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スケルトンはガチャスキルで強くなる  作者: 一時二滴
第二章 壊れたる者
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前世の記憶

「あ……」


 尻もちをついた情けない自分の姿に羞恥心を覚え、どうにか立ち上がろうと手足に力を入れる。しかし力をうまく伝えることが出来ず、腰が少し浮かぶだけですぐ地面へと吸い寄せられる。

 小さな衝撃に「いてっ!」と情けない声を漏らし、乾いた声で自身の身体を嗤った。


「ハハッ、やっぱり限界か」


 これじゃあ折角シズクが起きたのに戦力になれないな。


「無理しないでください!」


 その滑稽な姿を見たシズクは声を張り上げながら心配そうな顔つきで近寄り、俺の腕をつかんで自身の肩に乗せた。


「悪いな」

「いえ。それに今は何故か動いていませんがいつ動くかわかりません。とりあえずこの場を離れましょう」


 そう言ってシズクが地面を力強く踏み込むと、白装束の化け物から距離を取る。

 俺たちが移動しているというのに依然として動く様子を見せない。さっきまでの行動が嘘のように静かだ。

 恐らく俺が原因ではない。他に原因があるとすれば……。


「シズク、気を失っている時なんかしたのか?」

「気を失っている時ですか?それなら……」


 シズクは奴と一定の距離を取ると俺をその場に下ろし、白装束の化け物を警戒しながら自身が気を失っている間の事を話した。

 恐らくだが白装束の化け物の精神に閉じ込められていた事。精神の内に渦まく感情に覚えがあった事。自身が前世で事故に遭った事。自由を奪われた事でドス黒く醜い感情に苛まれた事。そこを加布施 勝也という男に助けられた事。その後彼の死を聞き、ショックで亡くなってしまった事。以前とは別の姿でこの世界に転生されていた事。その経験から白装束の化け物も嘆いているのではないかと感じた事。何かしてあげられないかと術式解除スキルキャンセルを行使した事で今に至るまで包み隠さず話してくれた。


 話を聞く限り奴が現状動けないのは術式解除を使った影響だろう。何に作用したからこうなったのかはシズク自身もわかっていないらしいが、まあ好都合であることには変わりない。

 しかし、話の流れでシズクの過去を断片的にではあるが知ってしまった。短期間で悲惨な出来事が立て続けに起こったというのに。そして遂には命まで落としてしまったというのに立ち上がれるなんて。子供ながらこの子は強いなと思った。

 それにはシズクの語った加布施 勝也という人物の助力も多少影響しているのだろうが、俺はその人物を手放しで褒めることが出来なかった。

 何故かって?多分だが、恐らく、いや絶対、確実にこの加布施 勝也という人物は……。


 俺だからだ(・・・・・)


 シズクの話を聞いたその瞬間、俺の頭に前世の記憶が一気に叩きこまれた。その記憶は私生活や趣味、学生時代に至るまで見てきた聞いてきた事をすべて一人称で映していた。記憶の隅から隅まで。プライベートなどに一切の靄なく蘇った。

 一人称の時点でこれは俺が加布施 勝也自身であった事の証明に他ならない。

 正直、自分自身の事を素直に褒めるのは小っ恥ずかしかった。しかし、シズクには悪いがこの件に関してはまた後で触れるとしよう。今その事実を伝えたり考えたりするのは、二人にとって雑念となる。そんな重荷を背負いながら倒せる相手ではないだろうから、今は留めておくが吉。


 しっかし、こんな話をしている間でも白装束の化け物は動かないな。

 あぁ勘違いしないでほしい。俺たちはこの隙だらけの状況でただ会話して無駄にしていた訳ではない。

 確かに敵が動きを見せないこの状況はシズクの千撃を放つチャンスと言える。しかし、何故動かないかの要因を俺たちは正確に測りかねている為、もしかしたら攻撃した瞬間、なんかしらのカウンターを喰らうかもしれない。

 今の俺は自分で立ち上がる力すらない。つまり、そんな状況に陥った場合シズクをカバーすることが叶わないのだ。勿論危険はシズクだけではない。シズクが離れた瞬間、弱った俺を攻撃してくる可能性だって大いにある。


 現状を掴めない以上、危険を冒すよりも二対一の状況を作り直した方が安全策となるのではないかと俺たち二人は判断した。

 だから俺はシズクがアイテムバッグに常備していたからMPとHPを回復するポーションを貰い、回復に専念している。

 一本一本こぼさず飲み干し、全て飲み終えた時にはHPもMPも全回復した。身体の疲労も朧気だった視界も今はもう嘘のように吹き飛んだ。

 手をグーパーと握って開くを数度繰り返し、動きに問題ない事を確認するとシズクに伝える。


「もう大丈夫そうだ。いける」

「わかりました。じゃあまず私から仕掛けます。何かあったらお願いします」

「了解」


 奴はまだ動かない。シズクの千撃を繰り出すチャンスは未だ継続中という事だ。案外このまま終わってしまうんじゃなかろうか。


「ふぅぅ……」


 シズクは白装束の化け物の足元までたどり着くと無防備にも敵前で瞳を閉じ、鞘に納めた剣を強く握りしめ、腰を落として小さな息を吐く。

 そして、燃え上がるような深紅の瞳を開眼させると勢いよく周りの空気を吸い込み、スキルを叫ぶ。


「千撃“七連”!!!」



 記憶の件をあっさり流しまして、主人公の名前発覚です。

 まあ、シズクの過去編でなんとなくわかっていたとは思いますが……。

 名前の由来

 カプセルガチャ

 ↓

 カプセ ガチヤ

 ↓

 加布施かふせ 勝也しょうやです。

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