクさんが目を見開き、感心したように頷く。


「本当にティエナ殿がその討伐を果たしたと? それであればシルヴィオ騎士団長の伝説に比肩する活躍ですな」


 出来る限り神の力は隠しつつ納得してもらわないと、だよねぇ? 倒したことは事実だからそこは捻じ曲げないようにしないと。


「苦労はしましたが、何とか討伐できました! じいちゃん――リヴァード直伝の技があるのと、水魔法は得意なので……自分でも結構強いと思います! それと、シルマークさんにも色々教えてもらいました!」


 ……うん、嘘は言ってない。シルマークさんからは地図もらったのと、道聞いただけだけど!


 マルチェロさんが腕を組み直し、感心したように頷いた。


「なるほど、伝説の技と魔法を兼ね備えた『ハイブリッド』ということですか。……正直、ぜひうちのギルドで囲いたいぐらいです」


 ソファーに浅く腰を掛け、背もたれに身体を預けていたフィンが、腕をほどき口を開いた。


「それで――実際どれくらいの規模で魔物が現れてるんだ?」


 マルチェロさんは書類を指先で整えながら答える。


「正直に申し上げれば、全く手が足りていない状況です。帝国南方の亜人国家からも救援要請が出ていますが、帝国軍は首都の防衛に戦力を残しつつ、国境付近では自国内の魔物掃討に追われている。

 結果として、ルーミナ周辺や首都北部は冒険者たちの奮闘で、どうにか持ちこたえている――それが現状です」


 フィンが気だるそうにため息をついた。


「質より量で、塵狼(ダストウルフ)とかをその辺の石ころで量産されると面倒だな」


 オーキィは背筋を伸ばし、ソファーに深く腰を掛けている。いつものくだけた雰囲気はなく、水の信徒らしい整った姿勢だった。


「魔石、魔鉄、魔銀……強さの違う敵が混ざって出てこられると、戦闘のリズムが狂っちゃいそうね」


「なんにせよ、人為的にばら撒いている奴がいるってことだろ? そいつを捕まえるしかないってことだ」アクセルが拳を握る。


 マルチェロさんは深く息を吐き、机上の書類を指で軽く叩いた。


「今、特に問題となっているのは、ルーミナから北東へ抜けた山岳地帯に新たに発生した異常です。原因は『穿地竜バジルグラーヴ』と呼ばれる巨大な竜。地を穿ち潜航し、地上に突如現れては村や補給路を破壊しているのです」


 わたしは身を乗り出した。

「危険そうなのに、どうして放置されてるの?」


「資源も少ない村のため後回しにされています。帝国軍もギルドの冒険者も既に手一杯でしてね」マルチェロさんは苦い顔をした。


「本来はフィン殿に助言をお願いし、対抗策を講じていただこうと思っていました。しかし実際に討伐に赴ける戦力は別に必要です。そこで——」


 彼は真剣な眼差しでこちらを見つめる。


「ティエナ殿、どうかこの竜の討伐を引き受けてもらえませんか」


 だいたいの事情は呑み込めた。わたしの事情はノクを取り戻すことだけど、これはエンドレイク教団のアジトがわからないことにははじまらない。

 頼みの綱はシルヴィオさんに頼んでいる教団の女から引き出す情報だけど、これだってすぐに来るとは限らない。

 その間にも困っている人が大勢いる——だったら、わたしも出来る範囲でなんとかしないと。


 でも、胸の奥がきゅっと縮む。今回も本当に、わたしに討伐ができるのかな?

 相手は竜。地を割り、村や人を丸ごと飲み込むような存在。

 頭では「やらなきゃ」と分かっているのに、心はどうしても怯んでしまう。


 ……けれど、逃げるわけにはいかない。

 わたしはじいちゃんの家族であり、その技を受け継ぐ者。リヴァードの名に恥じないようにありたい。

 そして、イグネアが残していった「隣に立てる強さが欲しい」という想い――応えられるように強くなりたい。

 仲間と過ごして得た時間が、今のわたしを支えてくれる。


「……わかりました」


 わたしは静かにうなずいた。

 少し強張っていたわたしに、オーキィが静かに微笑み、肩にそっと手を置いてくれる。


「大丈夫よ、ティエナちゃん。私たちも一緒だから」


 フィンも肩をすくめ、口の端を上げた。

「オレのことは戦力カウントするなよ?」


 アクセルが力強く頷く。

「俺たちでやろう。竜の一匹や二匹、倒してみせるさ!」


 そっか、今回はフィンとオーキィも一緒なんだ。

 アクセルたちも加わって、新旧の仲間が揃って挑む作戦になる。

 皆が一緒に来てくれる――それは何よりも心強いことだった。


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