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夕焼けの向こうに、新しい明日が

「どんなに遠回りしても、辿り着く場所は必ずある」――ついに物語も最終話。大学祭を成功させた真一と悠斗、そして彼らを支えてきた美沙。それぞれが新しい自分を見つけ、未来に向けて歩み出す姿が描かれます。過去のトラウマや誤解を乗り越えた先にある、新しい友情の形とは?これまでの彼らの旅路を振り返りながら、最後の瞬間をお楽しみください。


大学祭の終わりが近づいていた。キャンパスは祭りの喧騒が徐々に静まり、夕焼けが空を染める時間帯だった。真一は祭りの片づけを手伝いながら、ふと立ち止まった。


「終わったなぁ…」


彼の目は、どこか遠くを見つめている。大学祭の準備に追われ、忙しい日々だったが、その日々の中で何かが変わった。過去の自分とは違う、少しだけ前向きな自分を感じていた。


「どうしたんだよ、真一。感傷に浸ってる暇はないぞ」


悠斗がニヤリと笑いながらやって来る。彼もまた、今日という日を通じて変わり始めていた。かつては常に完璧を目指し、自分に厳しかった悠斗だったが、今はその肩の力が抜けている。


「お前こそ、どうしたんだ?祭りの主役みたいな顔してるけど、実は何もしてないんだろ?」


真一が冗談めかして言うと、悠斗は肩をすくめた。


「ばれたか?まあ、実際あんまり何もしてないけど…でもな、何もしないのも悪くないって、今回で学んだよ」


悠斗の言葉に、真一は驚いた顔をした。あの完璧主義の悠斗が「何もしないのも悪くない」なんて言うなんて、少し前の彼からは考えられないことだ。


「何があったんだ、お前に?」


「まあ…お前と組んで、この大学祭をやってみて、わかったんだ。全部を完璧にしようとする必要はないって。お前はお前で、自分らしくやればそれでいいんだよ」


悠斗はどこか遠くを見ながら、優しい笑みを浮かべた。その顔には、かつてのプレッシャーに押しつぶされそうな面影はなく、どこか解放されたような表情があった。


「俺もな、自分を許すことを覚えたよ。失敗しても、完璧でなくても、いいんだって」


真一はその言葉にうなずいた。彼自身も、この大学祭を通じて「自分らしく生きること」に前向きになっていた。完璧でない自分を受け入れることができれば、もっと楽になれる――それが彼の中で芽生えた新しい気づきだった。


「そうかもな。俺も少しずつだけど、変わった気がする」


そんな二人を見守っていたのは、美沙だった。彼女は少し離れたところから、二人のやり取りを微笑ましく見つめている。


「結局、あんたたち二人って、昔から似た者同士だったのよね」


美沙が近づきながら言うと、悠斗は苦笑いしながら「やめろよ」と軽く手を振った。


「まったく、お前は最後までお節介だな」


「えぇ、そうよ。だけど、今日を最後に私は卒業するつもり」


美沙の言葉に、真一と悠斗は顔を見合わせた。


「卒業?」


美沙は少し寂しげな表情を浮かべながら、でもどこか自信に満ちた口調で言った。


「二人がちゃんと自分たちで歩き始めたのを見て、私の役目も終わったかなって思ったの」


「なんだよ、それ」

真一が苦笑しながら言うと、悠斗も続けて言った。


「お前がいなくなったら、俺たちまた迷子になっちゃうかもな」


「そんなことないって。二人なら、もう大丈夫。自分たちでちゃんと道を選んで、進んで行けるはずだから」


美沙の言葉に、二人は何も言えなかったが、その顔には笑顔が浮かんでいた。


三人はキャンパスを歩きながら、夕焼けに染まる空を眺めていた。風がそよそよと吹き、秋の気配が漂う中、彼らの笑い声が静かに響く。


「結局、この大学祭もなんとか成功したな」

真一が笑いながら言うと、悠斗が少し得意げな顔をして言った。


「まあな、俺たちにかかればこんなもんだろ」


「いやいや、お前、あんまり役に立ってなかっただろ?」


「何言ってんだ、俺の陰のサポートがなかったらどうなってたか分からないぞ!」


悠斗と真一がふざけ合いながら笑う。そんな二人を見て、美沙は少しだけ安心したように微笑んだ。


「二人とも、本当に変わったわね。昔のあんたたちなら、こんな風に笑い合うなんて考えられなかった」


「それはそうかもな」

悠斗が軽くうなずく。


「でも、それがあったからこそ、今こうして笑えてるんだと思う。昔の俺たちは、なんか張り詰めてたもんな」


「うん、何かしらに追われてた感じがあったよな」

真一も同意する。


「でもさ、これからは違うよ。俺たちは俺たちなりに進んでいけばいい」


「そうだな。完璧でなくても、前に進めばいいって、今回で学んだよ」


三人はしばらくの間、何も言わずに歩いていた。夕焼けが深まり、空は橙から紫へと変わりつつあった。彼らの未来はまだ何も決まっていないが、今なら何があっても大丈夫だと感じられた。


「さて、この後どうする?」

真一がふと聞いた。


「俺は…そうだな、少し歩きながら考えるよ。これからのこと、いろいろと」


悠斗がふわりと笑いながら答える。


「じゃあ、私も付き合うわ。今度はあんたたちの力を借りる番かもしれないし」


美沙の言葉に、真一も悠斗も軽く笑い合った。


「お互い様だよ。俺たち、いつでも力を貸すさ」


三人は夕暮れのキャンパスを歩き続ける。その先には、まだ見ぬ未来が待っているが、彼らはその未来を怖れることなく、軽やかな足取りで進んでいく。


彼らの笑い声が、秋の夕焼けの中に溶けていくように響き渡った。


そして、物語は静かに幕を閉じた。新しい友情の形を見つけた彼らの未来には、きっともっとたくさんの笑いが待っていることだろう。過去の誤解を笑い飛ばしながら、彼らはこれからも前へ進んでいく。

物語はついに幕を閉じました。真一と悠斗、美沙の三人がそれぞれ自分の道を見つけ、再び交わる瞬間を描いたこのエピソード。過去に囚われず、未来を見据えて新たな一歩を踏み出す彼らの姿が、読者の皆さんにも勇気を与えられたなら幸いです。どんな困難も笑い飛ばし、共に進むことで、きっと未来は明るいものになる。そんな希望を感じさせる物語を楽しんでいただけたでしょうか?また次の物語でお会いできる日を楽しみにしています。

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