威力の理由
説明回みたいな感じです。
そのステータスに記載されたレベルの数値に驚きはしたが、それ以上にあの魔法を放てたわりには存外にも低いなと思う気持ちが強かった。あの豪炎のような火の弾を出現させ且つ一撃で葬ったというにはなんとも信じがたいステータスだ。
前回の火属性初級魔法を放ったときは鑑定も同時に行使していたが、数値的に魔攻の十分の一がダメージとして蓄積されていた。十中八九、初級魔法による影響だろう。初級だからこそ威力にある程度制限がかけられていると考えられる。だからこそ、幾つもファイアバレットを放たなければいけなかったのだろうがな。
その時に後から叡智に聞いたら、攻撃された場所にもよるらしいが基本的にHPへのダメージは攻撃分-防御力の数値。魔法の場合も同じで魔攻-魔防と成り立っているらしい。そこで場所が急所又はかすり傷程度などとなると当たった時の威力が増減する。
しかし、今回のはその範疇に入らないだろう。場所以前に形成された形が全く別物だった。前見た時までは小石を投げる程度しか出来なかったのに、次見に来たらロケットランチャーを使いこなしていたようなそんな違いがあった。
ステータスを見る限り何故かレベルが上がっているが、神様の粋な計らいだろう。レベルが丁度30分上がってるから危なっかしいから半分増やしてあげるよ的なノリだろう。俺の状況を楽しんでいるあの神様ならやりそうだ。
だが、その30レベル分を加えて考えても威力の計算が合わない。もしステータスからその要因を無理矢理抜き取るとすれば……前まで小だった混沌が大になってるってところか?
顎に手を当てていても仕方ないと思った俺は取り合えず万能な叡智に頼ることにする。
ん?それならこれからは直ぐに叡智を頼る習慣をつけろって?馬鹿言っちゃいけねぇ。人間、他人に頼ってばかりで考える力を捨てたら終わりよ。あれだよ?そんな破滅的な思想だとAIどもが簡単に世界乗っ取っちゃうよ?意味が無いとしても考えなきゃ。それは今後に必ず役に立つんだから。考えるという力が人間の本質なんだから。
っと、話し逸れたな。叡智、初級魔法なのにあの出力をだせた理由教えてくれ。
『ステータス『混沌:大』による影響です。混沌状態の場合、ステータスのレベル外に所得経験値を保存しております。しかし、経験値は身体能力に影響を及ぼす源のようなもの。その源が身体に干渉し、攻撃力、防御力のような扱いやすい形へと変化します。それを扱いやすくするのがレベルであり、混沌状態の場合、大半がそこを通過せずに別途で保存されます。そして、体内の何処かに保存している以上、経験値は必ず影響を及ぼします。使いにくい形ではありますが、使えないというわけではないため、ある程度が身体能力に加算されます。そのある程度の分量が『大』となっているため、おおよその加算値は一万程です。』
……え?つまりは混沌の影響でステータス+一万ってことだよね?インフレしすぎじゃね?そんなんもうデイルくらい魔法じゃなく物理なら余裕で勝てるでしょ。
『恐らくは……』
ならこの階層でちまちましなくてもいいじゃんっ!下の階層にいって態々デイルの所にいくのめんどくさそうだから上に上がって殺しに来たところを返り討ちにしようかなぁ~。
『ですが……』
叡智はそう続けた。いつもよりトーンの下げたアナウンスで、まるで俺を間違った道から引き換えさせるためのような声色で。
『ですが、あの悪魔を討伐するには苦戦するかと思われます。』
……ん?どゆこと?一万のステータスでもデイルに勝てない可能性があるってこと?
『いえ、その加算値である一万は純粋なステータスではなく、飽くまでも保存されてる源から漏れ出たもの。時間をかけてその者のステータスとしてギリギリ扱える状態へと変化したものです。つまり、常に使える状態にされている訳ではありません。魔法のような詠唱を必要とするものには合間があり、その合間で使いにくい状態からギリギリ使える状態となって干渉します。しかし、物理の場合はその合間が存在しません。一万の加算値で攻撃したいのならばその合間を自分から作るしかありません。一万の加算値は全てのステータスに干渉するわけではなく、一部しか干渉しないため、魔法の場合は魔攻に専念できたりするのですが、物理の場合は攻撃、防御、敏捷があるため、攻撃を外したり、相手から攻撃を受けたり、その場を一歩でも動いたりすればその方に一万の加算値が練られ、無駄となります。』
長ったらしいけど、つまりは魔法の時には魔法陣形成に用いる時間の副次的機能が偶然相まってタメが既に備わっている様な感じになっているけど、物理にはそれが無くて、その溜めてるときに何らかの行動を起こしたり、起こされたりすると駄目ということか。
もし攻撃当てるときもその場から動いたりしたら敏捷に一万が行っちまってまた力を貯めなきゃいけなくなる。ということは避けながらカウンター攻撃でもしなきゃ行けねぇのか。きっつ……。
って、待てよ?攻撃の時に動くよな?あれは敏捷に入らないのか?
『攻撃の際にも加算値は少量敏捷に影響します。しかし、使用されるのは加算値の端数であり、期間も短いため、加算値が最大まで割り振られる前に攻撃へと振り切れます。加算値の移動は感覚神経と近いものであり、強い刺激を受けた瞬間一気に刺激の方へと振り切られます。そのため……』
待て、よくわかった。つまりあれだな?今の状況じゃ挑むのは無謀もいいところってことか。よ~くわかった。だから休ませてくれ。脳みその足りない俺にはこの情報量はかなり堪える……。
そう思い叡智は説明を止めてもらうと、俺は頑張って頭のなかに入った叡智による情報を整理するのだった。勿論、休憩を挟みながら。
「え~と、簡潔に纏めると体内にステータスに表示されたもの以外の強力な力はあるけど、それは部分的にしか使えず、使うためには力を貯めるための時間を作る必要がある。体に起こる刺激によって力の移動先は左右されるから、使うときは気を付けなければいけないってことだよな?」
『そういうことです』
「そうかそうか。そういえば、今回は叡智は随分喋ったよな」
『主役の座を狙っているので』
「……え?」
『冗談です』
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