6、街へ
やっと異世界の人たちとご対面です。
最近目がさらに悪くなって誤字脱字が増え入力も遅くなっています。
アウトドアショップから野営地に戻ってきた。
自転車に乗って出発だ。約15kmあるから1時間ぐらいかなと思ったが、30分で着いた。
筋力が上昇しているのかな?軽く漕いだはずなのにいつもより速度が出た。
自転車はこの世界にはないらしいので少し手前で収納して街に入る門に向かった。
「身分証明書持っているか?」
「これです」
門番に訊かれたので精霊の街の身分証明書を出した。
「少しいいかな」
何故か門番に個室に案内された。
「貴方は人間ですよね。何故、精霊の街の身分証明書を持っているのですか」
「こちらに来た時にもらった物ですけど」
うん、おそらく神様に。
「私の写真と氏名と人間だという事が出ていますよね」
「ええ、確かに。偽造ではなさそうですし。でも精霊の街では身分証明書を精霊にしか発行しないはずなのですが」
「そうなのですか」
「精霊の街には精霊しか入れませんから」
私がアウトドアショップの講習で訓練した演習場も精霊の街の一角だったはずだが。
「例外があるのでしょうか?ちょっと確認したいので待っていてもらえますか」
「ああ、お願いします」
5分後、門番はひきつった顔で上司らしい人物と戻ってきた。
そしてやって来た上司が挨拶もそこそこに説明を始めた。
「失礼しました。昨日のうちに精霊の街から領主の館へタカシ様に身分証明書を発行した旨の通達があったのですがこちらの門に伝わったのが先程でして」
「では街に入るのに問題はありませんよね」
「はい問題ございません」
「わかりました。お手数をかけましたね」
「いいえ、こちらこそ申し訳ありません」
どうも領主の館でのお役所仕事が原因らしい。
まあ、しょうがないよね。門番は疑問を持ったらしっかりと仕事をしている訳だから責めることはできないよね。
「タカシ様はこの街にはどのくらい滞在される予定でしょう?」
「まだわかりません。まずは商業ギルドに行ってから色々決める予定です」
「では滞在される宿の予定も決まっていないのですよね」
「はい、そうですね。どこかいい所はありますか?」
「私どもはお勧めをいう訳にはいかないのですよ。特定の住民に対する贔屓になりますから。商業ギルドには宿泊紹介のカウンターがあります」
「わかりました。ありがとうございます」
「街の簡単な案内図ならこちらにあります。お持ちください」
「では頂いていきます。色々ありがとうございます」
この街の名前はヤリズという。ヤリズ伯爵領の領都だ。ヤリズ伯爵領はカルクロ王国の北西部に位置している。
街は東西・南北とも4kmの円形で外壁に囲まれている。そしてその中央に領主の館と神殿がある。領主の館の周囲には直径約1kmぐらいに貴族街がある。
貴族街に入るのに特に制限はない。まあ、警備兵の巡回は多いようだ。貴族街には貴族の館以外に富裕層の住宅もある。
外壁の門は東西南北に一か所ずつある。私の入って来た門は南門だった。街の南の方の南地区が商業街で宿や飲食店もこの地域にある。
北側の北地区には様々な工房がある。職人街というところだ。東地区や西地区に住宅街がある。中等教育及び高等教育の学校と図書館は東の住宅街の貴族街よりにある。
住宅街でも東地区の方が西地区の方よりも裕福な人たちが多いようだ。商業ギルドは南の貴族街よりハンターギルドは西の門の近くにある。
孤児院は西地区の住宅街の北西側にあり、その周辺が貧民街のようだ。農地は街の西側に広がっている。街の北側には深い森林を擁する山岳地帯、南と東には草原が広がっている。
ヤリズ伯爵領には他に街が5つ、村が12あるという。
王都まで南門を出て馬車で30日、魔動車で10日、魔動飛行船でも3日かかるらしい。
魔動車は時速30kmぐらい出せるが走行は朝から夕方までの10時間程度しか使えないという。魔動飛行船も同様だ。この世界では夜間の移動は危険らしい。
この街の特産品はブドウでワインも作っているらしい。ヤリズ伯爵領は産業の主体は農業だが西側には海があり、領都から馬車で2日行ったところには貿易港を持った交易都市や漁村がある。
貰った案内図はこの街の案内だけでなくヤリズ伯爵領の案内も出ていた。
商業ギルドに行く前に街の中を歩きながら街についての情報をより多く集めることにした。こんな時は無限図書館だよね。
商業街の公園のベンチに座り無限図書館の転移した。メイが嬉しそうに迎え入れてくれた。
ヤリズ伯爵領とカルクロ王国について1時間ほど情報を集め、必要な資料はコピーして戻ってきた。
カルクロ王国では奴隷制は廃止されている。ヤリズ伯爵領には普通の人が最も多いが獣人も他の地域に比べて多く住んでいる。
奴隷制のある国では奴隷の多くが獣人だという。具体的にはヤリズ伯爵領の北で国境を接しているスルベール帝国がその代表だ。
ヤリズ伯爵領では他国から奴隷にされそうになって流れてきた獣人が多く保護されている。
現ヤリズ伯爵は人道的な領地運営を行うことで平民からの支持も多いようだ。そして領主の影響で平民に対して威圧的でない貴族が多いのがヤリズ伯爵領の特徴のようだ。
ヤリズ伯爵領の貴族は子爵と男爵と準男爵と騎士爵がいる。領都以外の街と村の代官は子爵と男爵が務めており、領政府の運営に当たる文官は男爵と準男爵だ。
領軍や騎士団の司令官は子爵や男爵だ。騎士団は男爵や準男爵や騎士爵とその子弟で構成されている。
領都ヤリズは2万4千人程度の人口だ。領全体では12万人程度の人口になる。領都の西にある貿易港を持つグレインは領都より多い3万2千人程度の人口を擁する。
教育制度は領によって異なっているが6歳から10歳までの初等教育はヤリズ伯爵領では義務教育になっている。
因みに11歳から14歳までが中等教育、15歳から18歳までが高等教育だ。この世界では15歳が成人になる年齢だ。
だから15歳からの高等教育は裕福でないと受けにくい。そこで奨学金制度も充実しており、貧しくても能力があれば高等教育を受けることができる。
この街には上下水道が完備されており、平民が使えるぐらいに利用料を抑えた公衆浴場や治療院もある。
街の衛生と住民の健康管理には随分と気を使っているようだ。
そのように住民を大事にした領地運営のお陰でヤリズ伯爵領は割と裕福な領地のようだ。
しかし裕福な故に他領や他国から狙われているらしい。具体的には東のアレン伯爵領や南西のクスタル子爵領、北のスルベール帝国が脅威だという事だ。
また豊かな農作物を狙った魔物も出没する。魔物除けの魔道具もあるが簡単に撃退とはいかないようだ。
街が豊かで交易が盛んだと行きかう商品を狙った盗賊も出没する。だから馬車や魔動車には護衛が必要だという。
他領や他国に対する戦力は領軍が担っているがいざという時にそれを助ける戦力としてハンターが活躍している。
また魔物討伐や商人の護衛でもハンターは重宝がられているようだ。
そういう事もあってヤリズ伯爵領ではハンターの育成とヤリズ伯爵領を拠点とするハンターに対する援助が充実しておりハンターが多く居住しているという。
また、街の北東にあるダンジョンからは様々な鉱物や貴重な魔物の素材も取れるので一時的にヤリズの街を拠点とするハンターも多いようだ。
街を見て回ったがハンターギルドも賑わっていた。また、ハンターギルド周辺にはハンター向けの宿や商店や飲食店もあり南地区ほどではないにせよ賑わっていた。
南地区の商店は貴族街に近い地区ほど富裕層を対象にした商店や飲食店や宿が多く、南門に近づくほどリーズナブルな商店や飲食店や宿が増えてくる。
知識を得て2時間ぐらい街を見て回ったあと商業ギルドに足を向けた。
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次話は商業ギルドへ行きます。
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