10、領主
やっと予行通り領主を投稿します。
少し短めです。
評価やブックマークありがとうございます。
自室で調合をしてみたり魔道具を試作してみたりしていた。1時間たったところで外が騒がしくなった。
どうやらレイナさんが帰って来たようだ。厄介ごとを引き連れて。
「タカシさん、いらっしゃいますか?」
「はい、今開けます」
「ありがとうございます」
扉を開けるとレイナさんが転がり込んできた。
相当慌てているようだ。
「タカシさん。領主様から呼び出しです」
「そうですか」
「随分と落ち着いていますね」
「予想されたことですから」
「予想ですか?」
「はい、レイナさんも言っていた通り、飛竜を討伐したことで私は目を付けられたようです」
「大丈夫でしょうか?」
「大丈夫でしょう。いつ、どこに行ったらよいでしょうか」
「すぐに領主の館へという事です」
「そりゃ急ですね」
服装を整えて急いで準備をする。まあ、荷物はほとんど腕時計の収納に入っている。
部屋に置いてあるのは僅かな着替えだけだ。
商業ギルドに着いた私はギルドマスターと共に馬車で領主の館へ向かった。
馬車は領主が用意してくれたものだった。
馬車の中でギルドマスターから説明があった。今回の呼び出しは飛竜討伐の労いと依頼らしい。
詳細は領主から説明があるらしい。まあ、これも予定通りだ。
このような事がなかった場合、むしろ私の知らない複雑な事情がヤリズ伯爵領にあるという事になる。
少し早いのは気になるのだがこれも推測が立つ。
結構しっかりと情報収集はしているよ。
馬車の中で商業ギルドのギルドマスターから聞いた話によると領主であるヤリズ伯爵の領民からの評価は大変に高い。
特に平民を疎かにしない政策を実施しているところを評価されている。貴族からは反発もあるようだが。
評価できる施策はいくつもあるようだがまずは教育や衛生管理が政策の目玉として注目されている。公立学校を運営し一定の期間子供たち全員に教育を施す教育政策。義務教育だね。
衛生管理としては公共事業として上下水道を整備し、公衆浴場を作り平民に衛生観念を教えている。
孤児院の運営にも力を入れており、孤児院を巣立った者が様々な所で活躍し始めている。
そのことに対するやっかみもあったりして他領や他国をはじめとする様々な貴族から中傷されることもあるらしい。
まあ、王族からはしっかりと信用されているらしい。私が無限図書館で得た情報と変わらないなあ。
情報というものは様々な方面から得て照合することによって嘘や間違った情報を排除することができる。
ごうやら入ってきていた情報に誤りはないようだ。
なかなか良い領主のようだ。うまくやっていくことができそうだよ。
領主の館には領主のヤリズ伯爵と共にハンターギルドのギルドマスターが待っていた。
「よく来てくれました。神の遣わし異世界からの旅人よ。そして飛竜討伐に感謝します」
「はい、ありがとうございます」
どうも神から神託があったという事で私の方が領主より立場が上になるようだ。
討伐の感謝の印という事で伯爵からメダルをもらった。
この国の中でならある程度は伯爵と国王が後ろ盾になってくれる証明書らしい。
国王にも飛竜討伐が伝わっているのか。
「あなたを取り込もうという訳ではありません。このメダルはあくまでもあなたに協力するという事です。遠慮せずに受け取ってください」
「わかりました。感謝します」
その後は雑談となった。いや雑談に見せかけた私に対する探りだ。私の考え方、私の伯爵領やこの国に対する姿勢などを見極めようとしているようだ。
うーん、面接か!
「タカシ様。お願いがあります」
ほら来たよ。厄介ごと。
「なんでしょうか」
「私たちを助けてもらいたいのです」
「何から助けて欲しいというのですか?」
伯爵からの話はこうだ。
伯爵領には北で国境を接しているスルベール帝国から獣人が逃げ込んでいる。それは脱走奴隷も含めてだ。
ヤリズ伯爵領も含めてカルクロ王国では奴隷は違法。逃げ込んできた奴隷は獣人やそれ以外も含めて解放される。
帝国はそれらに対する不満を持っておりヤリズ領内に非合法のちょっかいを出してきているのだという。
具体的にはヤリズ伯爵を妬ましく思っているカルクロ王国内の貴族と結託してヤリズ伯爵領内で盗賊団を組織しているらしい。
襲われた商隊は誰も帰ってきていない。殺されたのか連れ去らわれたのか?現場には獣人の痕跡が残っており獣人に対する反発も出てきている。
この盗賊団のために領内北東部の街と村が孤立し、物資不足に陥っているとのことだ。
また、それらの街や村から領都に送られる領の大事な特産品も滞っており領の経済にも影響が出ている。
ヤリズ伯爵領の経済に混乱を与え、領民に不安を与えて何を考えているのかは明白だ。
侵略だよね。そして多くの奴隷を得る事かな。
盗賊を捕らえようと軍を出しても逃げられてしまっている。どうやら領内の貴族にも内通者がいるようだ。
差別的な連中を許すつもりはない。だから協力することにした。
勿論報酬はもらうけどね。
「タカシ様には商人として物資の輸送をお願いしたいのです」
「盗賊の討伐は行わないのですか?」
「そちらはハンターギルドの依頼してあります。タカシさんの護衛もハンターギルドに依頼することにしています」
「盗賊を返り討ちにしたり捕えても構わないわけですよね」
「はい、そうしていただければ助かります」
「わかりました。いつ出発しましょうか?」
「医薬品の不足が深刻なので明日にお願いできないでしょうか?」
「大丈夫です」
内通者のいるらしい貴族が関わる領軍や文官には任せられない。
そこで民間活用か。
そのあと細かい打ち合わせを行い明朝出発することにした。もちろん報酬についても取り決めた。
私の収納を使いたいとのことで少しお高いですけどね。
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