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閑話.2人の兵士の末路

今日はもう1話更新します。2話目です。

皆様の反応にドキドキ〜Σ(・∀・;)!!

グロイ表現がありますのでご注意を!

 時はロゼリアが目を覚ます前日へと遡る。







 ”死境(しきょう)”にある崖を下った兵士の2人は落ちたロゼリアを探索していた。


「ううっ、今んトコ雑魚魔物しか見かけてないけどマジ怖いな…」

「煩いっ! オレだって怖いんだよっ! ……って待て隠れろっ!」

「お、おう!」


 しばらく進むとロゼリアが落ちたと思しき周辺に狼らしきものが群がり()()を喰い千切っている音が響き渡る。2人の兵士は近くの茂みに身を隠した。


 グチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャ


「お、おい、あの辺りってロゼリア様が落ちた辺りだよな?」

「ああ……」

「あそこに群がってるって『デビルウルフ』じゃねーか?!」

「しっ! 黙れって! 見つかるだろ?!」


 デビルウルフ―――

 一見黒い狼に見えるが立派な魔物の一種である。普通の狼と違う点は額には小さな角、背中には小さな蝙蝠のような羽根がついている。羽根はあるが飛べない。一匹だと対処は難しくないが集団で行動する上に、獲物を見つけると仲間を呼び更に数が増え危険度が増す。


「おいおいおい、ただでさえ厄介なのに何匹いるんだよっ?! 2人だけじゃ無理だっ!」

「あ、あ、あ、あいつらが喰ってるのって……ま、まさか……」


 辺りに飛び散る赤と小さな肉片。充満する鉄の匂い。


 ブンッ


 群がるデビルウルフの一匹が咥え放り投げたある()()が兵士のそばへ転がってきた。

 それはロゼリアの……


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「ばかやろうぅ! 大声出すから見つかったじゃねーかっ!」


「グルルルルゥ!」


 ちょうど食事を終えた彼らは新たな餌を見つけた。

「ちょうど一匹では物足りなかった」とでも言うように赤く染まった口元をペロリと舐めながら2人にジリジリと近づく。


「ああああああ……」


 1人は腰を抜かし動けそうにない。

 辛うじて動けるもう1人は腰を抜かした男の側の()()()()()()を抱えると同時に駆け出した。


「急いで戻るぞっ!」

「ま、待ってく…うわぁぁぁぁ‼」


 駆け出した男は見捨てたのだ。

 ロゼリアの死の証でもある首を抱きかかえ、自分が助かる為に同僚を餌にしたのだ。

 それと同時に腰を抜かした男の喉元にデビルウルフの牙が食い込んだ。

 哀れなる男はそのままデビルウルフの餌となった―――



 その頃、”死境”の外では―――



「ゲオルク大丈夫? はい、ポーションどうぞ」


 ウィズは額の汗を拭いながら持参していた回復薬をゲオルクへ手渡した。


「くそっ!」

「まあまあ、そんなに怒らない、怒らない。腕の怪我くらいですんで良かったじゃん。役立たずは死んじゃったけど死熊(デスベアー)は追っ払ったんだからさ〜」


 死熊(デスベアー)と戦っていたゲオルクとウィズは倒すことが出来なかったものの部下の犠牲を得て”死境”へ追い払うことに成功していた。


「まあ役立たずが最後には役に立ったよね〜」

「ああ、アイツを夢中に喰い殺してる間にウィズの魔法とオレの斬撃で何とかなったが……」

「あの熊ホント魔法耐性高すぎ! 逃げてくれて助かったけど僕カッコ悪いじゃん!」

「ははは、気にするな。ナイス援護だったぞ」

「むぅバカにしてぇ! そういうゲオルクだって斬撃ほとんど効いてなかったじゃん!」

「うっ! あ、その、あれだな、ロゼリアを始末するだけだし、賊にみせかける為にいつもの剣でなく安物を持ってきていたからであってなぁ…」

「はいはい。アイツ物理耐性も高いから仕方ないって事で」

「しかしあの2人戻らないな……」

「やっぱ無理だったんじゃない? ”死境”は超危険地帯な訳だし〜」

「仕方がない。遺体はないが全員死んでいるだろう。当初の予定とは違うが帰還したら殿下に報告を……」

「ゲ、ゲオルク!」

「うん?」

「ほ、ほらあそこ! 戻ってきたよ!」


 指差された方へ視線を向けると部下の1人が戻ってきた。

 虚ろな目をしながら血塗れな状態で。

 男はゲオルク達と視線があった瞬間、倒れこんだ。

 ゲオルク達は慌てて駆け寄った。


「おい、しっかりしろ!」

「あ、あ、あ………」

「……あ~あ~死んじゃったね。(はらわた)が喰いちぎられてるじゃん。まあここまで戻ってきただけマシかなぁ?」

「いや…こいつはよくやった。褒めてやれ。見てみろ!」


 部下が抱え込んでいた()()をわし掴みしてウィズに見せる。


「っ! コレって……」

「そうだ! あの悪女は死んだのだ!」

「うわ~僕たちに殺された方がマシだったんじゃない? これどう見ても喰い殺されてるじゃん? けど笑える~」

「当初の方法とは違うが目的は達成した! これより王国へ帰還するぞ」

「じゃ、せっかくの証拠のコレは腐らないように氷漬けにしとくね~」


 ブツブツと演唱し、ロゼリアの()()を氷漬けにする。

 離れた場所に隠していた馬に乗り帰還しようとしたその時―――


「!?」

「どうしたウィズ?」



 キイィィィィィン



 首を傾げながらゲオルクが視線をそちらに向けると、甲高い音と同時に”死境”全体が()()()()()()()に覆われたのだ。


「け、≪結界≫だっ!」

「なんだとっ! では古龍(エンシェントドラゴン)が”休眠期”に入ったのか!?」

「すごい! ”死境”全体を覆うだけの魔力にも驚きだけど、一瞬だよっ、一瞬! 術式展開が早いのか、それとも魔力循環による……」


 ゲオルクはキラキラとした瞳で興奮するウィズに呆れる。


「専門的な事を捲し立てられてもよく分からんが、これで最低でも100年は”死境”からの魔物には脅かされずに済むのか」


 竜種―――ドラゴンも生物である以上睡眠をとる。

 但しドラゴンの眠りは浅く、僅かな気配でも目を覚まし、人でいう熟睡というものを普段はしない。

 そんなドラゴンが深く深く長い時間(とき)を眠りにつくことがある。それが”休眠期”だ。

 ドラゴンは”休眠期”に入ると最低でも100年は眠り続けるのだ。とある文献には500年ほど寝ていたドラゴンもいたとか。

 そんな彼ら(ドラゴン)は睡眠中の己が身を守る為に特殊な魔法≪結界魔法≫で自身の領域(テリトリー)に結界を張り眠りにつくのだ。


「危なかったな。あと少し遅ければ下手したら我々も”死境”へ閉じ込められていたかもな」

「日頃の行いがいいからじゃない~? それともマリーが僕らの無事を祈ってるからかも?」

「おおっ! そうだ、そうに違いない! 流石はマリエル!」

「いやいや〜ホント天使だよね〜…いや聖女だよマリーは!」


 軽口をたたきながら2人は王国へと戻る。



(でも…あれほどの魔法を発動したら魔力を感知するはずなんだけどなぁ…。あれかな? エンシェントドラゴンの術式展開が早すぎて僕の感知が遅れただけかな?)



 ウィズは疑問を浮かべながらも「ま、いっか」とゲオルクと話している内にその疑問をスッカリ忘れるのだった。








 ”死境”の遥か奥深くより……去り行く自分達が()()()()()()とも気づかずに―――












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