デイルの過去④
私はすぐさま復活した醜悪な巨体に血を服用させた。何度か試してみるとわかったが少量でも吸血鬼にはなれるようだ。大量に飲ませてもさほど変化はない。
その個体に私は何度か戦った。以前よりは強くなったがまだ足りない。本気を籠めれば容易に死んでしまうため、対等とは言いえない。
そこで次の策を実行した。私は何度か敵を倒しているうちに力が漲る感覚を覚えた。それは巨体にも適用されるのではないか?そう思い、巨体を扉の外に追い出そうとするが謎の壁に阻まれて出ることが出来ないようだった。これは洞窟から出られないという決まりが原因だろう。私が何故出られたかは恐らくあの体験のせいだろうが、深い事はわからない。考えるだけ無駄であろう。
ならばと私はこの部屋に人間を呼び込むことにした。あの程度の人間相手ならば巨体にも取るに足らないあいてだろう。方法はと問われれば、どうやら私はこの肉体に生まれ変わった頃から場所から場所へと転移させる力を持っていたようで、それをダンジョンの入り口とこの二十階層につなげた。そうすれば自然とダンジョンに入り込む人間が運び込まれるだろう。
それからは順調に人間が運び込まれ、それを巨体が倒す。それを繰り返した。強くしているうちに巨体に愛着がわいたためガースという名をつけ、私は自身をデイルと名乗るようになった。恐らく人間の影響だろう。
私はガースが人間を殺戮している間、途方もなく暇でしかなかった。だから自身の分身をダンジョン内に飛ばし、何事でもないだろうかと探る日々を送っていた。そして、見つけた。私の様に決まりにそぐわず階層を移動しているスケルトンを。奴は私が見る限りどうしようもなく弱かった。しかし、特別ではあった。私と同じような存在なのだから。
ガースも中々に強くなった。しかし、あのスケルトンの成長速度と比べれば見劣りし、少し待てば血を含んですらいないあのスケルトンの方が強くなるだろう。
私は興奮した。あのスケルトンが対等足りうる存在になれるだろうと確信していたのだから。だが、問題があってはいけないと監視をつけ、少々難はあったものの、あのスケルトンは無事に私のところまで辿り着いた。監視が消えた時よりも明らかに成長している。恐らく私の育てたガースと対等になりうるほどに。
私と同じような存在ならば生まれた頃から思考する意思を持っているだろう。だから私はあのスケルトンに名前を名乗り、奴を歓迎した。
「クフフ、こんにちは。私の名はデイル。悪魔です」
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あのスケルトンは見事にガースを倒した。あのスケルトンの期待はドンドンと高まり、私はあのスケルトンがもっと強くなれるよう下層の魔物に吸血鬼の血をばらまいた。
そして今度は三十階層で待つことにした。そこでしばらく待っていると私の期待した存在とは大きくかけ離れた存在が現れた。それは人間だった。
「徘徊してる魔物と言い、ここの魔物と言い、このダンジョンおかしくないか」
「そうね。でもロッド、いい肩慣らしにはなったんじゃない?」
「それもそうだな。じゃあこいつを倒してこのダンジョン攻略としよう」
「そうだな!」
「クフフ、どうやら私を倒すつもりのようですね?面白い、やってみなさい。脆弱な人間どもよ」
彼らの傲慢な自信をここで砕いてあげましょう。
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「ハァハァ…クソっ!つ、強すぎる……」
「このアムス様の盾でも全くいなしきれねぇ……」
「引くべきだったわね……」
「人間にしては随分と強い。久々にこの快楽が味わえた気がしますよ」
侮っていた人間どもは存外にも手ごわく、忘れかけていた戦闘の快楽を思い出させるほどの実力と連携を彼らは持っていた。ここで殺しては惜しい。私は彼らが逃げるのであれば追うつもりはなかった。だが、ミユと呼ばれていた少女が最後の抵抗とばかりに立ち上がり、部位欠損もしている彼らにとある呼びかけをした。
「私……魔色スキル使うから、それ使ったら逃げよ」
「使えるのか?ミユ」
「多分……いける」
「じゃあ頼むミユ!アイツの足止めを!!」
「わかった。《魔色[黄]/雷王の誓い》」
するとミユと呼ばれていた少女の体中に電流が可視化された状態で纏い始めた。
「いっけ、ウォーターランス!」
それは先程まで何度も放たれていた水の槍。さほどのダメージになりえない攻撃だったため、回避行動はせずその槍を静かに見据える。そして来る直撃。すると驚くべき効果が付随していた。それは感電。体の自由が利かなく、身動きが一切取れない。痛みなどはない。だが動けなかった。私の体中に漂う雷の糸が拘束しているようだ。
「念のため、ウォーターショット!!」
次に飛んでくるのもただの水弾。だが当たってみれば再び凄まじい感電がこの身に訪れる。あの雷の鎧、恐らく魔法に見えない付属効果を付け加える効果があるのだろう。ならば取り込んでしまおうか。いやここで取り込んでしまえば彼らはますます逃げる機会を失ってしまう。強くなった彼らによるリベンジマッチを期待したい私にとっては逃げてくれなければ不都合。だから私は抵抗しなかった。
「よし、逃げるぞ!!」
そうして、動けないことを好機と見た彼らはその場を後にした。
しばらくして私は漂う雷の糸を取り込み、肉体の自由を取り戻した。最後のだけは程々に面白い技だった。人間も脆弱なモノばかりではないということが知れただけよかったものだ。
「クフフ、また彼らの様な人間に会いたいものですね」
そう笑い、私は再びあのスケルトンを待った。
それからしばらくして盛大に天井を突き破りながらあのスケルトンは現れた。
これはまた……。
「クフフ、随分とまぁ派手な登場ですね」
私は不敵な笑みをあのスケルトンに向けた。
ストック切れです。気が向いたら続き書きます。読んでいただきありがとうございました
追記というか、内容整理的な?のを下記に記します。
・デイルの正体は主人公が始めに戦闘を行ったスケルトンが変貌したものです
・変貌理由は主人公がデイルの魔石に神様から貰った手紙を触れさせてしまったから(偶然)
・デイルが主人公とエンカウントしなかったのは主人公が一番上の階層でちんたらレベル上げをしてたから
・デイル視点のせいで書いてませんが魔色スキルは魔力をめっちゃ使うのでかなり消耗します。だから主人公とアムス達が会うときミユは疲れて寝てました
・デイルは対等の相手を求めていたので自ら成長しようとはしてません。ですので主人公とステータスに歴然とした差はありません
以上が過去編で伝えたかった事です。




