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もと女神は冒険者はじめます!  作者: さわやかシムラ
◇◇ 第二章 ◇◇
123/155

第63話 ギルド報告会~沈黙を添えて~

おかげさまで「もと女神は冒険者はじめます!」も累計10000PVを突破しました!(2025/10/11)

日々追いかけてくださる読者の皆様には本当に感謝です!

X上でポストしたAIイラストですが、Xのアカウントをご存じでない方もおられると思いますので

せっかくなのでこちらにも掲載させていただきます!(高解像度で見たい方はXで探してください (;・∀・)

今後ともどうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m

挿絵(By みてみん)


 クリスタ湖を発って、六日が過ぎた。特にトラブルも無く、『噴水都市ルーミナ』まで帰ってこれた。


 しかし……緊急事態とはいえ、短期間に西へ東へと討伐続きじゃ、さすがに疲れもたまるよねぇ。

 あー、甘い物食べたい……でも、その前に報告だよね。


 というわけで、ケーキ屋などに後ろ髪を引かれつつも、白い壁が美しいルーミナの冒険者ギルドへ、足を向けた。


「おかえりなさいませ。ギルドマスターが部屋でお待ちです」


 顔を見るなり受付のお姉さんに、マルチェロさんの部屋へと案内される。

 先頭を行くアクセルが、黒壇の重厚な扉をゆっくりと押し開けた。

 軋む音が、静まり返った室内に小さく響く。

 扉の先には、いつも通り感情を見せない表情で、ぴしっと背筋を伸ばし書類を整理するマルチェロさんの姿があった。

 その傍らには、後頭部で長い銀髪を束ね、帝国カラーの青を基調としたマントを羽織り、どこか青白く見える金属鎧を身に(まと)った――帝国騎士シルヴィオさんの姿。



 扉の音にシルヴィオさんが振り返る。その瞳の中にわたしを認めると、軽く頷きマルチェロさんの机の前から一歩脇へと引き下がった。

 報告を先にしろということなんだろうね。相変わらず無口だなぁ。

 先に入室したアクセルが片手を胸に一礼しながら「只今戻りました」と挨拶をする。


 マルチェロさんは席を立つとわたしたちに深く頭を下げた。

「先に戻った冒険者たちから、すでにある程度の報告は受けています。今回も重責を担っていただき感謝しております。討伐、ご苦労様でした」

 マルチェロさんは、一拍置いてから、寸分の狂いもない動きで身体を起こした。そしてスーツに(しわ)が寄らないよう、生地を手のひらでそっと撫でおろす。それから椅子に腰を下ろした。

 書類の角を揃え、指先でパラパラとめくる。その中から一枚を抜き取り、机に静かに置いた。


「クリスタ湖の現状についてです。以前は『干上がった』との報告でしたが、竜討伐の後、『水位が戻った』との連絡が入っております。何かご存じの事は?」

 ぎくぅぅぅ……! わたしがこっそり水を戻した、なんて言えないからねぇ……。

 他のメンバーもわたしがやったことは知らないハズ……だから、ここは知らぬ存ぜぬで貫きとおすしかないかなぁ。

 なんて考えていたら、イグネアが一歩進み出た。

「竜が干上がらせたのでしたら、討伐によって元に戻った――それだけのことではありませんこと?」

「こちらのお嬢さんは?」

「失礼いたしましたわ。わたくし、イグネア・フレアローズと申します。 ノアランデ王国で冒険者として活動している者ですわ」

 赤いドレスアーマーの裾を指先でつまみ、流れるような所作で一礼した。

「前に言ってた、エルデンバルのダンジョンを攻略したオレの元パーティメンバーだよ」

「あぁ、噂のご令嬢冒険者でしたか。帝国領にはお越しになられないものだと思っておりましたが」

 マルチェロさんがイグネアを真っすぐに見据えてそう言った。皮肉とかではなく、イグネアの立ち位置を考えての発言なのだろう。

 シルヴィオさんの様子を横目で確認してみたけど、目を閉じて静かにしている。

 どう思ってるのかな。帝国側とすれば、ノアランデの貴族が立ち入ってるのはあまりよろしくないよねぇ。

 様子からすると、不問にしてくれそうではあるけど……。


「ご心配なさらなくとも、帝国に介入する意図はございませんの。ですが世界の脅威たる竜の討伐には微力ながらお力添えする所存ですわ」


 いままで沈黙を貫いてきたシルヴィオさんが重たい口を開く。

「問題ない」

 ……。

 終わった? 終わったの?

 ほら、周りの視線、ぜんぶシルヴィオさんに集まってるんだよ? ねぇ? みんな、まだ続きがあるのかなーって顔してるよ?

 アー駄目だ。これは終わったらしい。

「シルヴィオさんシルヴィオさん! ホントね、それは駄目。結論だけ言って満足しないで!」

 ああー、思わず突っ込んでしまったよ!


 マルチェロさんが、思わず笑いをかみ殺すように口元へ手をあて、肩を震わせていた。

「あぁ、私としたことが失礼いたしました。先ほどシルヴィオ騎士団長から話がありまして。今回のエンドレイク教団の騒動は、帝国とノアランデの双方にとって脅威になりうるものでして――そのため、両国で協定を結び、協力してこの問題にあたることになったそうです」

 横でシルヴィオさんが目を閉じたままうんうんと頷いている。

「ですので、竜討伐という名目での交流は、今のところまったく問題になりません」

「なんだぁ! そうなら、そうと先に言ってよ!」

 まだ頷いている、シルヴィオさん。

 ガンッ!

 その脇腹に肘鉄をいれてあげた。……金属鎧だもん、肘……痛い……。

 もちろんシルヴィオさんには何のダメージも通ってない。涼しい顔をしている。

 でも、いいんだ。これは「ちゃんと説明してよね!」という意味の、ただの抗議だから。……痛い。

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