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本気で怒っているランルーサの様子にダーイは一瞬驚き、

後ろにしりもちをついてしまった。


しかしあわてて手だけはもう一度ランルーサのマントを掴みなおし、

おそるおそるランルーサの顔を見あげながら顔色を伺った。


「でもランルーサ…本当にここは危険なんだよ。何があるかわからないんだよ。もしかしたら死んじゃうかもしれないんだよ。伝説にもあるだろ」


ダーイの言葉に再び大きなため息をついたランルーサだったが、

しゃがみ込んでダーイと視線を合わせて言った。


「ねえダーイ、私だってこの洞窟の伝説ぐらい知っているわよ。私を誰だと思っているの。私は祈りの塔の巫女の娘よ、未婚のまま私を生んですぐに祈りの塔に入った母さんのように私もいつかは全てを捧げてなきゃいけない時がくる。私はそれが嫌なんじゃないの。ただこの谷に幾度となく襲ってくる魔の嵐からルーラルーラのみんなを救う為に、でも私はお母様のようにただ祈っているだけは嫌なの。私は探したいのよ。あの魔の嵐から谷を守る方法を、ただ祈るだけなんて嫌なの。それには守り石が必要なのよ。あれがあれば私はあの砂漠へ行くことができるかもしれない。おじいがリーマ様のところに呼ばれたってことは私も祈りの塔に入らなきゃいけない時が近づいて来たのかもしれないわ。そしたらもうどこへも自由にいけなくなる。今しかチャンスはないのよ。蒼い石を手に入れるには蒼い石の見張り番に自分の体の一部を捧げる必要があるって聞いたわ。だったらこの髪を捧げ物にするわ」


ランルーサは足の辺りまである長い金の髪を手に取りながらダーイに向って言った。

それをみたダーイは慌てて言い返した。


「何言っているんだよ、ルーサの髪は巫女になるための儀式に必要なんだろう。だから生まれた時からずっと伸ばしているんだろう。駄目だよ。そうだ! だったら僕の髪を貢物にしたらいいよ。僕の髪はルーサのように金色じゃなくて銀だけど、蒼い石の見張り番は僕の髪でもきっといいって言ってくれるよ。僕の髪も一応聖なる髪だからね。僕は兄ちゃん達のように、この髪を使っても全然風や雨を感じることができないから長くなくてもいいんだ。ねっそうしなよランルーサ。それだったら君にカーリ様は守り石を譲ってくれるかもしれないよ」


ダーイはそう言うと腰から短剣を抜き、自分の長い髪に短剣を当てようとした。


「何言っているのよダーイ。あんたの髪は私が伸ばしている理由とはわけが違うでしょ。私は本当は巫女になんかなえいたくない。でもあんたは違うでしょ。あんたの髪を切っちゃうっていうことはこの谷から選ばれる風の騎士になれなくなっちゃうっていうことなのよ。わかって言っているの? 髪は生まれた時から伸ばして、騎士の資格がえられる十五歳になった時初めて髪を切り、神に捧げて騎士になれるのよ。あんたの夢なんでしょ。この谷をでて旅ができる唯一の存在のサレインの騎士団にはいるのが、女の私には無理だけど、あんたは可能性があるのよ」


「もういいんだよ。僕は弱虫だし、風と雨を感じる訓練ならまた髪を伸ばしてすればいいだけだし、父ちゃんを手伝って農夫になるだけなら髪はまたのばせば済むだけのことだよ。ルーサの方が大事だよ。守り石は他人にあげてもただの石にしかならないっていうから僕のをあげたくてもだめみたいだし、君の意思が固いのならそうしようよ。それなら一緒にいってもいいよ」


真剣な眼差しでいうダーイに、ランルーサはダーイを抱きしめると、背中をこぶしでたたいた。

「ダーイのおばか!」


「ランルーサ…僕なら本当に平気だよ、僕は君が笑っていられるのなら何だってしてあげるよ。だってランルーサは僕の宝物だもの」


「ばかね! 私の為に自分の夢を捨てるなんて考えないでちょうだい。ここに昔からあるとされている蒼い石を手に入れることができたら、何か変わるかもしれない。ここ森にはカーリの守り石が残されているいう伝説があるっていつもおじいがいっていたじゃない。人間の持つ石と違って、カーリの息吹きを吹き込まれている蒼い石なら私の守り石になってくれると思うのよ。カーリはもう人ではないんだから、守り石は必要ないでしょ。あなたは男なんだから、騎士になれさえすればチャンスはいくらでもあるわ。私も自分の力でこの世界を見てみたい。だから、本当にこんな髪私には必要ないのよ。わかった? でもあなたは駄目よ、あなたにはその髪が絶対必要なんだから。あなたはここにいなさい。やっぱり私一人で行くから、呪いは一人で十分よ」


ランルーサはそう言うと立ち上がり一人で暗い洞窟の中へたいまつも持たずに走って入って行った。

ダーイは暫く呆然としたまま暫く立ち上がれずにいた。






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