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第30話 『レトロゲームで遊ぼう!』②


 安藤の兄、一郎は映像クリエイターだ。彼の仕事場兼自宅であるマンションの一室の前に安藤とフランチェスカが立つ。

 安藤がインターホンを押すと、電光石火の速さで一郎がドアを開けてきた。


「遅かったじゃないか! あ、フランチェスカさん。ささ、どうぞどうぞ! 狭いところですが……」

 

 入った先は1LDKの一室で独身男性が暮らすには少し広い。一郎いわく、リビングは仕事場になっており、ふたりはその仕事場に通された。デスクには大小さまざまのディスプレーにキーボード、ビデオカメラ一式が勢揃い、壁にはスクリーンがかかっている。


「スゴい! まるで秘密基地みたい!」

「でしょう? ここでゲームで使う映像を作ったり、画像の編集を行ってるんですよ。もちろんフランチェスカさんからの依頼もここで作ってるんですよ」

「いつもありがとうございます!」


 ぺこりと頭を下げる彼女に一郎がいやいやと手を振る。


「フランチェスカさんのおかげでこちらも良い経験になっているんです。で、今日はゲームを遊びたいとかで……」

「はい! 出来ればまだやったことのないゲームがいいです!」

「それならこの私、一郎にお任せあれ!」


 芝居がかった動作でクローゼットを開く。


「わああっ!」


 フランチェスカが目を輝かせるのも無理はない。そこには古今東西のゲーム機とソフトが収納されており、さながら博物館のようであった。


「すごい! 見たことのないゲーム機もある!」

「兄はゲーム好きが高じて映像クリエイターになったんですよ」と弟の次郎が説明し、棚から本体のひとつを取り出す。

 

「なつかしいなー。よくこれで兄ちゃんとコントローラーの取り合いでケンカになったっけ」

「最終的にはいつも俺が勝ってたけどな」と兄が自慢顔。

 そんなふたりにフランチェスカがふふと微笑む。


「仲良いんですね。ん? これって……」

 

 フランチェスカが指さしたのはスティックとボタンのあるボードだ。


「コントローラーとはまた違いますね?」

「それはソウルキャ〇バー専用のコントローラーで、もともとはアーケードゲームだったのをテレビゲームに移植したんですよ」

「へぇえ」

「あと、今の子どもは知らないだろうけど、俺が子どもの頃はこれが主流だったんだ」


 一番下から取り出したのは白と茶色を基調としたゲーム機だ。


「タララッタラ~任〇堂のファミ〇ーコンピューター!」


 ネコ型ロボットの声真似でふたりの前に見せる。


「これ、そのメーカー初の家庭用ゲーム機だよね?」

「チッチッチ。まだまだ甘いな弟よ。これはメーカーとしては二つめの家庭用ゲーム機なんだ。最初のゲーム機はテニス、バレー、ホッケーなど数種類のゲームが出来るという、当時としては画期的なものだったんだ」


 ふふんと兄がドヤ顔。


「あ、これ知ってる! ドラ〇エだわ!」


 カセットが入った箱から取り出したのは黒のカセットにラベルには冒険者たちが並んでいる。


「さすがフランチェスカさん。お目が高い。それはシリーズの中でも名作ですぞ」

「それって社会現象にまでなったんですよね?」

「はい、フランチェスカさんよくご存じで。このゲームが発売された日には学生のみならず、サラリーマンまでもが行列に並んだので、それ以降発売日を休日に変えたといういわく付きのソフトなのです」

「今はスマホでも出来るけどね」と次郎。

「このシリーズはいずれも名作ですが、私が推したいのはやはりこの『Ⅴ』ではなかろうかと」


 くいっと一郎が眼鏡を押し上げる。


「ちなみに私は断然フロ〇ラ派です」

「俺は幼なじみのビア〇カかな」

「あたしはゲ〇ダ!」


 兄弟が揃ってフランチェスカを見る。


「フランチェスカさんって少数派なんすね」

「いいじゃない別に。でもこういうのってその人の性格が表れるものね」

 

 あはははと三人が笑う。


「あら? これ……さっきのドラ〇エと同じ絵柄じゃない?」


 フランチェスカがカセットの箱から『ク〇ノ・トリガー』を取り出す。


「それは奇跡の一作とも言うべきソフトなのです。これのすごいところはなんと! あのFFとDQで有名な二大メーカーがタッグを組んで生まれた、まさに奇跡のゲームなのです!」

「兄ちゃん、メーカーからお金でももらってるの?」

「や、すまん。興奮してしまって……」

「でもそれRPGなんでしょう? 時間かかるものじゃなくてアクションとか格ゲーとか……」


 フランチェスカが若干引きながらも要点に入る。


「うーん……格ゲーだと二人でしか遊べないから、これなんてどうだろう?」

 

 取り出したのは任〇堂のマスコットとも言うべきキャラがカートに乗ったイラストのカセットだ。


「マリ〇カート! でも、あたしがやりたいのはまだやったことのないゲームなんです」

「それならこれなんていかがでしょう?」

 

 次に出したのは可愛らしくデフォルメされたキャラが爆弾を持ったイラストのカセットだ。


「カワイイ! これなんてゲームですか?」

「おや、さすがのフランチェスカさんもハド〇ンの名作までは網羅(もうら)していませんでしたか。『ボンバー〇ン』ですよ」

 

 くいっと再び眼鏡を押し上げる。

  

「あれ? でもこれって二人までしか遊べないんじゃ……?」

「ふっふっふ。甘い、甘いな。弟よ。これがあれば三人でも遊べるのだ!」

 

 棚から取り出したのはキャラの顔をかたどった箱のようなものだ。


「マルチタップ! これがあれば最大五人まで遊べるのだ!」

「スゴい! 二人までしか遊べないと思ってたのに!」

「ところがフランチェスカさん、このゲーム機の後に出たNINTEND〇64では四人しか遊べなくなってるのですよ」

「なにそれ!」

「それはさておき、遊びましょうか! ヒャウィゴォー!」

 

 ネイティブな発音で一郎がふたりをダイニングへと案内する。


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