小さな宮殿の中
前の話を読んでから読むことを強く推奨します。
また少し後味が悪いかもしれないので見ても見なくても良いです。
「二つの選択肢をあげるよ」とヤオマが言った。
「選択肢......?」私が尋ねるとヤオマは答えた。
「一つは、このまま地上に戻って今まで通りの生活を送ること。もう一つは、私と一緒に海で暮らすこと」
私は考えが揺れ動いた。あの美しい海の世界にいたいという気持ちと、今まで通りのとても疲れる生活。
私は悩んだ末に、選んだ。
「私は──」
◇◇◆◆◇◇
「私はヤオマと一緒に海にいたい」私は答えた。
「......ありがとう。私と一緒にいることを選んでくれて」ヤオマはとても嬉しそうにしていた。
すると、ヤオマは私に近づいて唐突に自分の腕を噛みちぎった。
「な、何してるの!」私は唐突な出来事に混乱した。
「驚かせちゃってごめんね。君は今のままだと海では生きられないから、私の血を飲んで欲しいの」とヤオマが言った。
「ち、血を飲む......わ、わかった」私は言われた通りヤオマの腕から出る血を飲んだ。
しばらくすると、私は突然バランスを崩して転んでしまった。ふと足を見てみると、下半身が魚になっていることに気づいた。
「おそろいだね」とヤオマが無邪気に笑った。
「え、これって、どういう......」私は驚きヤオマの顔を見上げた。ヤオマの顔は恍惚とした表情だった。
「ずいぶんと久しぶりだ。人間を眷属に出来たのは」
「だから、何なの、これは!」私は声を荒げた。
「君はね、契約をしてしまったんだよ。私と一緒にいる代わりに、私の眷属になるという契約をね。私の血を飲むと魚っぽくなるけど、君は"不老"になることが出来たんだよ。だから......ずーっと、ずーっと、ずーっと、ずーっと、ずーっと、一緒にいられるね」ヤオマは無邪気に言った。
「そんな、聞いてない。嫌だ!」私はそれを拒絶してしまった。
「君はどうせ同族であるはずの人間とは相容れない存在なんだ。だから私といることを選んだんでしょ? だったら良いよね。私とずーっと一緒にいてよ」ヤオマは言った。
不気味に態度が豹変したヤオマはとても不気味だった。子供のようで、大人のようでもある奇妙な言動も違和感を感じる。でも、それは当然なのかもしれない。私の目の前にいるのは人では理解できない"神"なのだから。
「............は、はは.......」渇いた笑い声が私の口から溢れた。
私とヤオマは再び海に入った。とても心地よい。ヤオマの温かさをより近くに感じる。
「これで、良かったのかも......」奇妙なことに、私はそう思った。
これからの永い永い年月を、私は二人きりで過ごすのだろうか? 私はどんどん暗い水底に沈んでいく。太陽の光はほとんど見えなくなっていく。
海の怖い生物たちが暗い海の中を漂い、私はヤオマの手を強く握った。
そしてしばらくすると今度は明るいところに出た。そこは深海にあるというのに日の光があるように明るく、色とりどりの珊瑚でつくられた宮殿のような場所だった。
「ここが、私たちの家だよ。とっても綺麗でしょ、自慢の場所なんだ」とヤオマが言った。
「うん。そうだね......」
「長い間一人で、寂しかったんだ。だから、これからはずーっと一緒だよ」ヤオマはニコッと笑った。その笑顔は無邪気で、どこか恐ろしさを感じさせた。
でも、心の中で私はこの状況が嬉しかった。彼女の孤独を私が癒してあげたい。だから、私はずっとヤオマと一緒にいよう。例えそれが永遠だろうが──
読んでいただきありがとうございます。
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ちなみに竜神というのは蛇骨のことで、ヤオマの眷属
第一号です。