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宇宙のどこかでカラスがカア ~ゆるゆる運送屋の日常~  作者: 春池カイト
『ゆきてかえりしカラスがカア』編
11/22

腹巻を巻いた猫

「やっと着いた。マルコ、お疲れ様」


 もう軌道上ステーションが見えている。

 時刻としてはぎりぎり夕刻といったところで、ちょっと遅れはしたもののドワ子とマルコは地球に到着した。


「どうするっすか?」

「まずは荷物を下ろして……そうね、マルコはどうしたい?」

「僕っすか?」

「そう、おばあちゃんのところに行くのは伯父さんたちが到着してからだから、多分明後日ぐらいになるし、その間ステーションにいるか地上に降りるか、マルコの好きな方でいいわよ」

「そんな、僕の都合なんてどうでもいいっすよ」


 ここのところドワ子はマルコに働かせすぎではないかと思っていた。

 もちろん、マルコとの関係は単なる主従ではない。

 マルコは「ご主人」と言ってくれるが、ドワ子としてはかけがえのないパートナーで対等の存在だと思っている。


 もちろん、ナマミで宇宙空間に放り出されたらドワ子は何もできない小さなドワーフ女性に過ぎない。

 その意味ではマルコに頼りっきりになるのはしょうがないことだが、だけど対等な存在として立つには彼女の方からもマルコに何かしてあげたい、マルコに頼りにされたいという気持ちもある。


 まるで子に対する母のような感情だが、そもそも幻獣に対する主人とはそのような存在なのだ。

 ドワ子はドワーフだから200年かそこらは生きる。

 だけどマルコはそのあと無限に近い時間存在し続けるのだ。


 だから、今のドワ子とマルコの関係は、幼子とそれを育てる母の関係と似通っているといっても間違いではないのだ。


 結局マルコは自分で選ぶのを最後まで拒み、軌道ステーションに着いてしまった。

 わがままもを言うことも覚えてほしいんだけどね……まあ、次の機会にしましょうか。と、ドワ子は諦めて自分から提案する。


「じゃあ、今日はステーションに泊まって、明日は午後から地上に降りましょう。温泉とかいいんじゃないかな?」

「温泉っすか……あ、今なら入れるっすね」

「そうそう、せっかく小さくなれるようになったんだから」


 これまでのマルコは直径2m余りの球体であった。

 必然、人間が足をつくことのできる温泉では体の一部分しか浸かれないし、周りも邪魔だろう。

 だから、これまでは温泉など考えもしなかったのだ。


 これは決してマルコが不潔なわけではない。

 中継ステーションにはさすがに無いが、地球軌道ステーションにもド星のドワ子の拠点にも、マルコが水浴びをできるシャワーがあり、マルコはそこでで清潔にしているのだ。


 温泉を楽しみにしているマルコを連れて、ドワ子はまず手続きを行う。


 地球軌道上ステーションは、中継ステーションとは人の流れが違う。

 ここでド星との交易をおこなうのと同時に、地上との人や物の行き来、さらに今も建設ラッシュである地球軌道上への物資の輸送など、様々な業務が行われており構造も複雑だ。


 とはいえ、メインラインでの交易はステーションの業務の大きな核であるのだから、目立つ場所にあるのは当然だ。

 ドワ子は個人輸送業者用の窓口で、到着の報告と荷物の受け渡しの手続きをする。

 この窓口にはかつてミサキが勤務しており、その時に彼女とは仲良くなったのだった。

 今頃は試験を受けているだろうが、果たして彼女はうまくやれているだろうか?


 個人事業者の荷物の受け渡しは、小さな倉庫のような場所に移動して行う。

 ベンジャミンのような例外を除けば、大概小コンテナいくつか程度の輸送量なのだからこれでいいのだ。


「いらっしゃい、先ず伝票を渡してください」


 巨大な猫を連れた係員がドワ子に応対する。


「えっと……これは?」

「ああ、代理で」

「なるほど、期限は……問題ないね。じゃあまずはこっちの伝票の荷物をお願いします」


 個人輸送業者で、荷物の代理輸送は稀にあることだ。

 そのため、係員もそのあたりの対応に慣れている。

 ドワ子はまず、自分の分の貨物をマルコに亜空間収納から出すようにいう。


「ほいっす」


 ドン、と積まれた小コンテナ1つ。


 かつて、マルコの収納量を小コンテナ2つ分とドワ子が漏らしたことがあるが、あれには解釈の余地がある。

 一般的には「小コンテナ2つに積載することができるぐらいの荷物」という意味だが、マルコの場合は『小コンテナ2つ」であり、コンテナごと収納して2つ分なのだ。

 だから、実際には中身だけでいいなら小コンテナ3つ分を超えるぐらいの量を収納できることになる。

 もっとも、コンテナごと収納する方がハンドリングがいいので、いつもドワ子はそうしている。


「じゃあ、お願い」

「ニャア~」


 巨大な猫は伸びあがると両前足でコンテナを持ち、そしてそのまま伸びていく。

 伸びていくのだ、胴が。

 かつて地上で怪物だと思われていた胴長猫が宇宙に適応した種族で、宇宙ロングキャットという。

 丸くてビームを出す宇宙生物の範疇には入らないため、個人輸送業者に使われることはないものの、こうして宇宙ステーションで倉庫の整理などで大活躍している。

 ついでに荷物の隙間に入り込んだ宇宙ネズミも狩るので、重宝されている。


 奥の扉から上半身と胴が伸びていくが、下半身はこの場に残ったままだ。

 尻尾がゆるゆると振られているから向こうでも問題が無いと分かる。

 マルコは後ろでおとなしくしている。

 やはり種族的に鳥は猫には警戒するものなのだろう。


 こうして便利な働き者の宇宙ネコだが、彼らには一つの弱点がある。

 伸びると毛の密度が薄くなるのか、どうもお腹を壊しやすいのだ。

 そんなわけで、こちらに残った下半身には腹巻が巻かれている。

 もちろん腹巻は前後に長く伸びないのでどれほど意味があるのかは不明だが、伸びているのが胸ならばこれで問題ないのかもしれない。


 そんなどうでもいいことを考えながら、ドワ子は指示された通りベイズからの預かり荷物もその場に出すよう、マルコにお願いするのだった。

 タイトル由来:


 もちろん『長靴をはいた猫』です。

 ロングキャットはネットで良く画像になっている奴ですね。



 そろそろ一度ぐらいお願いしてもいいでしょうか?


 評価とは言いませんが、ブックマーク・フォローなどよろしければお願いします。

 こんな感じであまりドラマチックな展開はありませんが、楽しんでいただければ幸いです。

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