第6話 『KINDERGARTEN SISTER』①
今回は初の連作となってます。
「それは困った話ですね……」
「ええ……ただでさえ人手不足ですから、途方に暮れているんです……」
教会の礼拝堂にてマザーの前で聖ミカエル幼稚園の園長はふぅっと重い溜息をつく。
幼稚園のクラスのひとつを担当している保育士が入院してしまい、空きが出来てしまったのだ。
昨今保育士の圧倒的な人材不足が叫ばれるなか、保育士の確保は困難を極めると言ってよい。
「ああ、誰か手が空いていて、子どもたちに好かれるような人材はいないものかしら?」
園長がそう嘆くと、礼拝堂の扉が開いて、ミサのお知らせを貼り終えたフランチェスカが「ただいま帰りましたー」と帰宅を告げる。
「たったいま見つかりましたわ。適切な人材が」とマザー。
「え? 保育士の代理に?」
フランチェスカが「私がですか?」と自分を指さす。
マザーがこくりと頷く。
「この教会を設立した団体が幼稚園も運営していることはご承知ですね? その幼稚園の保育士のひとりが入院してしまったので、あなたに代理を頼みたいのです」
「私からもお願いします。10日ほどで構いませんので……」横から園長が頭を下げる。
「そう申されましても……そんな大役、私に務まるかどうか……」
もちろん本音はめんどくさい仕事を引き受けたくないの一言に尽きる。なにより保育園では昼寝もゲームも出来ないではないか。
「フランチェスカ、保育士となって子どもたちの相手をするのも立派な務めですよ。“子をその行くべき道に従って教えよ、そうすれば年老いても、それを離れることがない”(箴言22章6節)」
「そ、それはそうなのですが……」
ふとマザーが「あら?」と声をあげる。
「安藤さん来てたのですね」
「え?」
フランチェスカが振り向いた隙にマザーが彼女の修道衣のポケットから素早くゲーム機を抜き取る。
マザーが力を込めるとみしりと軋んだ。
「やっていただけますね?」
「はい……喜んでやらせていただきます……」
ゲームを人質に取られてはあらがえない。
「あなたならきっとそう言ってくれると信じていましたよ」
マザーがにこりと微笑む。