表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

再会とドタバタ劇の始まり

人は、過去の自分をどれだけ振り返るだろうか。あの頃の選択が、今の自分をどれほど変えたか。もし、あの日違う道を選んでいたなら、今の自分はどうなっていたのだろうか……。そんな問いを抱えながらも、日々の忙しさに流されてしまうのが常だ。


 この物語は、かつて親友だった二人の青年が、偶然の再会をきっかけにもう一度過去に向き合い、新たな未来へと進む姿を描いている。大学という大人と子どもの境界線に立つ彼らが、どう自分たちの関係を再構築していくのか、そして、友情とは何かを再確認する旅に出る。笑いあり、涙あり、そして少しのトラブルも。


 軽やかに流れる日常の中で、彼らは再び友情を見つけることができるのだろうか?まずは、その第一歩を共に歩んでみよう。


真一はいつものように、大学のベンチで無気力にぼーっとしていた。春の陽気に包まれて、木漏れ日がチラチラと顔に当たる。耳にはイヤホン、口にはホットドッグ。周囲を見回せば、活気あふれる学生たちが行き交っている。みんな夢や希望を抱いて毎日を過ごしているのだろう。しかし、真一にはそんなものはなかった。高校時代は学校のリーダー的存在で、文化祭の実行委員長まで務めたが、今ではすっかり無気力な大学生に成り下がっている。


「ま、こんなもんだろ」


自分にそう言い聞かせ、もう一口ホットドッグをかじろうとした瞬間、遠くから誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた。


「真一ー!」


ぎょっとして顔を上げると、見覚えのある顔がこっちに向かって駆け寄ってくる。スーツ姿に革靴、カチッとしたヘアスタイルに自信満々の表情。それは――神谷悠斗だった。


「え、悠斗?お前、なんでここに…?」


「はは、なんだよその顔。まるで幽霊でも見たみたいだな!」


悠斗は軽い調子で言いながら、真一の隣にドカッと腰を下ろした。高校時代の親友、しかし、過去の文化祭でのトラブルが原因で疎遠になっていた。二人はその時以来、一度も連絡を取っていない。それが今、こうして突然の再会。


「あれから…何年だっけ?」真一は戸惑いを隠せず、曖昧に言葉を濁す。


「もう3年だよ。大学生活楽しんでるか?」


悠斗は表向きのキラキラした笑顔で、まるで自分のことをアピールするように尋ねる。真一は、何となくその笑顔が嘘臭いことに気づいた。


「ま、楽しんでるかどうかは別として、ぼちぼちってとこだな。お前こそ、スーツなんか着ちゃって、何やってんだ?」


「おれ、今インターンやってんだよ。某大手企業でな」


「へえ…すごいじゃん」


悠斗の自慢げな口ぶりに、真一は少しばかりうんざりしながらも、一応の敬意を示してみせた。しかし、本心では、こうした「成功してる人間」に対する違和感や嫉妬が少なからずあった。


「ま、順調っちゃ順調だな。ただ、やっぱり忙しいんだよね。ほら、これから社会に出る準備ってやつ?でもお前に会えてよかったよ、真一」


悠斗はそう言いながら、少し照れ臭そうに笑う。それを見て、真一はかつての悠斗の面影を感じ、少しだけ胸が温かくなった。


「ま、そりゃよかったな。でも、急に会ったってことは、何か用でもあったのか?」


「うーん、特に用ってわけじゃないんだけど、偶然だな。ああ、そうだ!」


悠斗が急に立ち上がった。


「今、美沙に会わないか?片桐美沙、覚えてるだろ?」


「え、美沙もここにいるのか?」


「ああ、あいつもここでジャーナリズムを勉強してんだって。お前に会わせたいって言ってたし、ちょうど良い機会だろ。行こうぜ!」


悠斗に引っ張られる形で、真一はしぶしぶ立ち上がり、キャンパス内のカフェに向かうことになった。



カフェに入ると、そこにはやはり見覚えのある顔があった。片桐美沙、かつて二人の間を取り持っていた彼女だ。高校時代から何かと面倒見がよく、二人のケンカや誤解を仲裁していた存在。


「あ、真一!久しぶりじゃん!」


美沙は、満面の笑みで手を振ってくる。彼女の明るさは昔と変わらず、周囲を和ませる力を持っていた。


「お久しぶりです…」


真一は少し居心地悪そうに頭を下げる。正直、過去のトラブルがあってからは、美沙にも顔向けしづらかった。


「何よ、そんな改まっちゃって。まあまあ、座って!」


美沙に促されるまま、真一と悠斗は席に着いた。カフェのテーブルには、美沙のノートや本が散らばっている。


「それにしても、こうして二人とも大学に来てるなんて、不思議なもんね。あの時の文化祭、覚えてる?」


美沙が言うと、真一と悠斗は顔を見合わせる。二人にとっては、思い出したくない過去だ。文化祭の準備で意見が衝突し、最終的にプロジェクトが大失敗。その時のショックが原因で、二人は疎遠になってしまった。


「ああ、あの時は…まあ、色々あったよな」


悠斗が口を開く。彼も、内心ではその出来事を後悔しているようだった。


「でも、今こうして再会したんだから、仲直りしなさいよ!」


美沙は勢いよく言い放った。そのお節介ぶりは、昔から何も変わっていない。


「いや、そんな簡単に言われても…」


真一が戸惑いながら答える。しかし、美沙は全く気にせず、強引に話を進める。


「もう、男ってほんと不器用ね。これからもっと交流を深めるために、今日一緒に図書館でグループワークとかやっちゃおうよ!お互いの手伝いもできるでしょ?」


「えっ、グループワーク?おい美沙、それは…」


真一が止める間もなく、美沙は勝手に決めてしまった。



仕方なく、真一と悠斗は美沙と共に図書館でのグループワークに取り組むことになった。しかし、ここで次々とハプニングが発生する。


まず、悠斗が「自分は完璧だ」と自信満々に提案した資料作り。しかし、真一がその資料をうっかり破いてしまうという大失態。真一は焦ってテープで修復を試みるが、どう見ても元通りにはならない。


「お、おい!なんだよこれ!せっかくまとめたのに!」


悠斗が大慌てで修復を試みるが、真一の雑な修理ではどうにもならない。美沙はそれを見て、苦笑しながらも「まあまあ、二人とも落ち着いて!」と仲裁に入る。


さらに、その後カフェに戻った際、悠斗が頼んだドリンクを自分でこぼしてしまうというお約束のハプニングが発生。


「ああっ、俺のスーツが!」


悠斗は大慌てでスーツを拭き始めるが、もう手遅れ。真一は隣で「まあ、こういうこともあるよな」と笑いを堪える。


「なんだよ、笑うなって!」


悠斗が怒るが、結局美沙も真一も笑いを堪えきれず、三人は大笑いしてしまう。



この日を境に、真一と悠斗の距離は少しずつ縮まっていった。過去のトラブルはまだ完全には解決していないが、再び二人で過ごす時間が増え、かつての友情がゆっくりと蘇ってくる兆しが見えていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!第一話は、真一と悠斗の再会を中心に、二人の関係の再スタートが描かれました。彼らの間にあった過去の溝はまだ完全には埋まっていませんが、それでも少しずつ歩み寄っていく様子が伝わったのではないでしょうか。


 二人の友情を取り戻すためには、これからいくつものハプニングやトラブルが待ち受けていることでしょう。でも、それがまさに青春の醍醐味。ケンカして、笑って、そしてまた少しずつ成長していく姿を、これからも見守ってください。


 次回、二人がどんな冒険に巻き込まれるのか、どうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ