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もと女神は冒険者はじめます!  作者: さわやかシムラ
◇◇ 第二章 ◇◇
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第18話 水に抱かれし「噴水都市ルーミナ」

 丁寧に整備された石畳の街道を行く。


 目指すは「噴水都市ルーミナ」。


 道中は雪がちらつくことも無く、トラブルなしの非常に安全な道のりだ。

 魔獣や野盗に出くわすことも無かったし、これはおそらく帝国兵が定期巡回などもしているのだろう。


 ルーミナに近づくにつれて街道ですれ違う人や、同じく街を目指す人も増えてきた。それだけでもルーミナが繫栄している都市であろうことがうかがい知れる。


 そしてさらに進むと大きな城壁が視界に映る。

 冬の光を柔らかく反射するその城壁は、遠くから見るとまるで雪の城のように思えたが、歩みを進めて都市に近づいてくると、

 均一に切り揃えられた白がかった石が丁寧に積み上げられて作られているのがわかる。


 二重城塞都市の異名を持つエルデンバルと比べても遜色がないくらい立派な城壁だった。


 城門から伸びる大きな街道の両側には水路が広がっており、都市内部から排出される水が水路を伝わり川や湖に流れゆくようだ。

 水のせせらぎが耳にも心地よい。


 そして城門前には荷馬車や旅人たちで混雑しており、ちょっとした行列になっている。


 うへー、これに並ぶのかぁ。


 とちょっと気分が下がる思いだったけど、チェックをする兵士の数も多いらしくスムーズに列が進んでいく。


 そして城門に近づくにつれて、水の流れる音も大きくなっていく。


 城門の前では帝国兵が数名、行列をさばいていた。

 槍を携えた兵士が一歩前に出て、わたしに視線を向ける。


「止まれ。――何の用でルーミナへ?」


 少し緊張しながらも、背筋を伸ばして答える。

「ミルドの冒険者ギルドで運搬依頼を受けてきました」


 兵士はわたしの差し出した依頼書にざっと目を通すと顔をあげる。


「依頼書の運搬素材を持っていないようだが?」


 厳しい視線を向けてくる。


「収納袋に入れてます」


 一部を取り出して提出しつつ、ついでにAランク冒険証も提示する。


「なるほど。その若さでAランクか。――承知した。入城を許可する」


 兵士は少し表情を緩めながら、手渡していたものを返却してくれた。


「道中は問題なかったか?」


「はい。雪もなく、安全でした」


「なら結構だ。ようこそ、噴水都市ルーミナへ」


 一連のやり取りを終えると、重厚な城門の影を抜けていく。


 ああ。


 心の奥に刺さるトゲはあるけれど、どうにも気分の高揚は抑えられそうにない。


 城門を抜けた先、奥まで広がるメインストリート、その遠く先には幾層にも重なり天を衝くように建てられた、城と見紛うような大きな噴水が激しい水音を立てている。


 街の中にも大きな水路が交差し、水路周りには商店が立ち並ぶ。人々が行きかい活気のある街並み。 水路には船着き場があり、街の中の移動にも水路を利用するようだ。

 ここは水と共に暮らし、水と共に生きる。そう設計された都市。


 胸の奥からわきあがる高鳴りを、抑えきれなかった。

 ……これが――「噴水都市ルーミナ」か!



「うわ~! いろいろ街並みも見て歩きたいけど、まずは冒険者ギルドに行って荷物を届けるところからだよね!」


 わたしはその辺りにいる戦士風の人をつかまえて、ギルドの場所を確認。


「冒険者ギルドな。歩いていくと遠回りになるから、路銀に余裕があるなら水上船を使っていくと早いよ」


 水上船! あの水路に停留してるちょっと大きな船のことだよね。

 物資や人を運ぶのに欠かせないって聞いたけど、乗るのは初めてだ。


 これは、乗ってみたい!


 教えられた通りに歩くと、水路沿いに船着き場があった。

 遠目に見ていたよりも立派な水上船が停まっており、橋を渡して直接乗り込める造りのようだ。


「わぁ……すごい!」


 胸を高鳴らせながら列に並び船に乗り込む。


 しばらくすると、船は豪快に水を切り開きながら、激しい水音を立て水路を進む。

 船縁から街並みを眺めながら、へー! とか、ほー! とか感心しているうちに、あっという間に目的の停留所についてしまった。

 もっと乗っていたいけど、冒険者ギルドに向かうのが最優先だから、ここは我慢、だね。



「で、ここがルーミナの冒険者ギルド、ね」


 さすがにダンジョン管理局と合併されていたエルデンバルの冒険者ギルドよりはサイズ感は劣るけども、

 白く美しい壁! 青い生地に金刺繍され、水の紋章があしらわれた旗! 壁面にバランスよく設置された緑が美しい観葉植物!

 外側から見て感じるこの圧倒的上質感!


「オシャレだ……!」


 思わず自分の服装を見てしまう。

 後頭部にいつもの青いリボン。じいちゃん譲りの青いコートは袖を少し折っており、男性用なのでわたしが着ると裾も足元近くまで伸びている。そして中に着ているのはいつもの白いワンピース。スカート部分の上には青い生地のオーバースカート。


 これ大丈夫だよね?

 冒険者ギルドでまさかドレスコードとかないよね?


 少し気後れしたけど、門を出入りする冒険者たちは、泥や血で汚れた装備のまま堂々としている。


 安心した。……やっぱり冒険者ギルドは冒険者ギルドなんだなぁ。


 よし! 田舎者の意識はココに置いていくぞ!

 このギルドの門をくぐれば、また新しい一歩だ! 頑張るぞ!


 わたしは頬をぺちっと叩き気合いを入れ、ギルドに一歩踏み入れた。

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