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6話:師匠との出会い

遅れました!

夜勤から帰って眠気に負けて、横になってしまった……

 紹介された治癒術師はおっさんだった。

 まあ、当然か。男に教えるのに女医さんは普通担当にしないだろうし、誰かに教える以上はそれなりに経験のある人を持ってくるだろう。そう考えるなら妥当というべきか。


 「やあ、結局うちになったの?って事は回復魔術の使い手だった訳だ」

 「そうです、よろしくお願いしますね」 

 「はいよ、おじさん任されました」


 結構軽い雰囲気のおっさんだった。

 見た目はインテリ眼鏡のエルフなのに……ってどこかリエラさんに似てるな?


 「それじゃお願いします、おじさん」

 「はいはい、可愛い姪の頼みだし、頑張っちゃうよ」


 叔父さん(乃至伯父さん)と姪の関係だった。そりゃ似てる訳だわ。


 「さて、それじゃ改めて自己紹介しようか。マーロン・フェルダー、さっきのリエラの母親の弟、つまりリエラの叔父さんになります」

 「霧生和真です」

 

 お互い一礼して、早速とばかりにマーロンさんは説明を始めた。

 

 「治癒魔法ってのは要は戻して、排除する事だ」

 「はっ?」

 「戻すは分かるな?怪我した部位を元に戻す、病気になった奴を元に戻す。排除は分かりやすいのは解毒か。毒を体から排除する」

 「ああー」


 成る程、だから戻して、排除するかあ。

 

 「回復魔法は排除の部分では物質に干渉可能な、魔法としては珍しい部類なんだ」

 「珍しいんですか?」

 「ああ、基本物に対して何かするのは付与術師の特権みたいなもんだからな。治癒術師以外では攻撃術師も瞬間的に物質に干渉しているが長く持たん。毒ってのは鉱物由来の毒もある、というか蛇なんかの生物由来の毒とか除けば鉱物系やら植物系の毒はありふれてるしな。それに対応出来なけりゃ回復魔法の意味がない」


 確かに。

 でも、鉱毒とかも解毒出来るんだ。

 

 「実は元々、防御用の結界もその排除を調べてた奴が気づいた訳だ。物質排除可能なら結界とかも作れるんじゃないのか?とな」

 「物質排除の結界ですか」

 「そ。要は対象を決めた範囲を肉体に見立てて、その中に入れさせない、体内から排除するって考えりゃいいよ」


 ふんふん。

 一定空間内を体内に見立て、その内部から毒に見立てた物質を排除する。

 毒という物は元々生物毒もあれば植物毒や鉱物毒もあるから生物、植物、動物全てに対応可能……最初に考え付いた人凄いな。回復魔法が自分にだけじゃなく、主に他者に干渉して行う魔法だから周囲の空間に対する干渉も出来る訳か。

 でもこれ、色々応用が利きそうだな……。

 

 「他の魔術も基本となる部分は同じだな。例えば付与魔法であれば物質の変形・変質となる。生物以外であればほぼすべてに干渉可能でしかも一度変えれば戻らないが、反面瞬間的にぱっと変わらないから突進してくる相手に地面から杭を突然突き出すみたいな真似は出来ん。そういう事が出来るのは攻撃術師の領分だ」

 

 成る程、漫画みたいに即座に地面から杭が飛び出すとかは出来ないのか。

 あくまで直接攻撃は攻撃術師なんだ。


 「ま、他の系統はどうせ使えねえんだし、こんぐらいでいいだろ。どうせ詳細に関してはリエラが今後の授業で教えてくれるだろうしな」

 「そう、ですね。とりあえずは自分の魔法を使えるようになるのが優先ですよね」

 「おう、分かってんじゃねえか。ま、ここはお仕事一杯あるから腕を鍛えるのにはいいとこだぜ?」


 聞いてみれば、「蒼の雫」のようなバランスの良い冒険者グループは案外少数派らしい。

 「蒼の雫」は強化術師である前衛戦士と盗賊、攻撃魔術師に治癒術師がそれぞれ専門家として付いて、移動術師が運搬師として補助にあたるという理想的な組み合わせだとか。

 これに対して多くの冒険者グループでは治癒術師や移動術師がいない所が多いそうだ。どちらも熟練者なら都市の安全な所で十分稼げる魔法使いだから、危険な冒険者になる人が限られるとか……特にその双方は単独での戦闘力は低い人多いのも災いしてるらしい。

 確かに、治癒術師なら襲撃受けたら結界張って閉じ籠る、移動術師なら逃げ回るしかないもんな……。

 では多くのいない場合どうするのかというと、運搬師は強化術師が務めている事が多いそうだ。これなら荷物を下ろせばサブの戦士としても動ける。

 で、治癒術師の代わりは付与魔法と回復魔法の合わせ技で作成されるポーション頼りなんだとか。


 「でも、ポーションは一回一回で使い捨てだわ、効果の高いものは高い!それに、汎用型の治癒を液体に封じてあるからどの怪我にも対応できるって訳じゃないんだよねえ、これが」

 「ああ、成る程、物に他の魔法使いの人の魔法を封じるって事が付与魔法は出来るんでしたっけ。この世界のポーションはそういう作り方なんですね」

 「そうだよ。でも、さっきも言った通り使い捨てな上に、強い回復魔法を封じる液体触媒はそれだけで高い訳よ。封じてある魔法もどっちかってーと命を繋いで、なるだけ早く近場の街へ、って代物だからねえ」


 とはいえ、それで助かる命が多いのも事実なんだが、とマーロンさんは呟いた。

 確かに出血なんかは抑えられるだろうし、出血多量による死を防げるというのは大きい。

 その上で、命を繋いでこうしたギルド直営の施療院に来て、骨折なんかは改めて治す、と……。


 「さて、それじゃ今日は私は担当医からは外れてるからねえ。簡単な奴だけでも使えるようになるよう頑張ろうじゃないか」

 「よろしくお願いします……ってあの?何で針なんか……」

 「そりゃあ君、回復魔法だよ?ちゃんと発動してるか知る為には傷がないと意味ないじゃないか」


 ……確かにその通りだけど!!

 回復魔法、その取得は予想以上にハードなスタートになりそうです!! 

明日は竜に生まれましてを更新するので、こちらはお休みです

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