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再び交わる道

「一度途切れたものをもう一度繋ぐって、案外簡単じゃないかもしれないけど、だからこそ面白いのかも」――今回のエピソードでは、真一と悠斗が大学のプロジェクトを通じて再び手を取り合い、かつての友情を取り戻す様子が描かれます。それぞれ違う道を歩んできた二人が、再び交わることで互いの成長を感じられる瞬間。新しい友情の形が見え始める、そんな物語の始まりです。


真一は広げた資料の山を眺めながら、ため息をついた。社会問題やテクノロジーの進化に関する大学プロジェクト、しかもグループワークということだったが、予想外の展開に戸惑っていた。なんと、一緒に組むことになったのは悠斗だったのだ。


「まさか、お前とまた組むことになるとはな」


悠斗が笑いながら、隣に座る。彼の笑顔は変わらずだが、内面ではお互い、違うところに目を向けることができるようになっていた。


「ほんとにな。お前がインターンで忙しいのに、どうやって時間作ってるんだ?」

真一は苦笑しながら、資料をめくる。


悠斗は一瞬黙ったが、肩をすくめた。「まあ、慣れればなんとかなるもんさ。こっちはもう大学の課題も仕事みたいなもんだし」


そんな言葉を聞いても、かつての自分なら「またこいつは要領がいい」と皮肉を感じていただろう。けれど、今の真一は悠斗が抱えているプレッシャーも少しは理解できるようになっていた。


「で、社会問題とテクノロジーの進化ってテーマだが、どうする?」


悠斗が真剣な顔で資料を眺めながら尋ねた。真一は一瞬、彼が本当にこのテーマに興味があるのか疑問に思ったが、すぐにそれは取り越し苦労だと気づいた。


「うん、俺はテクノロジーの進化が社会に与える影響について調べてみようと思うんだ。特にAIの普及が雇用にどう影響するかとか、そういう具体的な部分」


「なるほどな。じゃあ、俺はそれに絡めて、環境問題についてのアプローチを考える。テクノロジーが自然とどう共存できるかって方向でどうだ?」


こうして、二人はそれぞれの得意分野を活かしてプロジェクトを進めることになった。


日が経つにつれて、二人は昔のような自然な協力体制を築き上げていった。ある日、プレゼンテーションの準備をしていたときのこと、悠斗がふと真一に向かって言った。


「なあ、真一。思うんだけど、俺たちが昔、あんな風に疎遠になったのって、結局はお互いをちゃんと理解してなかったからなんだよな」


真一は手に持っていた資料を置き、真剣な顔で悠斗を見た。


「そうかもな。俺もお前のことを見下してたんだと思う。なんか、俺だけが本気でやってるって勘違いしてた。けど…今思えば、そうじゃなかったんだよな」


悠斗は苦笑いしながら、うなずいた。


「俺もさ、あの頃は自分が何でもできると思ってた。周りが俺を頼ってくれるのが当たり前だと思ってた。でも、お前みたいに本気でぶつかってくるやつがいて、逆にどう対応していいか分からなかったんだ」


二人の間に一瞬、静寂が訪れた。過去のトラブルが再び二人の記憶に蘇ったが、今はそれを笑い飛ばすことができる。


「今さらだけど、謝るよ。俺が悪かった」

真一が素直に謝ると、悠斗も肩をすくめて答えた。


「俺もな。お互い様だ」


プレゼン当日、教室はざわざわとしていた。各グループが準備を整える中、真一と悠斗は最終確認をしていた。


「大丈夫か?」

悠斗が真一に尋ねる。


「完璧とは言えないけど、まぁ、なんとかなるだろう」

真一は苦笑しながら答えた。


いざ発表が始まると、二人は息の合ったコンビネーションでプレゼンを進めていった。真一がテクノロジーの進化とその社会的影響について話し始めると、悠斗が環境問題との関連性を巧みに説明し、二人の発表はスムーズに進んだ。真一が発表の途中で少し詰まりそうになると、悠斗がさりげなくフォローし、逆に悠斗が言葉に詰まると真一が補足する。その息の合ったやり取りに、クラスメートたちは感心し始めていた。


発表が終わり、教室内は拍手に包まれた。


「なぁ、俺たち、昔よりうまくやれてるかもな」

悠斗が小さな声で真一に言った。


「そうだな、まさかお前とこんな形でまた力を合わせることになるなんて、思ってもいなかったよ」

真一は照れくさそうに答えたが、その顔にはどこか満足感が漂っていた。


プロジェクトが無事に終わり、二人はキャンパス内のカフェで一息ついていた。真一はコーヒーを飲みながら、ふと思い出したように言った。


「俺たち、昔はなんであんなに張り合ってたんだろうな?」


悠斗はコーヒーカップを軽く回しながら、笑った。「多分、お互いに自分を見せるのが怖かったんだと思う。俺は特に、失敗する自分を見せたくなかったしな」


「俺もだよ。お前がすごいって思い込んでたから、自分の弱さを見せられなかった」


二人はしばらく黙っていたが、やがて悠斗が軽く笑い声を漏らした。


「まあ、結局は俺たち、似た者同士ってことかもな。お互い、完璧じゃないって気づけたのが、今回の収穫だろ」


真一も笑いながら同意した。「そうだな。でも、それでいいんだよな。完璧じゃないけど、それでも何とかなるもんだ」


悠斗が手を伸ばし、軽く真一の肩を叩いた。「その通り。これからも、失敗しても笑っていけるさ」


カフェの窓から見える夕焼けが、二人の笑顔を優しく照らしていた。過去の誤解や挫折を乗り越え、新しい友情の形を手に入れた二人は、それぞれの未来に向けて、再び歩み出す準備ができていた。


「さて、次は何をやるか?」

悠斗が楽しげに問いかける。


真一は少し考えてから、にやりと笑った。「何でもいいさ。俺たちなら、何とかなるだろ」


二人は笑いながらカフェを後にし、新たな道を歩き出した。未来への不安も、過去の失敗も、これからは一緒に笑い飛ばせる。

プロジェクトを通じて、真一と悠斗の間にまた一歩進展がありました。かつての誤解や失敗を乗り越え、お互いを理解し合えるようになった二人が、少しずつ再び友情を深めていく姿は、どこか懐かしさを感じさせつつも新鮮だったのではないでしょうか?一度失われたものが再び芽生える、その瞬間の心地よさや喜びを感じていただけたら嬉しいです。次回、彼らの新たな道がさらにどう進んでいくのか、お楽しみに!

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