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19話:魔獣との戦い終えて

段々ストックが……

 「疲れたぜ」

 「本当だよねえ」


 遺跡の一つ、比較的形を残す建造物でその夜は一泊した。

 この遺跡に巣くっていた魔獣の群れを追い払った事で、とりあえずの安全は確保出来たはずだ。

 もちろん、俺達がいなくなれば、その内戻って来るかもしれないが、今晩いきなり襲撃かけてくる可能性は低い。


 群れで生息する魔獣は危険度が一気に跳ね上がる。

 単純に複数の魔獣が連携を取って襲ってくるというだけでも危険度が高いのに、魔獣が魔獣たる所以、魔法を使う獣であるという事がそこに拍車をかける。

 人もまた、普人や森人、巨人を問わず親と子供の魔法適正が異なるという事は普通にある。例えば、攻撃術師と強化術師の夫妻の子供が付与術師、といった具合にだ。そしてそれは怖ろしい事に魔獣にもまた適用される。

 単独の魔獣であっても「この魔獣なら、こういう魔法を使ってくるはずだから」という鉄則が存在しない。

 この魔獣が強化の魔法を使ってくると分かっているならそういう対応を取ればいいし、攻撃魔術を使ってくるというなら接近戦を挑めばいい。

 しかし、俺がこの世界に来て初めて出会った鹿の魔獣であっても攻撃魔法を使ってくる魔獣もいれば、転移魔法を使う魔獣もまた存在する。これだけでも厄介な話だが、更に厄介になるのが群れをつくる魔獣達だ。まるで人がやるように、強化を使う個体が前衛を張り、攻撃魔法を使う個体が後衛を張る。転移魔法を使う個体が前衛を突然移動させる。

 そんな連携を取られれば、一気に危険度は増す。

 お陰で、今回無傷だったのはアシュタールぐらい。

 前に出ていたカイラ、ベルクトは言うに及ばず、凱嶮もまた飛来した攻撃魔法のせいで怪我をした。

 攻撃術師という奴が予想以上に危険な立場にあったのは初めて冒険者と共に冒険に出た時に感じた驚きだ。何せ、攻撃術師という奴は治癒術師の結界みたいな明確な防御手段がない。つまり、相手が攻撃魔法を使ってくる相手であった場合、自分の攻撃魔法で迎撃するしかない。

 正に攻撃一辺倒。

 いや、正確には防御に使えるような魔法がない訳じゃない。

 例えば、水を周囲に張り巡らせる事で相手からの攻撃を打ち消す、といった具合にだ。ただし、そうしている間は他の魔法が使えないので味方の支援が出来ない訳だが。

 治癒術師と組めば、治癒術師が結界という防御を行う事で大分楽になるので普段はそうしているのだけど、今回のように前衛が怪我をするとどうしてもこちらが前に出ざるをえなくなる。と、同時にその間は結界から攻撃術師が出てしまう事になるから一言断りを入れるのは必須だ。

 今回もちゃんと断りを入れていた訳だが、一瞬の隙を突かれて風の攻撃魔法によって凱嶮さんは腕を切り落とされた。

 風の厄介な所は視認が極めて困難な所とその速度。

 魔法の気配自体は感じ取れるから完全な奇襲という訳ではないが、気付いた時には魔法が飛来した後という状態に風相手では陥りやすい。

 

 「しかし、治癒術師がいて助かったよ。魔の森の奥に入り込んだ冒険者の生還率が低いのも納得だな」

 「まったくだぜ」

 「そう言ってもらえるとありがたい」


 アシュタールの言葉にベルクトが同調し、カイラと凱嶮も頷く。

 自慢じゃないが理解は出来る。

 もし、これがポーションしかここになかったなら、彼らはここから決死の覚悟での撤退に移っていたはずだ。

 カイラとベルクト、凱嶮のいずれもが深手を負い、今回は俺が回復魔法を使った事で途中で戦線復帰出来たが、俺がいなかったら誰かが戦線離脱に追い込まれていた可能性もある。そうなれば、誰か死亡していた可能性だってある。

 最悪、アシュタールが脱出した以外は全滅、って可能性だってあった。

 それを冒険者は誰もが理解している。

 だからこそ、数少ない冒険に出ようとする治癒術師がいると取り合いになる。駆け出しであっても熟練の冒険者が守り育てるからと引き抜きをかける事だって珍しくない。むしろ熟練の冒険者だからこそ、治癒術師という存在の重要性を理解し、確保に必死になる訳だ。

 そして、今回魔の森の奥深くに入り込んだ事で群れで襲撃する魔獣という相手に出くわした事で彼らも魔獣の脅威と治癒術師の有難味を改めて実感したようだった。

 

 「ほんと、アシュタールが伝手を使ってでも治癒術師を確保してくれて助かったよね!」

 

 カイラもその恩恵を被った立場だからか食事の支度をしながら嬉しそうに言った。

 食事の材料は本日は仕留めた魔獣の肉を中心としている。

 魔獣の肉は総じて美味い。通常、肉食の獣の肉という奴は臭みが強かったり、筋張っていたりで美味くない物が多いのだがどういう訳か魔法を使う魔獣の肉は拙いという話を聞いた事がない。


 『魔獣が人を襲うのって同じく魔法を使う俺らの肉も美味いって思われてるからじゃないのか?』


 なんて話が冗談抜きで言われるぐらいだ。

 まあ、仕留めた魔獣の肉が喰えるならその分持ってきた食材の消費が減る。それ自体は有難い話だ。昼はいちいち料理している時間がないから作り置きの飯で済ませるが、野営する晩ぐらいは温かい飯が食いたい。

 なお、調理担当はアシュタールとカイラ。

 一応全員が調理できるし、俺だって簡単な調理ぐらい出来る。家では奥さんの手伝いぐらい余裕がある時はやってたし、男連中だってこういう時に全く料理が出来ませんなんて事を言う奴はまずいない。中にはとにかくメシマズな奴がいて、他の奴らが調理させないなんて奴もいるって話だが……。

 今回のうちの場合は、単純に飯が美味いのがアシュタールとカイラの女性二人組だからだ。どうせ喰うなら美味い飯がいい。


 「よし、こちらは出来たぞ」

 「こっちも出来た!!」


 本日の晩御飯。

 オオカミ系魔獣肉の生姜焼き、米。味噌汁。

 和食を持ち込んだ先人に感謝を、いや本当に……。 

腰痛や肩こり一発で治る薬とか出来ないものかなあ……

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