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スケルトンはガチャスキルで強くなる  作者: 一時二滴
第二章 壊れたる者
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ギルド

 まさか再開するとは。

 いや、当然か。ここは冒険者のギルドだしダンジョンに潜ってた時点で何となく察してはいた。


 ロッド達はダンジョンでとは見違い、傷一つない姿となっていた。片腕を無くしていたルークの腕も生えている。この世界の再生技術は街並みに比べて結構発達しているのかもしれない。魔法やスキルによるものかもしれないけど。

 だが、少し気になるところもある。それはレイラが未だにフードを深く被っていることだ。

 ダンジョンで出会った際の彼女の顔はひどいありさまだったが、それは今も変わらなかった。

 彼らには彼らの事情があるのだろうか?しかし聞くにしては憚れる。心の奥底に仕舞っておこう。


 それは置いておいて、邂逅でのコミュニケーションは失敗に終わり、傷は付けていないものの彼らに暴力を働いてしまったことは間違いない。

 彼らが勘違いして攻撃を働いたならいざ知らず、あれは俺が勘違いさせたといっても過言じゃない。

 彼らに謝るべきじゃなかろうか?


 彼らはランタンに火を灯していた事から暗視に強いわけではないだろう。部屋一帯を照らす光源ではなかった以上、俺の姿を正確に把握するのは難しかったと思われる。

 加えて、俺は仮面をかぶっていた。顔は視認されていない。

 声だってファイアと唱えた以外聞かれていない。俺の声はあまり特徴的とは言えないから覚えていられても似ているだけじゃないかと通せてしまう。


 となれば俺はやりたければ知らぬ存ぜぬを通せるという訳だ。

 しかし、それは人としてどうなのだろうか?迷惑をかけて知らんぷりとはあまりに不義理ではないだろうか。


 俺はその場を立ち上がり、ロッド達のいる下へと歩みを進める。


 不義理。確かにそうだが、恐らく俺が謝りに行くのは不義理(それ)のためよりも罪悪感という方が大きい。

 迷惑をかけた相手は知らないこととはいえ、どの面下げて彼らと同じ世界に住もうというのか。彼らと話す機会がある度、この事実を思い出し、心を殴られる感覚に襲われそうだ。

 それを考えると、謝った方が最善だと俺は思ってしまった。


「すみません、あなた達はロッドさん達ですよね?」

「ん?あぁ、そうだけど、君は?」


 あ、そういえば俺名前無いや。どうしよう。

 謝る相手に偽名を使うのもなんだし、ここは……。


「名乗るほどの者じゃありません。それで、貴方たちに謝りたいことが」

「謝りたいこと?」


 彼らにとって今の俺は全く面識のない冒険者の一人にしか見えない。

 迷惑をかけられた記憶のないロッド達は全員頭を傾げ、目をパチクリと瞬かせている。


「はい。死の洞窟であなた達に危害を加えてしまったことを謝りたいんです。この服に見覚えはありませんか」


 俺はそう言いながらユービシンに貰った漆黒のローブを彼らに見せつけた。前のエンペラーシリーズと細部のデザインが違うが大体は同じだから彼らは気にしないだろう。

 それに危害を加えた事実を伝えたのだ。服装が多少記憶と違っても記憶違いで済まされるはずだ。

 ローブを見たことで俺の謝罪理由が伝わったのだろう。彼らの表情が変わっていく。

 それを最後まで見届ける前に俺は頭を下げた。


「ごめんなさ……」

「ごめん!!!!」


 俺の言葉がロッドによって遮られた。

 ん?なんでそっちが謝ってんだ?

 俺はゆっくりと頭を上げると、俺の代わりにロッドが頭を下げていた。


「私たちは君を魔物と勘違いして攻撃を加えてしまった!!君が去った後に考えたんだ。敗北目前の私たちを見逃したり、私たちが傷を一切負わなかったのはあの人もまた私たちと同じようなダンジョンの魔物の被害者だったんじゃないかって」

「ん!?え、ちょ……」

「声が出せなかったのも喉が潰されていたからかもしれない。魔法は声が出せない人でも詠唱できるし、戦闘中に一切声を出してなかったから。それに良く辺りを調べてみれば糸の様な新鮮な燃えカスが大量に落ちていた。声を出せないなりに交渉に応じようと光源を増やそうとしたのかも入れない。あのダンジョンの魔物なら暗闇に慣れている筈で光源はいらないはずだし。しかも君はソロだった。周りに仲間がいない以上、突然入ってきた私たちを一時的でも警戒するのは当たり前だ。他にも背後からの襲撃に備えた骨の壁とか色々」


 ロッドの言葉は止まらない。彼の仲間もその発言に賛同している様で静かにうなずいていた。

 いやまって、謝りたいのはこっち……。


「君は私たちを外傷を気遣って君自身が作り上げた拠点を譲り渡してくれた。それなのに私たちは……本当にごめん!!謝って許されないかもしれない。だけど、どうかこの謝罪は受け取ってほしい!!」

「え、あ……」


 ロッド達が大声を上げた事でギルドで騒ぐ冒険者の喧騒は止み、視線のほとんどは俺たちに注がれている。

 もし俺がここで実はあんたの勘違いでしたと言ったとしよう。

 するとどうなる?

 俺は彼らにわざと危害を加えるように仕向けた加害者。そしてロッド達はその行動を助けられたと勘違いした大間抜けというレッテルを張られるのではないだろうか。


 ここは謝罪を後日に先送りして彼らの謝罪を受け入れるのが得策だろう。


「あ、いや。ダイジョウブダヨ」

「許してくれるのか!!?」

「ウ、ウン」

「ありがとう!!!」


 ロッドは手を俺の前に差し出した。握手しようのポーズだ。

 俺は渋々その手を握り返した。


「「「うぉおおおおお!!」」」


 さっきまで黙って見守っていた周りの冒険者が喧騒を取り戻し、俺を称賛する。

 当初よりも数倍は煩く、むさ苦しい声がギルド内で反響する。

 冒険者は俺とロッド達を囲い込んだ。


「よくやるじゃねぇかお前!!」

「自分を顧みず他人を助けるたぁすげぇじゃねぇかお前!!」


 冒険者は盛大に騒ぎ出し、褒め称える。

 やめてくれ。俺は褒められるようなことは何もしていない。骨の壁だって偶然だ。俺じゃない!!

 だから俺を褒めるのをやめろ!!心が痛い!!

 おいお前、馴れ馴れしく肩くむんじゃねぇ!!肩より下が骨だってバレるだろうが!!


 俺は的外れの称賛を心を痛めながら引き受けるのだった。


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