19、事後処理
日帰り温泉のフリーwifiから投稿です。
近いうちに日帰り温泉物も書きたい。
『事実』を作り上げることには成功した。『真実』ではないかもしれないが・・・。
スルベール帝国ミユ第三皇女は国民を王族や貴族からの差別と抑圧から解放するために立ち上がるが失敗し、カルクロ王国に逃げ込み保護された。
国境を越えて逃げ込んできたので皇女たちを保護した。我々は帝国内では干渉していない。
カルクロ王国内に入ってきた皇女の追手は捕らえた。
ヤリズ伯爵領内ではスルベール帝国に扇動された貴族が反乱を起こしたがすぐに鎮圧された。
国境付近に集結したスルベール帝国軍に対応するために国境に向かって移動した領軍のいない隙を突いたつもりだったようだけど領軍は移動せず領主の館を守っていた。
彼らは情報を取り違えていた。情報戦で負けた。
スルベール帝国軍も情報戦に負けて捕縛された。
皇女を捕らえることができ、領都ヤリズで帝国と繋がる貴族が反乱に成功したという間違った情報を得たスルベール帝国軍は国境を越えて進軍したがあっけなく罠にかかり捕縛された。
ヤリズ伯爵の領軍やカルクロ王国軍の人数がそろっていないという事実はしっかり得ていたが、戦いは数ではない。作戦だ。
そう最も大事な罠をかけ、容易に相手を殲滅する戦力がヤリズ伯爵のもとにいることをしっかり把握していなかった。
それがスルベール帝国軍の負けた原因だった。
今回の紛争の事後処理が必要だ。
まずはスルベール帝国との交渉だ。王都にはスルベール帝国の大使館がある。帝国の帝都にある王国の大使館は人員が危険なので撤収している。
はじめは王都のスルベール帝国の大使館と交渉が行われた。
スルベール帝国はカルクロ王国に保護を求めた皇女がすべての元凶だと主張してきた。皇女を保護したカルクロ王国が原因だという。
こちらの捕らえたスルベール帝国軍をすべて無条件で返せと言っている。
まだ開戦の宣言もしていないから国同士の戦争ではないともいう。
あくまでも国境付近での紛争だと主張している。国境を越えたのも皇女捕縛のために行った行動だと言ってきている。
こちらには商隊をカルクロ王国内で襲っていた自称盗賊団がいる。そのことを突きつけても彼らは脱走兵で犯罪者だから引き渡すかすぐに処刑するようにいってきた。
その交渉の様子を映像に収め自称盗賊団に見せたところ愕然とし、次から次にと帝国の情報を伝えてくれたという。
事後処理には時間がかかりそうだ。
今回捕らえられている帝国軍のうち8割強の14000人が奴隷だった。
奴隷には主人の命令に従うようにする首輪がつけられていた。この首輪は主人や主人の財産を譲り受けたものしか外せないことになっている。
あくまでも『なっている』のだ。
私は『無限図書館』に奴隷の首をについて調べに行った。
司書のメイは今回もいい仕事をしてくれた。すぐに必要な情報を得ることができた。
一つは奴隷の首輪の効果の無効化。奴隷の首輪は黒色をしている。主人の指示に従うように精神的に支配しているがもし強い意志で抗おうとすると赤くなり、首を絞めてくる。
しかし、無効化すれば首輪は白くなる。無効化には高いレベルの聖魔法の適性が求められる。
私は神殿に何回も行っているうちに聖魔法が使えるようになっていた。いやいつの間にか使えるようにされていた。
『勝手に人の魔法覚醒をいじるなよ』と言ったらすぐに必要になるだろうということを言われた。
このことだったのか?
さて、奴隷の首輪は無効化すれば主人がいなくなった状態になる。この状態から有効化もすることもできる。有効化するには今度は闇魔法が必要なになる。
これも神様のお節介で覚醒済みだ。闇魔法は精神系の干渉なので嫌だと言ったのだが嫌な魔法だからこそ相手の攻撃を知ることは大事だということで説得された。
まあ、奴隷の首輪を有効化することはないと思うけど・・・。
「しかし、こんな厄介な『奴隷の首輪』なんて誰が作ったのだろうね?『邪神の使徒』なんかがいたりして」
『するどい・・』
「え、だれか何か言った?というか、いるのはメイさんだけか。ねえ、メイさん何か言った?」
「いいえ、私は何も言っていませんよ。タカシ様お疲れでは?」
「いや、大丈夫だよ」
この時、私は『奴隷の首輪』はどのような経緯でだれが作ったか調べるべきだった。それからふと口に出た『邪神使徒』についても。そのことに気が付いたのはだいぶ後のことだ。
無効化した奴隷の首輪はどうするか。外してしまったほうがいいだろう。無効化すればやはり聖魔法で外すこともできる。外すまでは2段階の魔法操作が必要なのだ。
外すのもそれなりに高度な魔法が必要になる。まずは奴隷が理不尽に暴れさせられないように『奴隷の首輪』を無効化しよう。
約14000人分だから大変かもしれないがまとめて無効化する方法も他の魔法との複合でできそうだ。
「メイさん今回もありがとう」
「いいえどういたしまして。またおいでください」
今、捕らえてある帝国軍はクレハスと国境の砦の間に地下収容所を作って収容してある。
内部拡張も施してある独房でここに入れておけば取り調べも簡単に自動でできる。ここに入っている奴隷には主人の命令も無効だ。
今のうちに『奴隷の首輪』を無効化しておくことにした。領主と国王の許可も取ってある。
この収容所の機能利用しての作業だ。
まずは『奴隷の首輪』をつけている収容者を特定する。収容所の管理機能も有効に使えた。特定した収容者の『奴隷の首輪』をターゲットとしてロックをかけ、『奴隷の首輪』無効化の聖魔法を発動した。
かなり多くの魔力が使われるのがわかったが効率よく無効化したおかげでうまくいったようだ。
収容所の機能を使って『奴隷の首輪』が無効化されていることを確認するのは収容所の管理者たちが確認して女性秘書型護衛オートマタのサリエルタが取りまとめて報告してくれた。
監視カメラがあり首輪が白くなるのでわかりやすい。14000人もいるから大変だけどね。
まだまだ事後処理は続いているが私たちは商隊としての任務を終えてひとまずヤリズへ帰還することにした。
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次話は閑話になりそうです。




