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20話:軍の動向

明日は病院に行く予定があるので、お休みします!

申し訳ありません

 「おお、良い匂いがすると思えば先客がいたか!」


 そんな声が響いたのは俺達が飯を食い始めて間もなくの事だった。

 声に聞き覚えがあったのでそちらを見て、姿を確認する。

 

 「ああ、やはりその声はモルテン将軍でしたか」

 「おお、和真殿か!久しいな!!」


 モルテン将軍。巨人族の血を引いているともっぱらの噂の初老の巨漢であり、見た目通りの豪快極まる強化術師の男性だ。

 ……本当なら、将軍という名称の通り、こんな場所に赴くような立場の人ではないんだが、当人がとことん現場な人だからな。今回も強引に押し切ったと聞く。これで悪い結果を引き当ててるなら、次回以降止める事も出来るんだが、実績も多数上げているせいで陛下も強く言えないらしい。

 とすると、後ろのメンバーは軍派遣の正規メンバーか。よく見れば、モルテン将軍の副官がぺこりと頭を下げて挨拶している。確か、あの人が治癒術師だったはずだ。しかし。


 「人数多くないですか?」

 

 軍から派遣された部隊は強化、移動、治癒、攻撃の四人を一チームとし、探索に当たっていたはずだ。

 当然、モルテン将軍の率いる小隊もそういう編成だったはずだが、ざっと見た所モルテン将軍を含めて九名。本来の編成の倍以上だ。

 こちら側の一同も俺の質問に同意した様子でモルテン将軍を伺ったが、そのモルテン将軍自身は酷く険しい顔になった。

 これだけ見れば軍事機密とか知られてはならない事を知ってしまったようにも見えるが、多少付き合いがあればこの顔が単なる苦い顔、或いは渋い表情を浮かべているに過ぎないと理解出来る。


 「それなのだがな、軍の部隊はほぼ壊滅していると思ってくれ」

 「はいッ!?」


 とんでもない話が飛び出してきた。

 今回は国と冒険者ギルド、双方から探索の為の部隊が派遣されている。

 冒険者ギルドからは国からの依頼として。

 国からは調査部隊や偵察部隊を中心に。

 いずれも素人ではないはずなのだが……そう思ってモルテン将軍に問いかける視線を向けるとますます顔の迫力度が上がった。


 「慣れておらんかったのだ、魔の森という奴にな……」


 ああ、と納得する。

 何となくではあるが、予想がついた。

 

 「呑まれましたか……」

 「うむ……」


 アシュタールの言葉にモルテン将軍は頷いた。

 和真もこれまでまったく冒険に出た事がなかった訳ではない。

 今は引退した「蒼の雫」(単純に成功して身を引いた)と一緒に何事も経験として師匠からの依頼ととして、彼らとお客さんとして冒険を体験した事もあるし、或いは和真自身が治癒術師不足を補う依頼を受ける形で冒険に出た事もある。この世界は何だかんだで体力勝負な所もあるので、元の世界とは比較にならないぐらいに体も鍛えた。

 それでも、魔の森はその外の冒険とはまた違う。

 魔の森からの防衛では国は軍勢を持って少しでも安全を図って戦う。

 それでも零れる魔の森の魔獣は、代わりに少数だ。一体か、精々二体程度のもの。これに対して、軍が動く際は最低でも二十人からの動員が為される。これまた少しでも安全に処理を行う為だ。軍にしてみれば、訓練した兵士を失う危険性を少しでも減らしたいと思うのは当然の事だ。

 結果として、斥候とはいえ魔の森に踏み入った事のない者がほとんどだった。

 調査部隊は魔の森に分け入った事はあっても、その時は基本、冒険者が同行する。専門家の有無は安全性に直結するからだ。


 かくして四人という少数で魔の森に分け入った経験がなく、魔獣と相対してもこれまで自分達が多い状態で、しかも連戦を体験した事のなかった軍のチームは次々と慣れない戦いに疲労し、殺されていった訳だ。

 モルテン将軍の名誉のために言っておくと、彼は若い頃に魔の森に踏み入った経験があった事から軍ではなく、冒険者に任せるよう進言していた。

 が、軍の下から、或いは同僚からの突き上げで認めざるをえなかった、という事だ。

 モルテン将軍自身は「軍の部隊は少数で魔の森を探索した経験などない」事から危険性を把握していた為、それならせめて冒険者チームと組ませて探索を行う事を提案したそうだが、ますます意固地になってしまったらしい。

 幾らモルテン将軍であっても、彼が本来指揮するのは首都防衛の王国第一騎士団。

 出自に関係なく、実力のみが要求される王国の最精鋭であり、近衛騎士団と共に王都を護る要だが、調査部隊や斥候部隊を纏めるのは正規軍としての第一から第六とはまた別、通称第七騎士団。彼の指揮権が及ばない部隊を抑える事は出来なかった。それが出来るのは王だけだ。

 

 「案の定、このありさまという訳じゃわい」


 五名が俯いている所を見ると、連中は壊滅した部隊の生き残りか。

 そして、モルテン将軍は「どうせ他の部隊も似たり寄ったり」と判断しているようだ。ま、確かに既に複数の部隊が壊滅してるのに、他の部隊は上手くやれてると考えられる訳もないだろう。もしかしたら、冒険者と連携したりして生き残ってるパーティがいるかもしれないが、それは例外だ。


 「という訳で申し訳ないんじゃが……」

 「同行という事ですね……」

 「こちらの指示には従って頂きますよ?」

 「無論じゃ。従わん時は簀巻きにして置いていく」


 平然としている三人に対して、他の五人はびくりと一瞬体を震わせて「すいません!よろしくお願いします!」と頭を下げて来た。

 ……これは本気でやると判断したな。

 まあ、モルテン将軍ならやるだろうけど。


前書きの通り、明日は午前中に病院に行く予定があるのでお休みします

ですので、次回は10月1日投稿になります

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