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第6話 『KINDERGARTEN SISTER』②


 聖ミカエル幼稚園。教会の最寄り駅からふたつめの駅を降りたところにそれはある。


「当園は園児たちをのびのびと健やかに育て、神の教えに基づいた教育を方針にしていますの」

 

 園長が廊下を歩きながらフランチェスカに説明する。


「当園は5つのクラスにわかれてまして、あなたにはカトレア組の担当をお願いしたいんです」

「そうですか……」と乗り気のない返事。

「ちなみに担当していた先生はどんな病気で入院されたのですか?」

「それは……」

 

 園長が歩を止める。どうやらカトレア組の教室に着いたようだ。


「さあここですよ」


 ガラガラと引き戸を開く。そこで目の当たりにしたのは……


「はなせよ! これはおれのだって!」

「ちがうもん! ぼくんだもん!」

「ふぁいぶれんじゃーただいまさんじょー!」

 

 おもちゃの剣を振り回す園児に、辺りかまわず泣きわめく女児の隣でもうひとりの女児がクレヨンで落書きに興じている。


 その喧喧囂囂(けんけんごうごう)といった様はまさに混沌(カオス)であった。


「ほらほらみんな、静かにして!」


 園長がぱんぱんと手を叩く。園児たちがぴたりと騒ぎを止める。


「今日はみなさんに吉岡先生の代わりに来てくださった先生を紹介しますよ」


 園児たちが一斉にフランチェスカを見る。


「おねーちゃんだれー?」

「かみのけキレーイ」

「よしおかせんせーはー?」

 

 わいわいと質問が矢継ぎ早に発せられた。園長がしーと口に人差し指を当てて静かにさせる。


 「では私は所用がありますので……」と園長がフランチェスカを残してそそくさと教室から出る。


「ああ、吉岡先生のことでしたらストレス性の胃潰瘍で入院されました。なにかと問題児の多いクラスですが、よろしくお願いしますね」


 ぴしゃりと戸が閉じられる。

 教室に残されたフランチェスカを園児たちがまじまじと見る。

 そしてはぁああと溜息をひとつ。


 勘弁してよ(ニ デ コニャ)……。


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― 新着の感想 ―
フランチェスカさん。 日本には『毒をもって毒を制す』という言葉もあるのデス…… さらにいえば、きっと神はこう言っているでしょう…… good luck!! っとまぁ、ここまでざっと読んできたわけ…
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