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スケルトンはガチャスキルで強くなる  作者: 一時二滴
第二章 壊れたる者
83/99

みつけた

 俺たちは最奥へ行くと壁一面に刻まれた石碑を映像機器で写し撮った。

 その後は普通に入り口に向かった。

 道中、土のゴーレムが数多く表れたが、それ以外特に問題なく古の遺跡を脱出した。


「帰りは呆気なかったですね」

「まぁ、ボス倒した後だし仕方ない」


 ダンジョンに物足りなさを感じたのかシズクが声を漏らす。

 確かにボス以外は大したことないダンジョンだった。

 そのボスだってシズクは難なく倒してたし、俺だって恐らく竜尾裂断で倒すことが出来た。

 物足りなさを感じるのも仕方ないのかもしれない。


 そして俺たちは古の遺跡の前で待機していた馬車に乗り込んだ。

 (シズクが)前金を弾んだ為、俺たちが帰ってくるまで古の遺跡の前で待っててくれたのだ。

 古の遺跡から帰還するまで一時間も経っていない。

 朝方に出発したため、現在お昼少し過ぎた頃。

 今から街に向かえば夜には着けるかもしれない。

 時間にして半日かかるという話だったが実際はそれより少し早く着く。

 朝方に出て昼過ぎに着けたのが良い証拠だ。


 俺たちが乗り込んだのを確認すると業者は馬を走らせた。

 馬は叩かれると嬉しそうに鳴き、足早に動き出す。


「行く時よりちょっと足が速くないですか?」

「あぁ。こいつ、向かうときはダラダラ歩くのに帰るとなりゃ速度を上げるんだよ。早く帰りたいんだろうよ」

「へぇ」


 会社みたいな感じか。行くときは億劫だけど帰るときは清々しいみたいな。

 だがこれはありがたい。帰還は夜になるだろうと思ってたけどこの速さならもしかしたら夕方にでも着けるかもしれない。


 街に戻るまでの間はシズクと談笑を交わした。

 朝と違い今回シズクは起きていた。退屈せずに済みそうだ。


 ●●●


 あれから数時間が経過し、だんだんと街が見えてきた。

 すでに大樹林を抜け、あとは開けた平地をただ進むのみである。

 それまでの間、シズクとは数多くの話題で盛り上がったが一つ衝撃的なものがあった。


 それは、三人目の転生者がギルドに所属しているということだった。


 三人目の冒険者の名前は窓和瀬(まどわせ) 太郎たろうといってシズクとほぼ同時期に転生してきた冒険者のようだ。因みにシズクの名前は不動(ふどう) しずくというらしい。

 二人とも俺と違って前世の記憶を持って転生し、自分の前世で生涯を終えた時の年齢と同年代の肉体に魂が宿ったようだ。だから、肉体年齢は重ねているが異世界歴は二人とも短い。

 魔石を売るためにギルドに寄ったのはタロウくんに俺を合わせるためという目的もあったらしいが、タロウくんはギルドの依頼で、とあるダンジョンの調査に向かっているため不在だったらしい。


 シズク曰く彼の印象は野球大好きマンのようだ。

 前世では野球をやっていたようだがこの異世界には野球は存在しない。かわいそうに。

 もしかしたらタロウくんは野球選手だったのかもしれない。そう考えると余計に……。


「あ、そういえばスケさんのガチャスキルって具現化できるんですよね?」

「うん。見る?」

「はい!」


 オモチャをねだる子供の様な視線で見つめてくるシズク。

 俺はシズクの要望通りガチャスキルを馬車内で具現化した。

 現れるのは赤青黄色と信号機の様な色をした三つのガチャガチャ。

 それを見て何か閃いたのかシズクは頭に電球を浮かべ、そわそわした表情で俺にとある質問をした。


「……あ!!スケさん、生きてる人って皆ポイント持っているんですよね?」

「そうだね。人に限らず生物みんな持ってる。その生物を殺した生物にポイントが譲渡される仕組みらしいよ」

「じゃあ私もポイント持っているってことですよね。もしかして私、ガチャ引けたりしないですかね?」


 俺の身体に稲妻の様な衝撃が走った。

 それは盲点だった。確かにガチャスキルはポイントがあればレバーを回せる。

 しかしそれは俺に限った話なのか?いや、そんなことは明記されていなかった筈。

 なら、ガチャスキルを持っていないシズクもガチャを引けるんじゃないか?

 鑑定スキルを持っていないからシズクがどれくらいポイントを持っているか知らないが少なくとも100はゆうに超えているだろう。

 これは試してみる価値がありそうだ。


「わからない。試してみれば?」

「いいんですか!?」

「うん。俺も気になるところだしね」


 震える手でシズクが青色のガチャガチャに手を伸ばす。

 青色はスキルだ。シズクはレベルがありまだ成長する。アイテムはどこでも手に入るし消去法でスキルになったのだろう。

 シズクのか弱い右手がレバーを掴んだ。

 そして、力強くレバーを捻る。









 ガチャガチャが回った。









 あ、これは文字通り回ったって意味だ。ガチャガチャ自体が・・・・・・・・・

 シズクの力によって青色のガチャガチャが一回転する。

 レバーは一ミリとして動いていなかった。


「え~」


 シズクは心底残念そうな表情で落胆していた。

 正直俺もショックだ。他の人が引けるとなればガチャスキルの可能性が広がったというのに。

 スキルは個人で完結する。他人は干渉できないってことがよくわかった。


「ごめんね」

「スケさんが謝る事じゃないですよ。私が勝手に期待しちゃっただけですし」


 見るからに拗ねていた。

 良い思い付きだったんだが、失敗に終わったのが相当ショックだったんだろう。

 慰めるにしてもどうすればいいのやら。


「う~ん。じゃあ、引いてるところだけでも見る?」

「……はい」


 シズクの本来の目的はガチャを見る事だ。

 その後に思い付きがあったから落ち込んでいただけで、状況に最初に戻せばいいんじゃないかと俺は思い実行するとシズクは少し機嫌を戻した。

 良かった。


 だが、引くと言ってもどれほどポイントがたまっているだろう?古の遺跡では土のゴーレム以外ほとんどシズクが倒している。

 もしかしたら100ポイントすらないかもしれない。

 もしなければシズクは更に拗ねてしまう。

 どうか、ポイントあってくれ!!


 願望と不安を抱きながらステータス画面を開くとポイントの欄には562と記されていた。

 あれ?案外多い。なんでだ?


『ボスのポイントはシズクに譲渡されましたが、重圧迫で間接的に数多くの鉄のゴーレムを轢き殺したあなたに多数のポイントが与えられました。加えて、道中の土のゴーレムのポイントを合算すれば妥当かと』


 あ~。確かにあったね。ボスにばかり焦点置いてたから気付かなかった。安心したわ。


「引かないんですか?」

「あぁ、ごめん。今引くよ」


 手を止めていた俺を疑問に思ったシズクが尋ねた。

 そういえばシズクはガチャ引くのを待てるんだった。

 今回引くガチャガチャは一応決まっている。

 それはスキルだ。

 ステータスは外れ無しでおいしいが今回の一件でスキルの株がぐんと上がっている。

 運が良かっただけかもしれんが、竜尾裂断と重圧迫。それに影撃ちはかなり重宝するスキルだった。

 これらのスキルが手に入るなら多少外れも臆さず引けるというもの。


 俺はひっくり返った青いガチャガチャを立て直すとそのレバーに手をかけ捻った。

 力を入れずともスムーズにガチャは回った。

 五回転回している間にカプセルがガチャガチャから飛び出した。

 それをシズクは優しい手つきで手に取った。


「これがガチャスキルの景品ですか。中身が見えませんね」

「中身はアイテムじゃない限り白い靄だね。開けられそう?」

「んんん!!!……ハァハァ、無理そうです」

「やっぱりだめか」


 力いっぱいカプセルを左右に捻ったのか顔が真っ赤だ。

 ガチャスキルの景品も他人が開けられないならどうあがいても他の人がガチャスキルに関与することは出来ないだろう。

 俺はシズクの持ったカプセルを渡してもらい、軽い力で上下に開いた。

 中から白い靄が飛び出し俺の身体の中に吸い込まれていく。他の四つも同じように吸収した。


『スキル《剣牢結界》を獲得しました』

『スキル《料理》を獲得しました』

『スキル《裁縫》を獲得しました』

『スキル《掃除》を獲得しました』

『スキル《洗濯》を獲得しました』


 ……家事系多くね?これちゃんと混ざってる?

 いや外れ覚悟で引いたけどこんな爆死の仕方は想定外というか、なんというか……。


「もうスキルガチャ信じねぇ!!」

「ひゃぁ!?」


 急な叫び声にシズクが小さな悲鳴を上げた。

 やべ。


「ごめん」

「あ、いえ。どんなもの引かれたんですか?」

「あ~、剣牢結界ってスキルと他は家事系だね。戦闘で実用的なのは多分、剣牢結界だけで家事系は家事がうまくなるとかそんなもんだと思う」


 だよな叡智?


『はい』

「そ、そんなこともありますよ。それに剣牢結界ってスキルは名前から凄そうですし期待できますよ」


 シズクが必至な形相で慰めてくる。そんなに俺顔に出てたのか?

 まあ、シズクの言う通り剣牢結界が凄いって可能性もあるし、叡智教えてく……???


 突如、辺りが真っ暗になった。

 外は夕方のはずで日もまだ落ち切っていない。よくみれば馬車周辺にだけ黒い影が差していたことに気付く。

 シズクは過呼吸気味に呼吸を荒げている。業者もまたそうだ。

 俺は呼吸する必要が無いから無事であるが、二人の様子から現状は明らかに変だった。


 唯一無事な俺は馬車の布を捲り、影の差す方向に目を向けた。

 そこには右手に鈴のついた杖を携えた何者かが佇んでいた。

 一見して把握できたのは、その者には皮膚がほとんどなく所々裂けた白装束で身を包んだ化け物という事。


「みつ……けた……」


 白装束の化け物そう呟くと不気味に口角を歪めた。

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