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スケルトンはガチャスキルで強くなる  作者: 一時二滴
第一章 ダンジョン攻略
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スケルトンはガチャスキルで強くなる

一章ラストです

 そこは、何もない部屋だった。いや、正確に言えば何かはある。泉の様なものが地面にあったり、書類の様なものなどが散らばっているように見える。だが、それが絶対にそうだと断定することは出来ない程、視界のそれらは曖昧且つ不明瞭で、俺にはどう頑張ってもその何かを正確に知覚することは叶わなかった。だから俺にとっては何もない部屋に等しい。

 まあそんなことはとりあえず置いておくとして、魔法陣が光った瞬間にはもう既にここにいたのだが、ここはどこなのだろうか。


「やぁやぁ、ごめんね待たせて」


 思考を凝らしていると男とも女とも取れる中世的な顔立ちの人が現れた。歳は二十代前半くらいだろうか。一本たりとも傷んだ様子のない鮮やかな金髪をウルフカットに整えた人は髪を少し搔き乱しながら申し訳なさそうにそう言った。


「いや、僕の予想だともう暫くかかるもんだと思ってたのに随分早かったね」

「えっと、何のことですか?それに、貴方は?」


 何を言ってるのかわからない。状況も掴めない。

 困惑した俺の様子に金髪の人はギョッと目を丸め、数秒としないうちに納得したような顔に切り替わった。


「あ~、そういえば会うのは初めてだったね。ごめんごめん。じゃあまずは自己紹介でもしようか。僕の名前はユービシン。君を地球から異世界に転生させた神っていう存在さ」

「あ、神様か。どうも」

「急にフランクになるね君」

「この神様に礼儀を尽くす必要はないと判断しましたから」


 だってガチャの中に全く使い物にならない外れとか入れるし、最初に貰った紙の件だって忠告してもらえれば無くさなかったかもしれないし。まあ、その件に関しては無くした俺が悪いんだが、デイルが作られた責任は10対0じゃないはずだ。


「まあいいんだけどさ。そっちの方が僕にとっても話しやすいし」

「それはよかった」

「話しが脱線しかけたね。まず言わせてもらうとここは天界の神域って呼ばれる場所さ。天界にはほかにもいろいろな場所があるけど神域って場所はここだけ。君を天界から覗くためだけにわざわざ作ったのさ」


 俺を覗くためだけの場所を作るとか、もっと広範囲に使えるものを作れよ。百均とかで売ってる卵割り機みたいに限定的な場面でしか用足しされないものくらい使えないぞ。


「でね、この神域に君を呼んだのは前に手紙で使わないでおくれと頼んだ暴走スキルについてなんだ。あれはちょっとばかり危険でね、君の身体に定着する前に取り除くことにしたんだよ」


 そういうとユービシンは両掌を合わせ、サッカーボール一個分入るくらいまで掌を離していく。静かに離された手と手の間にあった空間には墨のような不定形の黒い何かが形成され、次第にそれは質量を増していく。

 拳くらいの大きさまで成長すると黒い何かは宛らブラックホールを思わせる黒い渦に変貌し、俺の身体から人魂の様なものを取り出し、吸い込んでいく。


「ごめんね、暴走だけを取り除くっていう器用な真似、僕にはできないからスキルは一旦全部取り除くよ」


 この人魂はスキルだったのか。

 三十秒とかからず俺の身体からスキルが飛び出すことが無くなり、それを見たユービシンはパンッ!!と掌を強く叩き黒い渦を消滅させた。


「よし、これで危険因子は……あれ?」

「どうした?」

「いや、取り出したはずの暴走が見当たらなくてね。……もしかしてだけど、使った?」

「あ、はい」


 その回答にユービシンは驚愕の表情を露にし、目を大きく見開いていた。


「なにしてんの!?使うなって言ったじゃん!!」

「え、いや、こっちも死にそうだったから」

「も~!!まだ受動的な発動だったら間に合ったのに能動的に発動したから君の身体に定着しちゃったじゃん!!取り除けなくなっちゃったじゃん!!てかまずなんで生きてんの?」

「生きてる?」

「暴走スキルは使うと永続的にステータス上昇を引き起こして最終的には過剰ステータスで爆散する仕様なんだ。受動的に使ってる間はある程度セーブされて自然に解除されるけど能動的ならその限りじゃない。意識もないようなものだから自ら解除できるものじゃないしね」

「あ、それは多分この破精守りの首飾りのお陰だと思う」


 そう言いながら片耳にだけ付けた紫色の結晶ピアスを見せつけた。しっかり軟骨に刺さっている。肉の仮面で顔が形成される前は耳付近の骨に直接ブッ刺していた。因みに余談だが軟骨は骨と書くのに骨じゃないらしい。フシギダネ。


「なるほどね。見た感じそれのお陰で暴走はほぼ無いようなものになっているのか。ならいいか。いや、良くないね!」

「え?」

「君に忠告を聞かなかった罰を与えるべきだと僕は思う。だから本来返す予定だったこのスキル達の返還はなし!!」

「はぁぁぁ!?」


 理不尽すぎるだろ。今までガチャを回した努力全部パーじゃないか!ステータスも下がってる今この状況でガチャ産のスキルまで取り除かれたら本当のゲームオーバーよ!?10%くらいあった生存率が0に変わっちまうよ!?


「ユービシン!!いや神様!!どうか、どうかそれだけは!!スキルを奪われちゃ俺生きていけません!!どうかご容赦を!!」


 誠心誠意、精一杯謝罪の念を露にしながら渾身の土下座を発揮する。頭を埋め込まれるまで地面に押し付け、恩情をどうにか受け取れるよう気持ちを込める。だが、そんなこと知ったこっちゃないと突き放すような口調でユービシンは言う。


「別にスキルが無くても問題ないと思うよ?何てったて君の今の姿のガシャドクロは君の国の妖怪を真似て僕がこの世界に作ったハイスペックモンスターなんだから。ガチャスキルを持たせる予定だったから素のスキルは擬骨生成しかないけどステータスは化け物じみた値にしたからさ」

「いえ、それが……そのぉ」


 俺はステータスがくそ雑魚になっている事実とその経緯をありのまま包み隠さず話した。


「ふ~ん、そういうことね」

「なのでどうか!!どうか!!」

「ま、僕も鬼じゃないしね。僕が授けたスキルのガチャとかガチャで当てたスキル、アイテムを含め四つだけ持っていけるものを選ばせてあげるよ」

「み、四つだけ?」

「そ、別に少ないなら少ないとか言ってもいいんだよ?その時はこの提案をさげてあげる」

「い、いえ!十分です十分!!どうかそれでお願いします!!」

「ハハッ、みじめだね。いいよ。時間いっぱい使って慎重に選びな」


 ユービシンは口に三日月を作りながら心底哀れそうに俺を見下し、そこらに散らかってたであろう紙を一枚拾い上げると此方に放り投げる。その後パチンと指を鳴らす。すると今まで目に見えなかった紙や泉が知覚できるようになった。

 ユービシンにからかわれ、怒りの感情が募る。だが我慢だ。ここで耐えなければこの提案はなかった事になってしまう。今は泥をすすってでも水分を取り入れたい状態なのだから甘んじて受け入れなければ。

 俺はユービシンに渡された紙に記されたアイテムやスキルを慎重に吟味していく。

 アイテム、叡智が使わなかった誘爆罠や血抜きの矢、他にも戦闘で使った手戻りの腕輪なども記載されてるが、数多くのスキル達と比較してみるとたった四枠に組み込むには物足りない。なら四枠は全部スキルになる。が、どれをいれればいいか。


「あ、因みに身体に定着した暴走はもちろんガチャスキル経由で僕が授けたものじゃない擬骨生成や投擲とか、アイテムで言えば肉の仮面やMP回復ポーションとかは取り上げてないから。それと破精守りの耳飾りは念のため持って行ってもらうよ。身に着けてなくても効果は発揮されているようだけどもしもの時を考えてね」

「わかった」

「ん~?わかった?」

「……わかり、ました」


 苦虫を嚙み潰したよう気分だ。腹立たしい。それでも耐え忍ぶんだ俺。心臓を直に握られているようなこの状況、ユービシンの気分次第で俺の人生という名の心臓は握りつぶされてしまう。

 まず、スキルに関しては汎用性を考えて叡智が第一候補に挙がる。第二候補としてはガチャだ。この2トップは欠かせない。

 叡智が居れば万事に対応できるし、ガチャがあればスキルやアイテムでの対応幅を広くすることが出来る。あんだけ頑張っても俺が自発的に手に入れられたスキルは投擲だけだからスキルを手に入れるのは難しいはずだ。そういえば投擲を覚えるのは早かったな。何か理由あるのか?まあいいや。


 そう考えると残りは二枠。運試しをいれるのもいいが、完全とは言えないがガチャスキルの劣化版のこのスキルをいれるのは少し抵抗がある。他に有用なスキルはまだまだあるはずだ。

 有用と言えば繋がる思考(シンクリンク)だ。叡智とのシナジーが良い。一万ポイントを使って出てきたこのスキルだがこの時を逃せば二度と手に入れることが無いかもしれない。だって一万だぞ?もしかしたら特別ガチャ限定のスキルかもしれん。それに有用性は実証済み。このスキルをいれない手はないと思う。


 残るは一枠だが何にするべきか。装化纏の強化倍率は凄まじい。デメリットは大きいが俺に見合う力を秘めている。だがあらゆる場面で使い道のある先見の明の未来視も捨てがたい。他にも運試しを取れば特別ガチャを低ポイントで辿り着き引きやすくなる。でも視認の瞳には鑑定や盤面把握能力が。いやいや、利便性を考えて空庫も……。

 最後の枠。そう考えると直ぐには選び難かった。どのスキルも素晴らしく、とても四つの枠じゃ物足りない。

 迷いに迷い、複数の分かれ道に立たされた時、一つだけ光り輝く道があったことに気付く。

 その道は候補に挙がっていなかった《書物記憶》というスキルだった。

 何故このスキルが?疑問を持っても誰もこたえてくれない。だが、俺自身の勘だけは告げていた。このスキルを選ぶべきだと。

 使ったのはこの部屋に飛ばされる最後の一回に限る。あの時使ってなければ完全に忘れていたとさえ思える様な地味なスキルだ。戦闘では使えない、日常でだって限られているだろう。俺がさっきユービシンを非難した限定的な場面でしか使えない商品と同じだ。

 それなのに妙にこのスキルに惹かれる。数多の強力なスキルを押しのけて自分を選べて主張する書物記憶。

 だがいいのか?直感は確かに大事だ。助けられたことだってある。それでも、優先的に選ぶべきなのか?愚かな選択なんじゃないか?

 文字通り人生を左右するであろう選択に、俺は頭を悩ませるが、決心を決めた面持ちでユービシンを見つめた。


「お、決めたようだね。《ガチャ》《叡智(改)》《繋がる思考(シンクリンク)》《書物記憶》ね。なるほど。本当にこれでいいんだね?」

「はい」

「そうかい。あともう飽きたから普通にタメ口に戻っていいよ。じゃ、付与するよ」


 俺で遊ぶなと思うがここで突っかかってタメ口解除を撤回されるとそこそこめんどくさいから大人しくしておく。

 ユービシンが指をパチンと弾くと人魂の形をした四つのスキルが俺の身体に飛び込み、力が身に宿る感覚を味わう。


「おっけー。これでスキルの付与は完了だよ。そういえば服が無いね。人間社会に行くならこれは不便だろうね。これは僕からのサービスだ」


 再び指を鳴らすと黒地をベースで作られたシューズ、パンツ、シャツ、ロングコート、ハンドグローブ、を身にまとっていた。骨の部分を全て包み隠せる辺りに気遣いを感じる。エンペラー一式とは些細な装飾が違うだけで殆ど変化はない。

 ステータスを開いてみるとHPも含め全ステータス値に100の補正がかかってる。エンペラー一式より高性能だ。ありがたい。


「それとガチャスキルについてなんだけどちょっとだけ仕様弄ったよ。今の君に適した機能を君が悩んでいる間に付け加えてあるよ」

「どんな感じに変わったんだ?」

「それは地上に行ってからのお楽しみさ。期待は裏切らないことは保証するよ」

「それは、ありがたいな」

「んじゃ、僕はこれから忙しいから君の事観察できなくなるけど、頑張って生きてくれよ?僕は君に死なれると少々困るんだ。どう困るかは内緒だけどね」

「わかった、じゃあな」


 別れを告げると俺がここに訪れた時と同じような魔法陣が足元に展開される。そして光が強まっていき、まさにもう転移するまじかになった直前にユービシンは最後の悪戯をといった感じでこう告げた。


「因みに、叡智に関しては君が希望するしない関係なく付与するつもりだったけどね。だから自由枠は実質三枠だ!」

「は?ふざけ……」


 ユービシンの計算通り、文句を言い終える前に俺は天界から地上に飛ばされるのだった。


 ●●●


「んじゃねぇ……チッ、最後まで馬鹿にしやがって」


 辺りは転移する以前の光景に戻っていた。壁あり、岩あり、骨あり、魔物ありと。


「ん?魔物?」


 俺を覆う大きな影が真上に落ちる。


「ま、まさか……」


 俺は機械ロボットの如くぎこちない動きで頭上に視線を向けた。一頭はゾンビのように肉の腐敗した、もう一頭はスケルトンのように骨だけという不気味な双頭を持つ竜が此方を見つめていた。


「ギャァァァォォォォオオオオ!!!!」

『どうやらボスがリポップしたようですね』

「わ、わかってる!!」


 だが、俺に今あるスキルは投擲、擬骨生成、叡智、ガチャ、繋がる思考(シンクリンク)、書物記憶のみ。アイテムはほとんど回収されて、武器だったドラゴンスレイヤーすらない。

 見るからに竜の様な個体のこいつならドラゴンスレイヤーの付属スキルブッ刺さったのに、なんてタイミングの悪い。

 俺はここで終わるのか?せっかくここまで来たのに?物語とかで言ったらここからじゃないの?弱くなってるところからこう、ガチャスキルで強くなる!みたいな意気ごみ入れて、さぁこのダンジョンを脱出しようとかなるもんじゃないの普通?ドラゴンさん空気読んで?

 いや、まだあきらめるには早い。俺にはまだ危機を脱出する術、ガチャがある。七百ポイントがあるんだ。七回引けば何か……。


「ギャァ?」


 その時、彗星の如く瞬いだ煌びやかな一閃が双頭の竜の首を通過し、竜が切られたと認識する間もなくその首は切り落とされた。


「すみません、何かする様子が無かったもので加勢させていただきました」


 その現象を成したであろう深紅の長い赤髪とそれと同色の瞳を持つ少女が肉片と血に張り付いた剣を振り、弧を描きながらそれらを落とすと、此方を見つめながら静かに告げた。

 あれ?この子どこかで見たような


続く……かも?

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