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スケルトンはガチャスキルで強くなる  作者: 一時二滴
第二章 壊れたる者
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シズクの過去①

今話が短すぎると懸念していたので話を少し長くして更新し直しました。

序盤は前回の更新と相違ありませんが、中盤以降は新たな話が付け加えられています。

分かりやすいように●●●を前回との間に挟んでいます。

 術式解除は自動的に発動するスキルではない。

 対象に透明な層を対象に纏わせ、現在対象に掛かっているスキルまたは以降に掛かる他人のスキル効果を消すアクティブスキル。

 私、シズクは白装束の化け物の攻撃で一度層を剥がされ、その後貼り忘れてしまった。

 だから、白装束の化け物のスキル効果を何の抵抗もできずに受けてしまった。


 鈴の音が鳴った時、私の視界は暗転した。光を奪われ、音を拾えなくなり、手足の感覚も消え去った。

 何もできない。何も感じない。

 恐怖が私の心を支配した。それに耐えきれず、叫びをあげた。

 いや、叫べたのかわからない。口を動かした感触は無いし、鼓膜を揺らす衝撃も来ない。


 そんな時、プツリと何かが切れる音がした。

 何かと分離した感覚が訪れる。何かは分からない。形容しがたい感覚だった。

 すると世界は少しだけ光を取り戻す。ただ、それでもまだ暗い。

 辺りに白装束の化け物やスケさんは見当たらない。平地でもない。近くに大樹林も存在しない。

 ただ薄暗いだけの空間。それ以外何もなかった。


 光を取り戻したけど声は出ない。手も動かせず、出来るのはただ思考することのみ―――と思っていたけど声が聞こえた。

 ボソボソと何を言っているのかよく聞き取れなかった。だけど声が聞こえているのは確かだった。

 より正確に聞き取ろうと身体を音源まで寄せたいけど案の定動かない。


 声は時間経過とともに増えていく。一つ、二つ、三つと。

 四方八方から流れる音同士が重なり合う。

 重なれば重なるほど声が明確になっていく。

 声音はすべて違う。しかし、言葉はすべて同じだった。


 カエセ!!!カエセ!!!カエセ!!!


 耳のつんざくその声たちは狂ったように同じ言葉を放ち続ける。

 頭がおかしくなる。悪夢のようだ。今すぐ耳を塞ぎたい。しかし手は微動だにしない。

 ただ耐えるしかなかった。

 場を支配するカエセという轟音を。


 気が狂いそう。もうやめてほしい。


 私がそう願っている時、ふと声すべてに感情が乗っていることに気付いた。

 ただ機械的に繰り返している声ではない。何かを訴えかけるような、そんな声。

 悲鳴に近い。幾ばくの悲しみという感情を声に乗せ、必死に嘆いているように私は感じた。

 以前に、これと同じような声を私は聞き覚えがあった。


 それは、私が前世の時の話だ。


 ●●●


 私はかつて悠々自適に世を過ごすごく一般的な高校生だった。

 そこそこの学校に通い、授業もサボらずちゃんと受ける。休み時間では友達と楽しく駄弁って、放課後には買い物やテーマパークに行ったりもした。

 両親から貰えるお小遣いのお陰でアルバイトをする必要もなく、羽が生えたように軽いこの身の上で自由に世の中を謳歌した。

 ただ楽しかった。変わらない日常が、拘束されることのない状況が。


 私はこれを当たり前だと感じていた。明日も変わらず自由に飛べると、何事もなく明日は訪れると。

 だけど、世の中は残酷だった。私の自由な翼は突如として捥がれることになる。


 キキィィィィィィッッッ!!!!


 信号によって横断歩道の前で足を止められた私の前で車が急に曲がった。

 車線変更ではない。明らかに歩道であるにも関わらずその車は進路を変えたのだ。

 けたたましいブレーキ音が鳴り響く。しかし車は止まらない。


 容赦なく放たれるヘッドライト。目を焦がすほどに眩しいその光が私に集中する。

 視界は光に支配された。明るすぎて何も見えない。太陽を見続けた感覚に似ている。

 不意なことで驚きのあまり身体は硬直し、全く動かなかった。


 そして、衝撃が訪れる。抵抗する間もなく空中へ投げ出され、まもやく地上に叩き付けられた。

 内臓を押し潰すような圧迫感。骨が砕け散ったような喪失感。破れた肺に血が流れ込んだことで、地上なのに溺れてうまく呼吸が出来ない。

 身体は灼熱の如く熱い。なのに時折凍えるような寒気が襲う。中和されることはない。


 そして徐々に視界が取り戻されていく。

 美しい程綺麗で汚れのない鮮やかな赤色が辺り一帯に広がっていた。

 すぐに分かった。私の血だ。


 それは血だまりとなって、今も尚その嵩を増し続けている。

 寒気が増していく。血を垂れ流す腹部のみが熱を保ち、それ以外は血を抜かれ、体温が消え失せていく。


「たす……えて……」


 寒さで震える口元を吐血という妨害を受けながらなんとか動かし、言葉を作って助けを乞う。

 だけど周りは手に持ったスマホからシャッター音を鳴らすだけ。指先以外を動かす気配はない。


 もう……だめ……。


 私の視界は暗くなり、耳も遠のいていく。

 強烈な睡魔が訪れた。抵抗しようもない程強烈なもの。

 私は諦めの念を抱きながら睡魔に身を預けた。

 掠れていく意識の最中、最後に聞いたのは聞き覚えのあるサイレンの音だった。

続きを書けたので明日更新します。

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