神様、疑われる
今回主人公出演しません。
それと、デイルの保有ポイントが少なすぎたので702に修正しました。
スケルトンが地面を崩壊させ、デイルの下へとたどり着く少し前の事。
その頃天界では大きな円型のテーブルを中心に数多くの椅子が配置され、そこには神々が座していた。
これは定期会議。神々が定期的に行う、世界の異変について各々の見解を語り合う場である。
「ふむ、皆の意見はよくわかったが有益な情報は今回もなさそうじゃな。本日はもう解散としようかの」
そう締めくくると、白く長い立派な髭を生やした老人はパンッと手を二回叩く。それを合図に神々が席を立ち、各自の持ち場へと戻っていく。
スケルトンを地球から呼び出した神。名をユービシンという者も例にもれずその場を後にする。
「ん~、あぁつまんないな。こんなくだらない会議してるよりアレを見てた方がよっぽど楽しい」
独り言を静かにこぼすユービシンは気だるけそうに伸びをする。
彼は退屈していた。天界で行うことはどれも面白味が無く、ただ世界が狂わないよう調整、管理するだけである。何か異変があればすぐに元に戻すよう調整する。想定通りの未来が訪れるよう管理する。変化や予想外が全くない退屈な作業を神として生まれてから永遠とこなしている。
最初こそ新鮮であったが、世界が誕生して暫く経った今となっては新鮮味など一かけらもなかった。ストレスすら感じていた。
他の神々が現状に不満を持っていたのなら署名活動の様に人数を集め、意見することもできただろうが残念ながら不満はユービシンしか抱いていなかった。
ユービシンは現状に嘆息し、足早にスケルトンを覗ける泉へと足を運ぶ。
(ん?尾行されてる?)
ふと怪しい影がユービシンのつけていることに気付く。
「誰だい?」
ユービシンは自身をつける犯人の顔を拝んでやろうと瞬時に振り返る。
振り返るとそこにはくすんだ黒髪に色素の落ちた白髪を少し生やした壮年の男が佇んでいた。
「君は確か、精神の神マインだったかな?」
「上司の名前くらい覚えていて欲しいもんだ」
「別に構わないだろ。関わる事なんてほとんどないんだし、上司って言ったって僕らと立場はほとんど変わらない。それより何の用?」
「いやなに、君が持ち場とは別方向に歩いていくのが見えてね。どこに行くのか気になってしまったから着いて行ったまでだ」
マインの言う通りユービシンは自身の持ち場とは別方向に向かっていた。
理由は習慣となっているスケルトンの観察のためである。退屈しのぎという理由もあるが、何者かの手により暴走が入れられたのを危惧して今いるダンジョンの最終階層をクリアしたら天界に呼び、ガチャスキルを修正する目的もある。
もし可能ならば今すぐ呼びたいのだが、一瞬でも呼んで気配が消えた場合、戻した瞬間デイルによって逃げたとみなされ殺されてしまうかもしれない。全く面倒なことをとユービシンは思っていた。
話を戻して、世界間で魂を移動させるのは神々の許可を取らなければならず、それなのにユービシンは許可を取っていない。許可を取ろうとしたところで遊ぶためなどというくだらない理由で魂の移動許可が下りるとも思えなかったユービシンは秘密裏に事を起こしていた。
だが、事が知ればどんな理由を取り繕うとマインは他の神々にバラすだろう。
因みに地上に神が干渉しすぎれば世界に異変が起き、秘密がバレてしまう可能性が高まるために手紙で影響を少なめに抑えている。呼び出すことも一度限りが限界。二度行えば確実にばれる事だろう。
「どこに行ったって僕の勝手じゃないか」
「まあ確かにな。だがそれを言うなら私が君に着いて行くことだって勝手だと思うがね」
「僕にだって知られたくないことの一つや二つだってあるさ。プライバシーってやつだ。着いてこないでくれる?」
ついてこられては困る。それを顔に出して変に勘繰られないようポーカーフェイスで応じながら返答する。
ユービシンが神々に隠してる秘密は魂移動だけではない。万が一スケルトンの事がバレれば隠しているすべてがなし崩しに露見してしまう。
「なるほど。そう言われると私にはどうしようもないね」
「ああそうだ。さっさと帰ってくれる?君は僕よりも多忙なはずだろう」
「そうだね」
そういうとマインは踵を返し、去っていく。しかし、すぐに立ち止まって首だけ振り向きユービシンに尋ねた。
「あ、そういえば、ユービシン。君、ガチャスキルの中身弄ってるそうだが、あれはもう地上に不要なスキルだよ」
「……わかってるよ。中身に何が入ってるか確認しただけさ。ただ常務をこなすだけじゃつまらないからね」
「そうかい?あぁ、それとあのスキルの行方知らないかい?」
「???知るわけないだろう?定期会議で皆知らないって答えたじゃないか。なんで僕にそれを聞くのさ」
「……君なら遊び半分でやりかねないなと思ってね。まあいい。大体わかったから」
「……何がわかったのさ」
「君が秘密を話してくれるのなら教えてあげよう」
マインはそう言いながら顎に手を当てにやりと笑う。からかうようなその仕草にユービシンは腹立たしく思うが、カマかけの可能性だってあるし、秘密に気付いたとしても証拠がない以上、糾弾できないはず。
ユービシンは額に垂れかかる冷や汗を髪を掻き乱す仕草で誤魔化しながら言った。
「はぁ、君と喋ってると疲れてくるよ。僕はもう行くから」
「そうかい?私はまだ喋っていたいが、君がそういうなら去るとしよう」
そう言ってマインは今度こそ、その場を後にする。
その後姿をユービシンはジッと見つめていた。
(糾弾は……できないはずだ。だが、疑われているのは確実。疑われている以上、証拠が見つかるのも時間の問題かもしれない。暴走の件もあるし、はぁ、色々忙しいなぁ)
秘密はあればあるだけ不安を駆り立てる。隠し部屋と同じだ。多ければ多いほどバレやすくなり、一つバレれば他もあるんじゃないかと探られ、なし崩しに見つかってしまう。探らせず、隠し部屋の前を素通りさせるには疑われないよう隠し部屋の違和感を消す相応努力が必要になり、負担がかかるのだ。
そんな時、ユービシンはあることに気付く。
(そういえば暴走といえば……精神に作用するスキル。あのスキルの行方を聞いたことといい、ガチャスキルを弄っていることを知っていたことといい……疑われてる所じゃないかもしれない)
ユービシンは疑念を抱くとスケルトンを観察するための泉を覗く予定を取り潰す。順当に考えればスケルトンはまだ最終階層には行けないだろう。順当に行ってないのだが。
そんな事、思いも寄らないユービシンは時間はあると身体を翻す。
「少し調べるか」
そう告げるとユービシンはマインの向かった道を辿るのだった。
次回、主人公がついに◯◯を出せるように!!




