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スケルトンはガチャスキルで強くなる  作者: 一時二滴
第一章 ダンジョン攻略
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暴走

 既に身体は砕け散っている。残るは頭蓋に一撃を叩きこむ事でこの戦いは終わりを迎える。

 デイルは最後の一手。命を刈り取る止めの一撃を繰り出そうとしたときだった。


『身体破損、修復を執り行う。……《擬骨生成》行使不可。身体が限界を迎えている。プラン変更。ステータスを一部消費し強制進化を執り行う。』


 デイルにはこの声が聞こえていない。スケルトンの身体の内で完結している独り言。

 その声が言葉を告げ終えると同時にスケルトンの身体に変化が訪れる。

 頭蓋を中心に素早く幾百の骨が飛び出し、まるでその頭蓋を守るように、繭のような形態を作り上げた。

 その骨の繭にデイルが追撃を加えようと拳を再び構えると、骨の繭は自衛の意思を持っているのか繭にある小さな隙間から数えきれない数の骨の針を放ち、デイルに応戦する。


「クッ!!」


 防御を固めた相手からまさか反撃が訪れると思わなかったデイルはその場から思わず退いてしまう。この時がスケルトンの命を刈り取る最後のチャンスだった。

 骨の繭は役目を終えたとばかりに骨粉と化し、その中からは仮面を地面に落とした漆黒のスケルトンが姿を現した。


「クフフ、何か変わりましたか?」


 デイルの言う通り姿かたちは全く変わっていない。仮面が取れたこと以外の違いを見つけることが難しいほどに。


『強制進化完了。ガシャドクロへと進化。強制進化の影響で弱体化を確認。身体に状態異常|《暴走》を付与。よってステータス永続上昇効果を入手。対象の敵対者を確認。殲滅を開始。』


 スケルトンが地を踏みしめ、抉るように蹴るとデイルに肉薄する。


『初撃、命中』


 ジャブの様に軽く、そして速く放たれた一発だった。音速に迫るその一撃にデイルは大きく吹き飛ばされる。


「グハッ!!」


 ただのジャブだった。それなのにその一撃はボクサーの全力ストレートをゆうに超える威力を有していた。

 吹き飛ばされるデイルは壁への激突に備え、受け身を取ろうと態勢を立て直し始めるが、想像よりも断然速く衝撃が訪れ、血反吐を吐き散らす。

 あまりにも早すぎた衝突に驚愕し、背後に視線を向けると黒く染めあがった骨の壁がいつの間にか形成されていたのだ。


『擬骨生成。追撃開始』


 骨の壁に叩き付けられ身動きの取れないデイルに再び地を蹴り飛び上がるスケルトン。

 デイルは何とか避けようと行動を起こそうとするが、その前にスケルトンが到着し、先程のジャブでヘコんだ胸を狙って連撃を加える。

 デイルを受け止めていた骨の壁なんて簡単に崩れ去り、再び後方に殴り飛ばされる。

 そしてまたも追いかけようとスケルトンが駆け出し、デイルはもう避けられないと応戦する。


 一撃一撃拳が交差し、金属音に近しい音が辺り一帯に響き渡る。しかし、衝撃で洞窟が崩れ落ちそうな攻防は直ぐに終わりを迎える。

 最初は確かに拮抗していた。スケルトンが放つ拳に合わせてデイルが拳をぶつけ合うことで相殺していた。だが、徐々に徐々に、スケルトンの拳の威力は重ねるごとに上昇し、速度も上がっていく。

 デイルの拳から血が流れ始める。肉がはがれ始める。骨が砕け始める。


 スキルを行使する余裕すらない。もしそっちにリソースを割こうものならデイルの拳を破壊する程の凶器と化した高速の連打がデイルの身に襲うことになる。そんなものを喰らえばいくらデイルでもひとたまりもない。

 それでもなおデイルはスキルを行使しようと動いた。恐らく感じ取ったのだろう。このまま待ったとしてスケルトンの連打は止まらない。威力は増していくばかり。疲労が訪れることも恐らくないと直感が告げていた。

 だからこそデイルは覚悟を決め、スキルを行使する。


「グァァァァァァぁ!!!悪魔の左腕ぇぇぇぇぇ!!!」


 スキル行使により発生した刹那の隙。だが二人からしてみれば無防備な状態と変わりなく、その刹那の時の間に数十に達する拳がデイルの身体を襲う。

 だが、スキルの行使は完了し、デイルの左腕に触れたスケルトンの拳は消失していた。

 デイルには苦肉の策だった。下手すれば死が迎えに来ることさえ容易にありえた。だが賭けに勝ち、デイルは何とか生き残り、凶悪な拳を消失させることが出来た。その事実にデイルは安堵の念を浮かべる。

 だが、攻撃が止まることは無かった。


『身体の一部消失を確認。拳による追撃不能。別プランを構築?否、押し切る』


 スケルトンは消え失せた拳を一瞥するとすぐさま行動を起こす。拳を擬骨生成で修復し、変わらず殴打を繰り返す。

 消されるたびに修復される。切りが無い。消すよりも再生する速さの方が断然速く、再び繰り返される防戦一方の攻防。

 殴れば殴る程スケルトンに返り血が染まっていく。

 そしてついにデイルは理解した。このスケルトンには敵わないと。


 身体はボロボロと崩れ落ち、血と肉と土の混じった塊が点々と転がっている。

 デイルには今はもう顔しか残されていない。その顔もすでにボロボロだ。その光景をスケルトンは静かに見下ろしていた。

 土壇場の成長と括るにはあまりにも違いすぎる戦闘力。だが、隠していたとも思えない。だからこそ、デイルは満足していた。惨敗だったが十分だった。自身の全力を出してなお勝利を勝ち取れなかったのだから。

 そしてデイルは思う。私は間違っていなかった。先を求めてよかった。ベストエンドが訪れて本当によかったと。

 だが、この感覚を一度で終えるには惜しすぎる。まだ味わいたい。そうデイルは願いながらこう告げた。


「クフフ、また戦いたいものですねぇ」


 グシャっと音をたてながらデイルの顔はトマトの様に踏みつぶされた。


『敵対者殲滅完了。次なる手を……ガガガ……暴走に異物が干渉……状態異常《暴走》の除去を確認……ステータス永続上昇解除……上昇値も消滅……同時に暴……走スキ……ルが封印さ……れ……ブツッ』


 そう言い残し、スケルトンは静かに地面に倒れこむのだった。


やっとデイル討伐できたぜ

あと、そろそろこの章終わります。一章終わらせるのに3年半かかるとかどうなっとんねんって思うかもしれませんが……。

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