Section 2
なんだ・・・あの生き物は?
目の前に出てきた生物に驚くが、もっと気になる事がある。
が・・それよりも目の前の生物は何者?
暗くてはっきり判別できないけど四つ足の大型犬位のサイズだろうか。
目と思わしきものが何かを反射しているようで光って見える。その目は二つある。
唸り声なのか呼吸音なのか分からない低音が聞こえてくる。聞いた音はこれだ・・な。
ゆっくりと近づいてくる生物は多分敵だ。
理屈は分からないけど俺の脳内におかしな情報が入り込んできたからだ。
名前:コボルト
位階:1
状態:興奮
助言:雑魚魔物の代表。これに負けるようじゃ探索者じゃないよ!
・・・・・。
・・・・・。
理解が追いつかない。
コボルトって何?
位階?
興奮ってどんな状態なん?
助言に至っては訳が分からない。
なんでそこだけ会話調?
雑魚?探索者?
・・・訳が分からない。
死後の世界って魔物と戦わないといけないの?
分からない事ばかりなのに近づいてくる生物、否・・魔物は突っ込んできた。
うげっ!
かなり早い!
辛うじて突進を躱す。
っていうか体が動き過ぎて壁にぶつかってしまう。
痛てぇ・・。
え?
どういうこと?
俺の体がおかしいんですけど。
思ったよりも動いている気がする。
もしかしたら死後の世界は自分の理想の動きができるのか?
しかもコボルトだっけか。大きさが大型犬どころじゃないぞ。俺くらいあるかも。
また突っ込んできた。
喰らったら即死コースだぞ。
!
コボルトからカチカチと音がする。火花が出ているような・・。
瞬く間に赤く光る。
これは・・炎!
通路全体に炎が広がる。
躱せない!
ガード?
咄嗟にブレザーを被り身を縮める。
うぁっつ!
ブレザーは燃えてしまった。
皮膚も変な感じがするから火傷したかもしれない。
炎が消えた瞬間に激突される。
ある程度は備えていたけどこらえきれない。
吹っ飛ばされてしまう。
この勢いを使って距離を取らないと・・。
コボルトも立ち止まり俺の様子をうかがっているようだ。
この魔物容赦ないぞ。
問答無用で殺しにきているんじゃないか。
それに俺の知識にはない姿だ。
顔はすごく歪だけど人に近いか。牙が口から結構はみ出ているし。あの口でどうやって食べるんだ?
顔の大部分もそうだけど全身黒い毛で覆われている。
四つ足は犬みたいな感じで走るのに特化している感じか。
少なくても人間じゃない。鬼でもないだろう。
だから魔物か。
もといた部屋に逃げるべきだろう。でもそこはコボルトの向うだ。
逆方向に走って逃げる事は難しいだろう。通路の構造がわからない。
必死に走ってもコボルトのほうが足が速いだろう。あの姿で足が遅い事は期待しないほうがいい。
・・松葉杖を真剣に探しておけばよかった。
コボルト相手に有効な武器にはならないけど牽制には使えたはず。
そもそも徒手空拳で戦える相手じゃない。
トラやライオンに素手で勝てるってか。
無理だろ。
勝てる要素が全く無い。逃げる事も無理だ。
死後の世界でも魔物に襲われると死んでしまうのだろうか。
コボルトからカチカチと音がするのが聞える。
不思議な気分だ。
一度死んだのに死なない事を考えるなんて。