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もと女神は冒険者はじめます!  作者: さわやかシムラ
◇◇ 第二章 ◇◇
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第17話 西へ、西へ

 さて、改めて今の場所を確認してみよう。


 わたしが今いるところは、アクレディア帝国内・関所にほど近い街「ミルド」だ。


 小規模な街ながら、冒険者ギルドもあり、酒場も冒険者たちで賑わっていたからきっと何かあるよね。


 ――そう思って、ギルドに顔を出したけれど、


「竜に関する依頼などは特に見当たりませんね」


 そう上手くはいかないかぁ……。


 街道でワイバーンを目撃したなどの話はあるようだけど、噂話程度に留まり、何かの討伐依頼という状況にはなっていないようだ。

 ガッカリしているわたしを見かねてか、受付のお姉さんは思い出したように付け加える。


「ここは冒険者ギルドといっても小規模支店なので、大きな依頼をお探しでしたらより大きな街の『ルーミナ』まで足を運ばれてはどうですか?」


 ルーミナ。うん、聞いた事がない。わかんない。


 受付カウンターに乗せた両腕にがっくりと額をつく。


 あーあ、知恵袋のノク先生がいてくれたらなぁ……。

 地図とか取り出して都市の説明なんかしつつ教えてくれるのにな。


 まあそんなことを言ってても仕方ない。切り開くんだわたし。


「ルーミナ、ってどこですかね? わたしこの辺りあんまり詳しくなくて」


「そういえばノアランデ王国の冒険者ギルドからお越しになられたんでしたね。では詳しくお伝えしましょう」


 そうして受付のお姉さんは丁寧に場所を教えてくれた。


 この街よりさらに西へ、西へ。

 街道沿いに草原地帯を抜け、北へ。

 その街へ行けば、より大きな冒険者ギルドがあるという。


 そうとなれば。よし、新たな街へ出発だ!



 っと、新たな街に向かう前に。


 これはすごく悩んだけれど……わたしの現況をしたためた手紙を冒険者ギルドに預けておいた。あて先はイグネアとオーキィだ。フィンはオーキィと一緒にいるだろうからオーキィに送れば共有してくれるよね。……レオは行き先がわからないから無し。ホントにどこいったんだろう。


 ノクの事も正直にしたためる。

 心配をかけるのはわかってる。でも、隠したまま再会したら……きっと笑ってくれないよね。

 でも、心配しなくて大丈夫。きっと取り戻してみせる!――っと。


 あと、冒険者ギルドの素材運搬依頼があったので、収納袋に入る範囲でついでに引き受けておいた。

 権能使ってよければもっと運べるんだけどねぇ。ノクが怒るだろうな、と思ってそれはやめておいた。


 旅の行程は五日程度。

 積雪の状況によってはもっと日数がかかる可能性もあるらしいけど、幸いなことに荒れた天気にはなっていないのであまり心配はいらないかな?


 問題は――野宿だね。いままではノクが居てくれたから交代で寝ることが出来たけど、これからは一人旅だから、太陽があるうちの仮眠か、安全を確保してからの睡眠になる。まあそれはその場の状況で考えよう。


 そうして未知の街道へ歩を進める。



 ミルドを出たら街道を西へ。

 ノアランデ王国とは逆方向。帝国内部の奥へと進む。


 最初のうちは道と言えども土を踏み固められた程度の物で、ノアランデ王国の街道とさほど変わらない雰囲気だったけど、三日ほど進んだ辺りから石畳が整備され始め、 整然とした街道が姿を現す。


 わたしはしゃがみ込んで石畳に触れてみる。

 切り出された石――大きさまで丁寧に揃えてある。

 

「帝国って、やっぱりお堅い国なんだなぁ……」


 それはそれとしてちょっと感心してしまう。


 いくら街道が整備されていようとも、夜の冷え込みには関係ない。

 太陽が沈むと僅かな温もりも失われ、徐々に足元から冷気が増してくる。

 このまま地面に寝るのはさすがに危ない。


 幸い、街道脇に枝ぶりのいい木を見つけたので、収納袋から取り出した布を縫うように枝に渡し、簡易ハンモックを張った。


 ……じいちゃんに仕込まれた技術、こういう時ほんと役立つなぁ。


 枝葉の隙間から覗く夜空は少し心細いけど、風を避けられるだけでもだいぶ違うし、カモフラージュもできているので野盗にも狙われにくい。

 あとは低い枝に紛れてロープを這わせて、侵入者が居れば鈴がなる仕掛けを取り付けて完成だ。


 こうして街道を進む間の睡眠と休憩は問題無く確保することができた。


 まあ、欲を言えば? ふかふかのお布団に包まりたかったけどね。



 西へ西への旅路は、草原地帯を抜けると、やがて緩やかなカーブを経て北へと進路を変える。


 ノクを取り戻すための旅だけど、新しい街に着くことを考えるとどうしても胸が躍ってしまう。

 どんな街だろう? どんな人が居て、どんなお店があるのかな?


 わたしの知らない、見たことのない街がこの先に待っている。


 聞いた話なら、間もなく到着するころあいのはずだ。


 アクレディア帝国が誇る、水路が入り組む水の大都市、


 「噴水都市ルーミナ」に。

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