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もと女神は冒険者はじめます!  作者: さわやかシムラ
◇◇ 第二章 ◇◇
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第74話 陽の下を駆ける

「ま、まぶしぃぃ……!」

 真上から差し込む日光で、(まぶた)の奥がズキリと痛む。

 ランタンの光を頼りに生活していた地下遺跡から地上に出たら――、第一声はもちろん、そうなっちゃうのだ。


 (まぶた)の上を指で押さえながら、薄目をあけて周りを見渡す。

 来た時と変わりない石柱が立ち並ぶ遺跡。ところどころ土や草に埋もれた石畳もそのままだ。


「うん、来た時と同じだ……あれ?」


 そこで、ふと気づいてしまったことがある。

 ここに来た時にあって、今足りないもの。

 そう――シルヴィオさんだ。


「ああ、最悪だ」


 シルヴィオさんがいないということは。


「あれ? ひょっとしてこれ徒歩で帰らないといけない?」


 そう。わたしはシルヴィオさんの白馬に乗せてもらってここまで来たんだ。

 シルヴィオさんがいないということは馬もいないということだ。

 ええええ。本当に? 馬で一週間の距離だよ?


「あーもう、まいったね。とりあえずルーミナに帰りたいけど……」


 太陽の位置を確認して、方向を思い出す。

 遺跡の石柱群はあのままだ。なら――。


「うん。帰る方角はわかる。狩人なめんなよー」

 まあ街道にぶつかってしまえばあとは何とかなる。

 とにかく今は無理してでも足を進ませよう。



「あぁ、この壁は……白くて綺麗で、ひんやりしてて気持ち良いなぁ……」


 ルーミナの冒険者ギルドの外壁の前で、崩れ落ちるように地面へ腰を下ろすと、わたしは思わず壁に頬ずりしてしまった。

 ギルドの扉を出入りする冒険者の視線が冷たいが、昼夜ぶっ通しで走って火照った身体には、ご褒美みたいなものだ。うん、そう思っておこう。


 行きは馬に休息を与えながら行ったので一週間の道のりだったけど、この帰り道、わたしは五日で走り抜けた。

 体力はもう限界ギリギリなんだけど、ここでずっと座ってるわけにもいかないからなぁ……。

 身体は重いけど、とりあえずマルチェロさんあたりから情報仕入れなきゃ……!




「ティエナ、どこ行ってましたの!」


 ギルドに入ると、金髪の縦巻き髪を揺らしながらイグネアが素早く駆け寄ってきた。

 眉を下げ、憂いを帯びた赤い瞳が、いかに心配してくれていたかをもの語っていた。

 あぁ、申し訳ないな。


「ホントにゴメン、イグネア! いろいろあって遅くなっちゃった。そういえばシルヴィオさんは? こっちには帰ってきてない?」


「見てないですわ。一緒じゃございませんでしたの?」

「うーん……実は――」


 わたしはギルドにお願いして一室を借りた。そこで椅子に深く腰を掛けて身体を休めながら、この旅路の出来事をイグネアに伝えた。

 わたしの神の記憶のこと、力のこと。そしてシルヴィオさんが一人出ていったこと。

 イグネアは静かに聞いてくれた。長いまつ毛を震わせることもなく、ただ真っすぐに見つめて。

 わたしが一通り話をし終わると、イグネアがコホンと小さく可愛らしい咳をした。


「つまり、ティエナはまた強くなったということですの? わたくし貴方に並び立つために辛酸をなめてまいりましたのに」

「ええー? 気になるところそこなのー? 今回はわたしも辛い思いしてきたよぉ」

「まぁ、構いませんわ。わたくし、絶対に追いついてみせますもの。それより、今回の事情はわかりましたけど、それならなおさら、南方の戦闘に向かわないといけませんわね」


 アクレディア帝国とノアランデ王国が協定を結び、この件に共同で当たる——マルチェロさんがそう言っていたやつだ。

 ノクを無事に助けるためにも、わたしもその場に行かないといけない。だけど――向かう先がわからない。ざっくり南に行ってなんとかなるのかな。


「その顔、まだ心配事がおありのようでして? これで解決出来ませんこと?」


 得意げな顔でイグネアが差し出してきた用紙は、アクレディア帝国の地図だった。

 わたしの視線は一点に吸い込まれていく。

 南方の山岳地に付けられている、赤い丸印に。

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