表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キルト  作者: カシミア
前編
2/20

01.キルトとシノ-1

 この世界には、魔術といわれる異質な力が存在する。

自分を守る矛にもなり、人を傷つける武器にもなる――恐ろしく強大な力だ。大きな力は人を狂わせる。故に、魔術を悪用した犯罪は後を絶たなかった。


 世界の半分を支配下に置く、軍結社・クロノスの力を持ってしても改善されず、規律が乱れた世はまさに暗黒時代。その中で、“魔術師試験制度”という律令を強行したのは、横暴ながらも実に画期的な事だった。


力を持つに相応しくない者から、魔力を永遠に奪う事が出来るのだから――。






 20XX.03.31 18:00

夕日が差し込むホテルの一室にて。

ベッドの上で横になっていた少年は、不意に窓枠に止まる1羽の鳩に目を止めた。


 A4サイズの茶封筒を加え、じっとこちらを伺っている……良く躾された伝書鳩だ。少年は、自分宛であろう茶封筒を受け取ると、15歳らしい幼い顔であざとく首を傾げてみせた。


 伝書鳩から届けられた封筒には、クロノスの印が押されている。“魔術師試験の受験資格について”と、書いてある事から、 受験者へ一斉送信された書類である事は予測出来た。けど、何故今になって送られてきたのだろうと、少年は訝しげに眉を顰める。


試験は明日。クロノス本部にて執り行われる事が決まっているのだ。


(年齢制限さえクリアしていれば参加自由……。大丈夫、別に大した内容じゃないだろ。だろ?)


言いようのない不安に襲われながら、そして自分に言い聞かせながら、少年は1枚の書類に目を通し始めた。







はじめまして、キルト=アルジェント様。

私は、クロノス軍事本部大佐、マルコ=レクターというものです。この度は、魔術師試験への受験申し込み、誠にありがとうございます。


魔術師試験は、4年に1度しか行われない国家試験です。

25歳までの魔術使いであれば、何方でも受ける事が可能であります。ただし、受けられる回数は2度まで、となっておりますので、何卒宜しくお願いします。


規定の年齢までに、魔術師の資格を持たなければ、魔力を剥奪……力の封印をさせていただきます。その際に、逃亡をはかる方もいらっしゃいますが、例外なく抹殺させていただきますのでご理解、ご了承ください。


少々暗い話になりましたが、何も悪いことばかりではございません。


晴れて魔術師になったあかつきには、ライセンスを持つ者しか許されない仕事、施設への出入りの許可が降ります。クロノスから与えられる任務を、こなしてさえいただければ、安定した収入を約束いたしましょう。未来は明るい方が良い、どうか頑張ってください。



◆おしらせ◆

《前試験》を行います。

責任者を務めてる私の意向で、今年より導入したシステムです。明日の試験までに、あるものを用意していただくだけ、ですが……出来なかった者は失格と見なされますのでご注意ください。

 


(中略)



 それでは、キルト様のご活躍期待しております。

また、試験日ですが、明日10時、各地方のクロノス12の塔(ゼウスタワー)に変更になりましたのでお間違いなきよう。







「何言ってるの。何言っちゃってるの。馬鹿なんですか!?」




 書類を握りしめ、思いつく限りの悪口を言葉にし、金色の瞳を右往左往させる。無理だと思った。少なくとも自分には難しい難題だった。だけど、キルトの辞書に諦めるという文字はなく、新調したての長剣を担ぎながら、覚悟を決めたように行動を始めた。




――試験日までに用意してほしいものは……

危険度B級以上の賞金首です。A級以上は生死問いません。




(……情報屋だ。情報屋、見つけねぇと)


 タイムリミットまで、残り15時間。

少ない荷物を慌てて旅行鞄に詰め込むと、キルトは追われているかのように部屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ