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5話:自分の魔法適正は

最近眠気が取れない

 「回復魔法ですね」

 (よっしゃ!)


 判定はそれぞれの系統ごとに反応する結晶を用いて行われる。

 一つの板に五つの結晶が埋め込まれていて、これに触れた際にいずれかの結晶が反応する。それによっていずれの系統に素質があるかを判定するという。結晶自体は付与魔術師と他系統四つの術師がいれば簡単に作れるという。

 その結果判明した俺の系統は回復魔法。

 正直に言おう、俺は賭けに勝った!

 個人的には付与魔法が一番の希望だった。次点で回復魔法。この魔法はどちらも街から出る事なく仕事が出来る。

 まあ、何故回復魔法が次点かと言えば……。


 (やっぱり怪我した人で、冒険者って事は痛そうな怪我とか見る事になるんだろうなあ……)


 という事だ。

 元気なら回復魔法かけてもらう必要はない訳だし、冒険者ギルドの病院に担ぎ込まれるとなると怪我の方が多いだろう、って訳だ。

 実際には「そんな担ぎ込まれるような重傷者、魔法覚えたばかりの初心者に任せる訳ないでしょう?」、という事だった訳だけど、それはまた後程追々。

 

 「さて、まず回復魔法の素養があると分かった訳ですが」


 判定が終わった後、部屋から出て何か持ってきた。参考書とかかな……。

 

 「まずこれを読んでみて下さい。あなたの世界の常識、いえ医学知識から見てこれはどうですか?」


 ええと……分かるかな、ってええ?

 ナニコレ。

 体の構造は割ときちんと書かれている。

 でも体の機能とかに関しては……。

 例えば、脳。

 『血管多数、多数の皺、血液を冷却するための器官と推測される』

 ……いやさ、古代エジプトの鼻水を作る器官とかよりはマシだろうけど、これ何時のだよ(古代ギリシアです)。

 他も似たり寄ったりだ。

 中にはまともな意見も混じってるけど、何というか古代と中世に少量の現代を混ぜ合わせたような印象です。

 こっちの顔から大体察したのだろう。職員の眼鏡エルフさんは頷いて言った。


 「なるほど、大体予想がつきました。貴方の世界ではそれより進んだと思われる概念があるのですね?」

 「あ、はい」

 

 「言い訳になりますけど」との言葉と共に溜息をついた眼鏡エルフさんによると、ここまで発展していないのは回復魔法の存在が大きいらしい。

 つまり、魔法で何とかなってしまうので一般の回復術師は細かい事まで気にしないのだとか。


 「ですので、落ち人の方の場合こちらの現状の医学より優れた知識をお持ちの方が普通にいらっしゃいまして。そういう方にはこの世界は今、こういう認識なんだと理解して下手に知識を広めないよう気を付けて頂くという事になります」


 ああ、成る程、常識教育の一環って事なのね。


 「まあ、回復術師の名家とか大家と言われる方ですともう少し上の知識などをお持ちの方もいると思いますが、そちらは割と近年の落ち人の一人がやらかした事件を機にすっかりそういう事を表にする事から手を引いてしまったそうですし」

 「事件、ですか?何があったんですか?」

 「私もそこら辺は詳しくないので、申し訳ありませんが他の方にお願いします」


 一体何があったんだろう……。

 気になるが、そこは後に回さざるをえないようだ。


 「さて、それではまず最初にですが、回復魔法の師となる方をご紹介しておこうと思います」

 「あれ、もう決まってるんですか?」

 「ええ、それぞれの分野ごとに『この系統だったらこの人』というのが決まっておりますので」


 一定期間ごとに持ち回りでこうした「担当となって教育を行う人」が決められているらしい。無論、普段は落ち人ではなく、この世界の住人が初めて「魔法」というものに手を出す時の教官を務めているらしいが。この世界は前述の理由から神様を崇める神殿というものが存在しないので(感謝を述べる場所はあるが聞く限りお地蔵さんとかそういうレベルみたい)、冒険者ギルドはこうした教育に関しても国と協力しているそうだ。

 魔法は早く取得すれば、その分バイト代というか臨時収入を稼ぎやすくなるから先に済ませてしまおうって事だね。


 「つい、うっかり、といった事はあるとは思いますが、下手に知識を公開しないよう気を付けて下さいね?冗談でも何でもなく、明日の太陽が拝めなくなりますから」

 「……気を付けます」


 うわあ、本当に目が笑ってないというか、心配そうな声で言われたよ。

 こりゃ気を付けないと本当に下手に知識が広まるとヤバいんだな……でも、魔法楽しみ。 

 

 「そういえばお名前を伺っていませんでしたね。本当に今更の話ですがお聞きしても?」

 「いいですけど、一つお願いが」

 「何でしょう?」

 「そちらのお名前も教えて頂けませんか?」


 きょとんとした顔が可愛らしかった。どうやら自分では名乗ってた気になっていたようだ。


 「すいません、言ってませんでしたか。私はリエラ、リエラ・フェルダーと申します」

 「俺、霧生和真きりゅうかずまです。あ、霧生が家で、和真が名前になります」


 お互い名乗って、ふと目が合い。

 どちらともなく、笑顔になった。何となくそれが心地よかった。

夏場の疲れが出てるのかね

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