22話:魔族とは?
風邪引いたかもしれません……どうにも喉が痛い、熱っぽい。急に寒くなったのに窓開けて寝てたのが原因か。昼はまだあったかいから閉めると辛いし
明日更新されなかったら、風邪で寝込んだと思ってて下さい
「それにしても」
ふと思う事がある。
「魔族ってどうやってこの森を軍勢で移動してるんでしょうね?」
森というのは軍隊には動きづらい場所だ。
それが人の手の入らない森ならば尚更の事。
視界の効きづらい場所故に、先頭と後方は互いを確認出来ず、一人が前を見失えば容易にそれは集団の迷走へと繋がる。
「ふむ、確かに」
「ましてや魔獣を警戒しながらの行軍となるでしょうからね」
モルテン将軍とアシュタールが同意して呟くが、それもある。
もちろん、軍勢規模で動いていれば、魔獣側も警戒して襲ってこないという可能性もあるが、望み薄だ。魔獣はむしろ隙を伺い、襲撃をかけてくるだろう。奴らはこの世界に落ちて来た奴なら誰でも持っている生命の結晶、【ライフクリスタル】を狙ってくる。
それがなければ奴ら生きていけないのだから必死だ。
「そりゃあ、奴らに【ライフクリスタル】がないならまた話は別ですけど」
「それなら狙われなくなるじゃろうな。奴ら風に言うなら、不味くて食う意味がないという処か」
そうモルテン将軍が相槌を打った。
そう、世界同士が繋がったとかで世界の壁を抜ける事なくやって来たというならば【ライフクリスタル】がない可能性もあるが、そうでないなら間違いなく持っているはずだ。実際、異世界から落ちて来た自分でさえこの世界の魔法が使える時点でそれを持っている。
いや、違う?
「もしかして、奴らは【ライフクリスタル】を持っていない?」
「なに?」
「それなら行軍可能な理由の一つは説明がつきます。魔獣が襲ってこないなら、後は森という場所を軍という形を保って行動する術だけだ」
「むう……しかし、そうなると奴ら、我々の魔法とはまた別の魔法なりを使っているという事になるぞ?」
そう、それだ。
「それもおかしな話です。まず大前提ですが、将軍」
「うん?」
「これまで魔の森から魔族が現れた事はなかったのですよね?」
「そうじゃな。それは間違いない」
これまでまったく目撃情報がなかったからのう、と呟く。
もっとも、巨大な密林の奥に知られる事なく、巨大な都市が築かれ、或いは気づかれる事なく人が暮らす。それ自体はありえる。
事実、俺のいた世界、あれだけ科学が発展した世界でさえアマゾンの密林の奥から未だ文明と接触していない知られざる部族が見つかったという話はあったし、アマゾンの奥地に存在する第五の古代文明、モホス文明なんてものが語られるようになったのはつい最近の事だった。
魔の森の広大さを考えるならば、それだけならば同じようにこれまで他の種族と接する事なく、文明が花開いていた、という可能性がゼロとは言わない。都市丸ごと落ちて来た可能性だってある訳だし。或いは冒険者の中には魔の森の奥で魔族と接し、報告もしたが一笑にふされて、記録にもまともに残らなかった、という可能性だってある。
『魔の森で暮らしてる連中がいる?馬鹿馬鹿しい、あんな所に住んでる奴がいる訳ないだろ!』
そんな情報をあげられた者がそう声を上げる光景だって目に浮かぶ。
もちろん、そうした報告を最初に受けた受付嬢がそんな反応をする事はないだろうが、どこかの責任者がそう考えて「見間違い」と分類してしまえば、その時点で更に上へと上がる可能性は極めて低くなる。
もっとも、魔族がこれまで接していなかった文明などという、単純なものかはまた別だったが。
もちろん、九十九折りだろうが何だろうが、とにかく道があるなら大分話は異なる。
道というものがあれば、それに沿って歩けばいいし、それなりの手入れもされている。野営の為の場所だってあるだろうし、水の補給をしながらの行軍だって可能だろう。水というものは存外飲めるかどうかという判断が厳しい。何しろ透明であり、毒性のある物質が溶け込んでいたとしてもそれを判別するのは難しい。病原菌が潜んでいる可能性だってある。下手に水に入ったり、魚を食べれば寄生虫に侵される可能性もある。
しかし、既に道として整えられ、事前に調べられているならばその危険は低いものになる。
「この森の中に道があればもう少し話は楽なんですけどね」
「あるんじゃろうな。何百という連中がまとまって動けば、それだけでそこには道が出来る」
獣道というものがある。
野山に生きる動物でも動きやすいルート、安全なルートというものは巣と水場その他から或る程度固定される。
そこを通る事が多くなれば、自然と大地は踏み固められ、低木の小枝が折られ、地面の草は踏みしめられて枯れる。何百という軍勢が行軍すれば自然とそこは道となる。
「もし、以前からそうした道が形作られていたとしたら、どこかで報告の一つぐらい上がりそうなものなんですけどね……」
「そうじゃのう……ま、今は単純に道が見つかっておらんだけじゃろうが」
何せ広いからの、とモルテン将軍が続けた。
だが、何百年と住んでいたならもっと確たる道があってもいいはず。現にアマゾンのモホス文明はとんでもない長さの直線道路と思われる道が整備されていた。
道なき道を軍でもって突破していくとなると魔獣を避ける方法と、一軍として行動する手段、通信手段などが不可欠なはず……。
(科学技術か、もしくはそれに近い魔法?少なくとも、俺は通信に相当する、そんな魔法は見た覚えがない)
転移魔法の使い手が伝令を行うのがこの世界の最も早く確実な伝達手段だったはず。
言い知れない不安、そんな言葉がどうにも脳裏に浮かぶな……まさか、本当に科学技術を持った異世界が直接侵攻してきたんじゃないだろうな?
ワールドネイションが全然進んでませんが、こちらをカクヨムで掲載するつもりで現在書き溜め、といより設定から見直し中です
読者の方から翡翠らがいるのが方が好きだというご意見を頂いたので、彼女らを再配置して現在、見直ししつつ書いております