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空を描く

作者: さばくのかぜ

 15の歳に両親を失ってから一年。この街は人混みだらけで、早歩きをする大人ばかりだ。薄っぺらい知識と残された貯金を頼りに、リュックを背負い旅に出ようと思う。


「どうせ死ぬなら誰もいないところで静かに死にたい。」


悲しいや寂しいという感情さえ、僕は失ったのかもしれない。


 行き先も分からない長距離バスを乗り継ぎ、途方に暮れ、人がいなさそうな方へ1週間、2週間、1ヶ月と歩き続けた。尋常じゃない暑さだ。木々や草花も生い茂ることなく、地盤もサラサラの砂に変わってきた。水筒の中身も残りわずか。もしかしたら、ここはテレビでしか見たことない"砂漠"という場所なのだろうか。


 おそらく、オアシスは程遠く周りに家もない。夜は非常に寒く、日中は全てを溶かすような暑さが繰り返す。この水と、非常食用のクラッカーが無くなれば僕はそこまでだろう。それでもひたすら歩き続ける。何も欲しいものなどないのに。


足取りもかなり重い。体から流れる水分さえなくなった。


「ここで、静かにこの世を去ろう。」


人生というものは元々、生まれる前からサイコロのようなもので決まっていたのかも知れない。金持ちと貧乏のように与えられるようなものではない。死ぬ間際さえ、情けないことを考えてしまう。


 しかし、ふと目を覚ますと小さな小屋のベッドの上にいた。起きあがろうとすると、


「ダメよ。そんな体で。食事もまともに摂らないでよくこんなところに来たわね。」


同い年くらいの、気の強そうな少女が僕に言った。

その時僕は、「ありがとう。」すら言葉にできなかった。終わりを迎えてもいいと思っていたからだ。


「あなた名前は何て言うの?」


少女が尋ねた。


「ヴィダル。」


僕は応えた。彼女の目からは気の強そうな見た目の奥に哀愁を感じた。彼女は物心つく前から両親を失って、自分の名前すら分からないらしい。北に歩いて10kmのところにある、小さなマーケットで食料を買い、生活を繋いでるらしい。


 それから1週間が経ち、僕の体調も元に戻った。

小屋の扉を開けてみると、日は落ちかけ、乾いた風が流れ始めた。彼女は外で仰向けに寝転んでいる。見てないフリして、そっと扉を閉めようとすると、


「ヴィダルもこっち来なよ。」


と言われたが、


「僕はいいよ。」


と応えたが、


「いいから。来て。」


と言われ、仕方なく彼女の元へ行くと、砂漠の砂の山から夕陽が覗き、風により、砂が波を描く。僕が住んでた街では見れなかった景色だ。彼女の横顔を見ただけで、感情が少し分かるような気がした。


夜になっても彼女は寝転んだままだ。なぜか吊られて、僕も仰向けになってみた。


すると、真っ暗な夜の世界に万点の星空。これも僕の街では見られなかった景色だ。彼女は僕と同じく両親を失ったのにも関わらず、生きることに美しさを見出してる。誰かのせいにしてた僕は情けなくなり、自然と涙がこぼれ落ちてきた。乾いた風が、涙を拭く。


小屋に戻ると、彼女の机の上にシワシワの花が飾ってある。砂漠じゃ花も咲かず、誰かに貰った花を枯れても大切に持っていたのだろう。


 次の日には砂の丘に登り、彼女は歌を歌う。死に場所を求めてた自分は何をここで見つけたのだろう。僕は始めから特別な生活などしたかった訳では無いのかもしれない。宇宙を見上げる彼女の心に宇宙があるのかもしれない。そんな彼女に花の名前でもあげることができればいい。


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