予想外の威力
急ぎ足であの場を後にしたが、このまま下の階層に行くわけにはいかない。
今の俺は背後から魔物を奇襲して、自身が襲われる前に倒し切るという手段が基本となっている。正面から魔物を倒せないからだ。鬼怒化纏……今は装化纏か。あれを使えば余裕かもしれないが、あれにはデメリットとして気絶が伴う。毎度気絶していたらいつかは殺られる。そんな危険を背負って戦うわけにはいかない。
もし奇襲できない状況。例えば鉢合わせなどすれば正面衝突は免れない。装化纏を駆使すれば何とかなるかもしれないが、装化纏を使っている間は叡智以外のスキルを使えない。もし戦闘の音でも聞かれ、予想外の数が集まってでもしたら対処に時間が食われ、装化纏が解けるかもしれない。
気の支配を駆使すれば其処んところはなんとかなるかもしれない。しかし、何事にも例外というものは存在する。もし気の支配が引っ掛からない奴が下層にでもいたら万事休す。終わりだ。
だから、この階層でできる限りレベルをあげ、ステータスをあげ、スキルを増やすでもして正面でも渡り合える力をつけたたいのだ。
幸い、デイルが手を出してくるのは逃げた時だけ。幾ら時間をかけても良いのだ。ここで停滞していた所でなにも言うまい。
さて、長く語ったが別に思っているだけではなく、しっかりと歩いてもいるのだ。魔物を探すために、しかし、見つかってもいけないため慎重に。
だが、一向に見つかる気配はなかった。理由はある程度予想がつく。あの骨の針山の奥には幾ばくかの気配を感じ取れた。が、数が数なだけにあの場所は避けている。恐らく気の支配で解放したときに呼ばれた洞窟の魔物の大体があそこに集まってしまったのだろう。しかし、態々あそこにいっても死ににいくようなもののため、はぐれた魔物でも狙うしかないのだ。今はただ、機を窺うしかない。
ある程度時間が経ち、そこらをポツポツと歩いていると、やっと二匹の魔物を捉えた。両方とも同種であり、以前退治したレッド・ヴァン・スカルと同種の魔物のようだ。ステータスも前回エンカウントした個体とあまり変わらず、ポイントだけが21、17と低いという状態。ふざけやがって。
俺は二匹が此方に背中を向けた瞬間、ステータスとポイントが釣り合っていない怒りと恨みを詰め込みながら魔法を唱え、放つ。
『《フレイムバレット》!』
……え?
その火は以前のものよりかなり大きく、そして前よりも格段に速かった。
普段より巨大な一つの魔方陣から放たれた火の弾丸はプロミネンスのように炎を纏い、凄まじい早さで回転しながら焼けるような熱気を放ち、虚空を焼き焦がす。そして、魔方陣から出現し終わったからか、直ぐに前方の空気層を貫き、一直線に目標へと向かっていく。
それは目で追えるギリギリの速度。瞬き一つでもすれば見逃すであろう亜音速である。
弾丸は目標と衝突するとズドーンッ!!と盛大な音をたてて爆発した。その場に残るのは大きく抉られた地面とポツンと置かれた二匹の魔石、キーンとするような耳障りな爆音のみだった。
前回は無数のフレイムバレットを駆使して倒せたのに今回は一度で十分だった。その事実に驚きを隠せず、呆気にとられる。
……い、いやいやいやいや!あり得ないでしょっ!どゆこと!?フレイムバレット一回しか打ってないよな?この威力じゃ本来の力を掛ける所の話しじゃないぜ?もうこれ累乗の域だぜ?怒りと恨みでこの威力になったとか?いや、現実から目を逸らすな!ならスキルか?でもそんな効果をもたらすスキル持ってないよな?
思考が纏まらない。現状が起こる理由。その覚えがない以上、幾ら思考しようとも気づけるはずもない。
ならば、だ。百聞は一見に如かずともいう。ごちゃごちゃ考えるよりもステータスを確認した方が遥かに手っ取り早い。と思った俺は辺り周辺に魔物がいないことを入念に確認し、安全を確保するとステータスを開示した。
名前 :
種族 :モーダー
状態 :平常(混沌)
ポイント:2037
混沌:大
LV:31/60
HP:886/886
MP:798/803
攻撃:815 +80
防御:709 +80
俊敏:1021 +80
魔攻:563 +80
魔防:552 +80
スキル:《視認の瞳》《投擲》《糸操作&放出》《気の支配》《煙象強促》《空庫》《装化纏》《擬骨生成》《影縫い》《立体機動》《初級火属性魔法》《魔力操作》《並列思考》《暴走》《スキル結合》《剣術》《掃除》
ユニークスキル:《ガチャ》
《運試し》
《叡智(改)》
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