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過去のトラブルを笑い飛ばす


 前回の再会から、少しずつ昔の空気を取り戻しつつある真一と悠斗。とはいえ、完全に昔のように戻るわけではなく、まだぎこちなさも残っている。今回のエピソードでは、二人が過去のトラブルに向き合い、それを笑い飛ばすことで一歩前進する姿が描かれます。


 青春時代、誰しもが通る「全力で突っ走った挫折」。その時は本気だったからこそ、後から思い返すと笑えてくるものです。過去の自分を許し、笑い飛ばせるようになることが、成長の証かもしれません。真一と悠斗が過去を笑い飛ばす様子を、あなたも一緒に体験してみませんか?


大学のカフェテリア。窓から入る光が真一と悠斗の顔を照らし、そこには一瞬の沈黙が流れていた。話題が尽き、ちょっとした居心地の悪さが漂う。二人はコーヒーを前に、微妙な間を持て余していた。そんな時、真一が口を開く。


「なあ、悠斗。文化祭のこと、覚えてるか?」


悠斗はコーヒーカップを持ち上げかけたまま、手を止めた。真一の顔を見ると、その目には少しの緊張と戸惑いが見えた。悠斗もまた、その言葉に複雑な感情を抱いたが、すぐに笑顔を作った。


「もちろん、忘れるわけないだろ。あれは俺たちの黒歴史だよな…」


「そうだよな…」真一は苦笑いを浮かべ、コーヒーを一口飲む。窓の外では、大学生たちが自由に笑い、話し、過去の重さとは無縁のように見えた。


「俺、さ。あの時、本気でやってたんだよな」


突然の告白に、悠斗は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに理解した。真一の言葉には、どこか未練と後悔が混じっている。


「分かるよ。真一はいつも、やるとなったら本気だったからな。でも、それが問題だったんじゃないか?」


悠斗は言葉を選ぶようにしながら、過去の出来事を思い返していた。文化祭での出来事は二人の間に深い溝を作り、結果的に疎遠になった大きな原因だった。


「俺さ、あの時、自分だけが頑張ってる気がしてたんだよ。クラスのみんなはやる気がなくて、俺一人が必死で突っ走ってた。でも、そのせいで、結局みんなに反発されて、俺のやってたことは全部台無しになった」


真一は自嘲気味に笑いながら、コーヒーを見つめていた。その目には、自分が抱え続けてきた苦しみが垣間見える。悠斗もまた、その時の自分の無力さを思い出していた。


「真一…あの時、俺もさ、どうしていいか分からなかったんだよ。お前が一人で突っ走ってるのを見て、止めるべきだったのか、応援するべきだったのか。でも、結局何もできなかった」


悠斗の言葉には、かつての自分への後悔がにじんでいた。あの時、真一を支えられなかった自分を責めていたのだ。


「でもさ、今思えば、あの文化祭の出し物、ものすごくダサかったよな」


突然、真一が吹き出すように笑いながら言った。悠斗は一瞬きょとんとしたが、すぐに真一の言葉の意味を理解して、吹き出した。


「お前、今さらそれ言うかよ!あの『宇宙探検隊ショー』、本気でやってたんだぞ!」


「だってさ、考えてみろよ!宇宙探検隊って、何でそんなのやろうって思ったんだろうな?しかも、俺たち全員、手作りの銀色の段ボールスーツ着てさ…」


真一は肩を震わせて笑い続ける。悠斗も笑いをこらえきれず、ついに大声で笑い始めた。カフェテリアの他の客たちが振り返るほどに、二人は大爆笑していた。


「ほんとだよな、あの時の俺たち、真剣すぎたんだよ!特にお前、舞台裏でみんなに演技指導してたよな?『もっと熱く!もっと情熱を込めて!』とか言って!」


悠斗が当時の真一の真剣な様子を思い出して真似をすると、真一はさらに笑い転げた。


「いやいや、悠斗、お前だってさ!そのくせ、宇宙船の操縦士役で出てきた時、『我々はこれから未知の領域へと飛び立つ!』とかイケイケのセリフ言ってたくせに、緊張して噛みまくってたじゃん!」


真一は涙を浮かべながら悠斗を指さす。悠斗も恥ずかしさで顔を赤くしながら、笑い続けるしかなかった。


「そうだよ!俺、めっちゃ噛んでたよな!ほんと、恥ずかしすぎる!」


二人は笑いながら、過去の自分たちの情熱と空回りを振り返った。かつては深刻だったはずの出来事が、今では笑い話になっている。その変化に気づき、真一はふと真顔に戻った。


「なあ、悠斗。あの時は、俺たち本気だったんだよな。あれがダサいって、今だから笑えるけど、あの時はあれが俺たちの全力だったんだ」


悠斗も笑いを収め、真一の言葉に頷いた。


「そうだな。本気だった。お前も、俺も。でも、俺たち全力すぎたんだよな。周りとの温度差が生まれてしまったんだろうな」


二人はしばらく黙り込んだが、その沈黙は先ほどの笑いがもたらした安堵感に満ちていた。


「でもさ、今ならもう少しうまくやれるかもな、俺たち」


悠斗が微笑みながら言うと、真一も少し照れ臭そうに笑った。


「そうかもな。でも、今さら文化祭はやらないけどな」


「そりゃそうだ!またあんなダサい宇宙探検隊なんかやってたら、今度は本当に笑われるぜ」


二人は再び軽く笑い合った。過去の出来事を笑い飛ばすことで、彼らはようやくあの時のトラブルを乗り越えたのだ。


その日の帰り道、夕暮れが二人の影を長く引き伸ばしていた。真一と悠斗は、並んで歩きながらゆっくりと会話を続けた。


「なあ、真一。あの時、お前に何もしてやれなかった俺を許してくれよ」


悠斗がぽつりと呟いた。その声には、今まで隠してきた真摯な思いが込められていた。


「許すも何も、俺もあの時、周りが見えてなかったんだよ。お互い、若かったってことだろ」


真一は軽く笑いながら答えたが、その目はまっすぐに悠斗を見つめていた。悠斗も、安心したように頷いた。


「ありがとうな、真一。こうしてまた笑って話せるなんて、あの時は想像もできなかったけどな」


「だな。でも、これからはもっといい思い出作っていこうぜ。過去ばっか見てても仕方ないしな」


悠斗はその言葉に微笑み、二人は歩調を合わせて歩き続けた。過去のトラブルを笑い飛ばすことで、二人の間に再び友情が芽生え始めていた。

第二話、いかがだったでしょうか?真一と悠斗の過去の文化祭でのトラブルが明るみに出て、二人がそれを笑い飛ばすことで、再び友情を取り戻しつつある様子が描かれました。真一がトラウマを抱えていた過去の失敗も、悠斗との再会を通して笑い話に変わり、二人の関係が少しずつほぐれていく過程が見えたのではないでしょうか。


 次回は、さらに新たなトラブルや、二人を取り巻くキャラクターたちとの絡みが描かれていきます。真一と悠斗の友情はこれからどう変わっていくのか、そして彼らの青春は再び輝きを取り戻せるのか、どうぞお楽しみに!

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